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シネマに賭けた青春「夢を追いかけた日々」の想い出

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カテゴリ:ヤ~ワ
近頃、子育てに悩む若い親が増えているようだ。「夜泣きしてうるさい、眠れない」と云ってわが子の口を押える親がいるそうだ。子供はぐったりとなり・・・その結果は?

子は宝である。慈しんで育てて上げることが大切であろう。大人も一足飛びに大人になったのではない。親の愛に守られて今の自分があるのだということを肝に銘じて忘れないでほしい。


この映画は1962年、巨匠・市川崑監督が、松田道雄の育児評論をもとに、若い夫婦が初めて経験する子育てを面白おかしく描いた家庭コメデイである。



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東京都内の団地に住むサラリーマン夫婦の間に息子の太郎が生まれ、一家は太郎の病気やケガ、いたずらに振り回されてテンヤワンヤの毎日だ。

世の中が幾ら進歩しても、子育ては手作り、手間のかかる大事業である。太郎くん(0才~2才)は小川五郎(船越英二)と千代(山本富士子)夫妻の間に生まれた最初の子だ。

両親は太郎くんを育てるために、毎日朝から晩まで大童である。太郎くんが笑ったと云っては喜び、ヨチヨチ歩いたと云っては歓声を上げ、団地の階段を高いところまで這い上がったと云っては仰天する始末。

太郎くんを目の中に入れても痛くないほどの可愛がりようだが、両親のそんな可愛がり方は太郎くんにとっては迷惑かもしれない。

ある日曜日、五郎はターちゃんの寝る柵を慣れない手つきでつくっている。千代、美容院から帰って来る。
「ちゃんとご飯たべさせてよ、こんなに残しちゃって」
「俺だってターちゃんのために汗水流して柵を作っているだろ」
「私はターちゃんにご飯たべさせるのに、毎回一時間はかかるのよ。用意に30分、合計4時間半はあの子の食事に取られちゃう。あなた、会社で仕事してるのは4時間位でしょ、あとはタバコを吸ったり、野球の話ししたり・・・」
口げんかになる二人。ふと気が付くとターちゃんがいつ柵から出たのか、ノコを手にして遊んでいる。驚いてノコを取り上げる二人。
ターちゃんの声。
『ネジをはずしたり紐をほどいたりするのはとても難しいんだ。ぼくはそれが出来るようになったんだ。なんで素直に褒めてくれないんだろう。アラ探しばかりするから、大人はいつも不幸なんだ』

子供中心の生活、それは楽しみであり、苦労の連続でもある。二人は太郎を動物園に連れて行く。太郎が居なくなり、二人は血相変えて園内を探し回る。

迷子の子供たちの声。
『ぼくは迷子じゃねえよ。親父の方が迷ってどこかへ行っちまったんだ』
『自分の子供を見失うなんて、よっぽどどうかしてるよ』
『うるせえな、よく泣きやがる。泣き声ならぼくが一番大きいぞ』
両親がようやく太郎を引き取りに駆けつけてきた。

「俺がちょっとトイレに行っている間に子供を見失うなんて、なってないよ。それでも母親なのか、あきれたよ、もっとしっかりしてくれなきゃ母親失格だぞ」
「私、帰らせていただきます。どうせ私は無責任で低能で母親の資格なんてないんです。里へ帰らせていただきます」
「ちょっ、ちょっと待てよ、人が見てるじゃないか。謝る、許してください」
五郎、千代に頭を下げる。

太郎、夜泣き出す。もてあます二人。やっと静かになり電気を消すと又泣き出す。
『ボクは眠くないんだ。元気イッパイなんだ。昼間眠り続けたから、ちっとも眠くないんだ。ボクは遊んでほしいだけなのに、察しの悪い親は困りもんだよ、ほんとに』
あくびをしながら太郎と遊んでいる五郎。時計の針は午前二時。

五郎の転勤を機に二人は祖母の住む田舎の一軒家で生活することになった。目がはなせない太郎のいたずら、ケガ、自家中毒、カゼ、ハシカと両親や祖母の気の休まる時がない。それに母親と祖母のしつけの食い違い・・・。

突然、そんな太郎中心の生活に祖母の死が訪れた。しかし、太郎は人間の死ということを知らないのだ。おばあちゃんは、遠い遠いところへ旅に行ったと信じこんでいる。

丸い大きな月の上ったある夜、太郎は小さなバースデイケーキと二本のローソクの前に坐っている。ローソクの小さな炎が太郎と両親の顔を柔らかく浮き上がらせ、太郎は心の中で呟くのだ。
『ボクは二つになった。だからローソクも二つだ。ボクは今日から二歳』


さすがは市川崑さんの作品。育児の教科書としてもよくできた映画だ。育児で悩んでいる若い人はこの映画を少しでも参考にして欲しいと思う。不幸な子供を作らないためにも。

古い作品で片づけるには惜しい傑作だ。育児の本質は今も昔も変わらない。夫婦の共同作業で子供たちを育てて行くのであろう。いや、子供に育てられるのかもわからない。





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Last updated  2011.10.15 12:21:02
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