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カテゴリ:落雷疾風記
「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・」
僕の腕は、ヴァンスの打ってくる弾丸を跳ね返す時に起こる反動に耐え切れず、CMファングを装着していた左腕がついに麻痺してしまった。まだウィークルを持っている右腕は動くのだが、CMファングの重さと自分の体重とのバランスが合ってなく、座り込んで防御することぐらいしか今はできない状態に陥(おちい)っている。 そうして耐えている内に、やがて僕の牙に亀裂が入ってきてしまった。 (うっ・・・・・・もう駄目か・・・・・・) ジンもガウセルもボロボロにやられ、もう言葉も出ないほどにまでになっていた。そしてついに牙に仕込んである精霊石に亀裂がさしかかった途端、銃声が鳴り響き、目の前に血が飛び散った。 「ふぅ・・・・・・間に合った・・・・・・方かねぇ。」 オスカーらしき人物が2丁流で銃を構えている姿が目に浮かんだ。僕がドサッと倒れると、なにやら耳の奥からたくさんの人の声がして・・・・・・ 「・・・・・・。」 僕は静かに眼を開けた。そして、ハッと勢いよくベッドから身体を起こした。しかし、身体に激痛が走ったため、ベッドに再び吸い付かれる。 「・・・・・・目覚めたか。ジンやガウセルも無事だ。」 目の前にはジャルースが椅子に座っていた。 「うっ・・・・・・ここは・・・・・・」 僕が起き上がろうとすると、ナンシーがかけ布をかけた。 「まだ無理しちゃダメ。かなり傷が深いわ。でもまだ命があっただけでも幸いね・・・・・・。」 そうナンシーが言った後に、ジャルースが話を始めた。 「ここは元産業都市ナイルスの中央病院だ。エージニア渓谷から一番近い病院は、廃墟(はいきょ)だがここなのじゃ。少し日当たりが悪いが、その点は我慢してくれ。まぁその話は置いといて、君に渡したい物がある・・・・・・。」 ジャルースはあの箱を袋に持って来ていて、僕の枕の隣に置いた。 「この箱は、午後3時のティータイム時に、セルヴォイ殿とわしとでお茶をしているときにナンシーさんが宅配物として届けに来てくれた、『送信者不明の』、クローヴィス君に宛てた荷物だ。中は、精霊石と、予言のような1文が記された紙1枚が同封されていたのじゃ。なぜクローヴィス君宛てに来たのかも分からん。しかし、1つだけ分かることがある。それは・・・・・・」 僕は、ジャルースの言うことを一語一句逃さずに聞いていた。 「この精霊石の中に・・・・・・『誰もが見たことの無い精霊が入っている』ということだ。」 僕はその言葉を聞くと、少し自分が何者かに選ばれたような気がして、なにやらよく分からないプレッシャーを感じた。 「そして、同封されていた手紙の中を読んでみなさい。」 僕はナンシーの手を借りて少しずつ起きると、箱の中に納まっている紙を取り出し、黙読してみた。 (・・・・・・クローヴィス君、この石は、君の運命を左右する・・・・・・。君の運命を変えし者より・・・・・・?) 「クローヴィス君。なにかこの言葉に心当たりはないかね・・・・・・?」 僕は僕に宛てた人の名前がなんとなく判ったような気がしてきた。そして僕はもう、行かなければならない場所が分かった。 「ジャルースさん・・・・・・。1ヶ月と1週間ぐらい前、悪夢を見た人が限られて出現したんです、僕達の集落に。その悪夢を見た人達で、この傷が完治した時点で、デーモンの生息地に行ってみようと思います・・・・・・。」 ジャルースとナンシーが少し驚いたが、ジャルースは少し笑みを浮かべた。 「・・・・・・そうか。そういえば、デーモンが昔住んでいたと思われる場所があったな。たしか・・・・・・」 ジャルースが頭を傾(かし)げていると、ナンシーが補足した。 「・・・・・・フェイギル島です。あそこに行くといいでしょうし、船旅の途中にメイリル島があります。そこは・・・・・・」 その話が聞いたことがあったので、僕が続きを話した。 「たしか、オスカーの故郷と聞いたことがあります。『ウォンキャベルネイ』っていう集落が出身だそうで、オスカーがまだ2~3歳の頃に仲間割れが起きたらしくて、争いがあったそうです。そして、自分達も巻き込まれないように、オスカーの両親は何らかの移動手段で、ヴィルム島に来たそうです。それでもって、今に至っています。」 と、僕が話していると、もう夕方の5時であった。その途端、ナンシーが話を割り切った。 「ごめんなさい。そろそろ私、学校が始まるので・・・・・・これで失礼します。クローヴィス君も無理しないでね。」 僕が軽く頷くとナンシーはその場を立ち去った。 僕達の住んでいるヴィルム島では、20歳になるまで学校は無く、それまでは両親から教わったりする。しかし、20歳になるまでが大変。大体家で教えることは読み書き計算程だが、20歳までにどれだけ勉強しているかによって、行ける「成人学校」が絞られてくる。 例えに僕を使ってみると、読み書き計算の他に、精霊の性質や人と人との接し方、それを実践したりするのを親から学んできている。 僕の将来の夢は、立派に精霊を操る『サモナー』になること。そのためには、『サモナーズ成人学校』に行って、専門的なことを学ばなければならない。それまでには精霊のことについて沢山学んでおかなくてはいけない。ナンシーはここの学校に通っている為、かなり精霊の事について詳しいはずだ。ちなみにこの学校は夜間登校だ。 その他にも、精霊の所持する魔法を駆使して集落を守る仕事に就く人や、聖職者になりたい人向けの学校『マジシャンズ成人学校』、オスカーが目指している魔法銃剣士を夢見て、自分の家族や世の中の人を守りたい職業に就きたい人向けの学校『ウィザードリィ成人学校』、病院や戦場では欠かせない癒霊を使って、病気の人や怪我をしている人を治したいと思っている人向けの学校『ヒーラーズ成人学校』、盗賊のように素早く情報源が沢山入って、情報誌などを製作したりして、人の役に立ちたいと思っている人向けの学校『シーフィーズ成人学校』などがある。 僕はそれなりに勉強ができる方なのだが、今の年代の人達と学力を競ってみたいと時々思うのだが。 「まぁクローヴィス君。今日はここでゆっくり休みたまえ。その間、自分の孫が来てくれとる。」 と、その言葉と同時に2人の男女が入ってきた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.10.08 22:13:50
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