【戦場のピアニスト】 ロマンポランスキー監督
【戦場のピアニスト】 ロマンポランスキー監督 2003年 (ポーランド・ドイツ)去年、劇場で見逃してしまったこの作品。CMで見る限り、オシャレな服装のエイドリアン・ブロディがひ弱な感じでどういう演技をするんだろう?(去年のアカデミー主演男優賞もとってるしなー)って心引かれておりましたが、実際映画を観終わって、「・・・」と思ってしまった私は心が狭いのかもしれません(汗)。というか、映像は残酷なまでに美しく、ピアノの旋律もジーンとくるような美しい調べであり、ナチスの無差別なユダヤ人迫害の様子は淡々としてリアルで恐ろしく、さらに映画自体も綺麗にまとまっておりましたが、肝心要の、映画の内容は、何を伝えたいのか要点を得ない、散漫な感じがしてしまって、一生懸命、10キロ減量して、さらに代えピアノ奏者なしに、自分で天才ピアニストのピアノシーンまで演じたエイドリアンが何か、他力本願な、あの時代にそぐわない、弱弱しくもパラサイトなそんな運がよかっただけの人物に見えてしまうほどに、淡々とた内容で、驚いてしまいました。主人公の天才ピアニストシュピルマンはユダヤ人。1932年ナチスの支配が色濃くなってきたポーランド、ワルシャワ。豊かな暮らしをしていた家族は、1942年、ドイツがポーランドに侵攻し、ワルシャワゲットーに追いやられ、追い詰められる。一家がゲットーから強制収容所に入れられる時も、主役のシュピルマンだけは、ユダヤ人の警察官のコネ(?)で、収容所行きを逃れ(家族は絶滅収容所に送られたらしい)ゲットーで強制労働を余儀なくされるも、ピアニストに力仕事は無理だと、仲間に優遇(?)してもらい軽い仕事に従事する。そして、何故なんだか、またしてもポーランド人の友人にゲットー脱出の手筈を整えてもらい、ゲットーを脱出し、ドイツ人区域に隠れ住む。シュピルマン脱出後、ゲットーでナチスに対する反乱が起こるが、ナチスに鎮圧され、頼る術を失ったシュピルマンはさらにまた言われたとおりの人を頼り、今度はナチスの本拠地の部屋に隠れ住む。どうです?!ここまで、自分で望んでシュピルマンが自力でやったことは、無いような気がしません?弱々しいから優遇されるのか、ピアノが天才的だからファンが多いのか、それとも、描かれてないだけで、人望が厚いからそうなったのかわからないけれどこの調子で淡々とワルシャワ蜂起も窓からじーっと見てるだけという有様。さらに、ワルシャワ蜂起のあと、ナチス軍がシュピルマンが隠れ住んでいた廃墟に司令部を置くシーンで、ナチスの司令官にうっかり見つかってしまうも、得意のピアノを披露して、事なきを得、さらに食料やコートまで世話してもらう。とまあ、この感動のシーンでこんなことを書いてるのは不謹慎だけれど司令官にシュピルマンがピアノを弾けといわれて、弾くシーンは、最初はぎこちない感じからも何かから解き放たれたように指が鍵盤を舞い、とても感動的な美しいシーンでわざとな演出かもしれないけれど、やせっぽちでヒゲだらけの疲労困憊したシュピルマンが、まるでキリストのように後光が差してて、あんなに冷酷に楽しそうにユダヤ人を殺しているイメージのナチスにも、こんな紳士で慈悲深い司令官が実際いたのだなーと実話なだけに、感動しました。そして、仲間と思っていた反ナチの地下組織の人も、ユダヤ人を利用して金儲けに走る人や戦争の状況は、いい人も悪い人も、どちらの側にもいるんだという現実みがあって、普通の、ナチスだけが悪い、というタッチよりもよりリアルな感じはしました。さらに、その司令官が最終的に捕虜になった時、シュピルマンの友人にシュピルマンを助けたから俺も助けてくれ、と伝えてくれ!と、懇願するシーンは、私的に『ああ!なんて人間くさいの!』と現実的な気がして圧巻。助けてあげて欲しいなーと思う私の気持ちとはウラハラに、またラジオでピアノを弾く仕事についたシュピルマンの司令官を助けてあげない(というか手遅れだったかもしれない)淡々と冷酷なこと!つまり、シュピルマンの実話を、ただ淡々とシュピルマンの目で再現した映画のような気がします。だから、普通私が映画に期待するような、大きなテーマ、(例えば、ホロコーストとかユダヤ人の悲劇とか、ワルシャワ蜂起のこととか、はたまたピアニストだったら音楽についてとか)は、絞られていなくて映画としては、拍子抜けな感じがしてしまったのかもしれません。だけど、淡々と冷酷無比に無差別にユダヤ人人を殺していくナチスの様子は、いろんな映画の中では一番現実味があって、恐ろしかったかもしれない。それは、シュピルマンの目線で描かれた映画だからなのかも。ただ、現実を淡々と。運命に翻弄される、というのはそういうことなのかもしれません。映像の美しさ度 ★★★★リアル度 ★★★★主役のよわっちさ度★★★★★(満点!)私的好み度 ★★