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シネマに賭けた青春「夢を追いかけた日々」の想い出

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構想10年、製作期間6年半、総製作費1500万ドル。『ベン・ハー』は当時としては破格の規模で撮影された作品である。

古代ローマの競技場を砂塵を巻き上げて走る二輪戦車。4頭の馬に曳かれた幾台もの二輪戦車が、車上で競り合いながら、激走する。闘いに敗れた者たちは、次々に容赦なく大地に叩きつけられていく。

この作品のハイライト、命を賭けた男たちの壮絶な戦車競技のシーンである。この場面の撮影だけで3ヶ月を要したそうだ。


その1: 全てが桁はずれの壮大な歴史絵巻だ

監督のウイリアム・ワイラーは、俳優やスタッフに何十回もセリフの言い直しや、カットの撮り直しを命じ、撮影されたフィルムはなんと、380キロメートルに及んだ。全部上映すると8日間に及ぶ長さだったという。

大掛かりなセットと桁外れな数のエキストラ、群集シーンが大画面に映し出されるや、観客は思わず息を呑んでスクリーンを見つめた。まさに古代ローマの再現だったからだ。1000人以上の労働者と2年の歳月をかけて映画史上最大のセットが作られたのだ。

総勢5万人のエキストラの動員には大変な苦労があったという。15000人のエキストラを一度に必要とした戦車競技のシーンなどは、全員のメークや衣装を整えるだけで朝5時から夜の10時までかかったそうだ。

食事ともなるともっとたいへんだっただろうと思う。15000人のエキストラに出す食事ともなると想像するだに恐ろしい。まさに阿鼻叫喚の世界だ。


その2: 復讐の鬼と化したジュダ・ベン・ハーは・・・

「憎しみは毒ですわ、父も憎悪の塊です。でも、愛は憎しみより強いと私は信じます」
復讐の鬼と化したベン・ハー(チャールトン・ヘストン)に恋人エスター(ハヤ・ハラリート)は語りかける。しかし3年に及ぶガレー船での奴隷としての苦役がジュダを変えてしまっていた。

ジュダ・ベン・ハーは誤ってローマ総督に瓦を落とした妹をかばったために囚人となったのだ。故国に戻ったジュダは友でありながら自分たちを見捨てたローマ人司令官メッサラ(スティヴン・ボイド)を撃つ。

復讐を遂げても、ジュダの憎しみは尚も燃え盛る。母と妹が投獄され、病に犯されて捨てられたように暮らしているのを知り、彼の怒りは頂点に達するのだ。


その3: ジュダに救いはあるのだろうか

彼の止まることを知らない怒り・・・。それを救ったのが、”ナザレのお方”と呼ばれるキリストとの出会いであった。この聖人は裁判で磔にされながらも、昇天と同時に人々の罪を背負っていくのである。

「息を引きとられる前、”父よ、彼らを許したまえ”とおっしゃった。恨みもぬぐい去られてしまったよ」 
ジュダが許すことを知り、憎しみを捨て去ることで、この壮大な物語のテーマが”魂の救済”であることが明白となる。許すことで人は救われるのだと・・・

かくして壮大な歴史絵巻は幕を閉じる。アカデミー賞を11部門で受賞するという前代未聞の大記録を残して。

1959年 アメリカ・カラー 監督 ウィリアム・ワイラー 出演 チャールトン・ヘストン、スティーブン・ボイド、ジャック・ホーキンス、ヒュー・グリフィス

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Last updated  2007.10.23 23:13:07
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