人形遣い 第1章 人形の吐息 続き2
校門前に来ると、見事に閉まっている。「おい・・・・・・こうなった場合どうすればいいんだ?」「問答無用。アンタ達ナラ通レルヨネ?ソレトモ、コノ門ヲアタイノ『陰陽術』デ破壊シロトデモ?」3人は息を詰まらせながらも校門をよじ登り、学校に侵入した。まず3人は陰陽術のことも知らない為、校門自体を知らず知らずの内に壊されると大変まずいからだ。「ソシテ次ハ、3-Dノ教室ノ掃除ロッカーヲ退(ど)カシテ、退カシタ先ニアル取ッ手ヲ右ニ。ソウシタラ屋上ニ繋ガル裏通路ガアルカラ、ソコヲマデ行コウ。」すると次の難関がやってきた。教室が閉まっている。かといって職員もいないわけだから、職員室も開いていない。「ショウガナイネェ。偵察人形ノ『力』ヲ見セテアゲルヨ。」すると、葵から蔀が離れ、ドアの鍵の前に立った。「『封式・錠外切開』。」そう唱えたのはよかったが、その後また葵のところへ戻った。「丁度イイ。コレモ練習ヨ。サッキ錠外シノ陰陽術ヲ唱エトイタカラ、指ヲ入レテミテヨ。開クカラ。」と、単刀直入に言う人形に対して右往左往。訳もわからず葵はためしに人差し指を鍵穴に触れさせてみた。するとどうだろう。派手にガチャッという音とともに、ドアが開いた。「ソレミナサイ。~式トイウ風ニツクノガ、陰陽術ナノサ。サテ、今度ハ葵ガヤッテゴランヨ。封式ハ変ワラナイカラ、チョット考エテ唱エテミテ。他人ガ中ニ入ッテコナイヨウニ、『内側から錠を掛ける』コトヲ想像シテミテヨネ。」「う~ん・・・・・・錠を内側から・・・・・・切開はどうやればいいのかな・・・・・・」そこに、陽炎が補足した。「葵、開ケタモノハ、再ビドウスルノ?」「・・・・・・再び閉める。あ、再閉かな?とすると、『封式・錠内再閉』でいいのかな・・・・・・?」葵がそう口にすると、蔀が動揺した。「スゴイジャナイ!正解正解、大正解ダヨ!モウ一度唱エテ、内側カラ閉メテゴラン。」葵が唱えると、蔀の腕が鍵のようなものに変わり、内側から鍵を閉めた。「マァ教室ナンダカラ、内側ニ付イテイル鍵カラ閉メレバヨカッタンダケドネ。マァ、コレモ練習。」3人と3体は教室の掃除ロッカーの前へと移動し、立ち止まった。「んで?ここからこの掃除ロッカーを退かせばいいのか?」命狩が頷くと和希と剣吾は力いっぱい掃除ロッカーを動かそうとした。しかし、その掃除ロッカーは異常に重く、ピクリとも動かない。自分たちの教室の掃除ロッカーは、2人もいれば持ち上げることまでできるのに。「奥ガ隠シ扉ダカラナ。ソウ簡単ニ動カセテモラッテハ困ル。一番早イノハ、『破壊』ダナ。」なぜこの人形達は『破壊』という言葉が好きなのだろうか。と、3人が考えているうちに、命狩が掃除ロッカーの前に立っていた。もう分かるであろう。「『烈式・時雨雹打(れつしき・しぐれひょうだ)』」時雨の如く降り注ぐ雹の様に、掃除ロッカーに打撃を次々と与えて行き、最終的に―――。―――バキッ。掃除ロッカーを貫通。人形達は無頓着で中に入るので、剣吾達もついていった。奥へと目をやると、道がある。通路は暗く、後ろから注がれる一筋の光だけが唯一の明るさであった。やがて教室より少し狭い部屋へと抜けた。「『麻式・腐乱飛丁(ましき・ふらんひちょう』」どこからともなく、陽炎に向かって一本の果物ナイフが飛来してきた。しかし陽炎はなんなく避(よ)けると、投げたと思われる所に近づき、投げ返した。「・・・・・・相変ワラズダナ。デモ、今ハソンナ事シテイル場合ジャナインダ。紫電(しでん)。」コトッコトッと音を立てながら歩き、こちらにやってきた1体の人形。「ソノ者ハ連レカ。」「アァ、ソウダ。自分達ヲ選ンダゴ主人様サ。」そう陽炎が言うと、紫電とか言う人形は口を上下にカタカタと動かし、微笑した。「陽炎トハ、戦闘ヲ交エタクナイナ。遣イガイルダケデ、カナリ違ッテクルカラナ。」遣いというのは、人形を操る人のことだ。「ン?オ前、遣イガイツモト違ウジャネェカ。」「悪イカ?」「悪イモ何モ、マタ最初カラスタートサセルノカ。マァ、俺ハモウゴメンダナ、束縛サレテルミタイデ。」と、彼らの話が十数分間続き、けりがついたところで、紫電は消えた。「でも、本当にこんなところあったんだねぇ。びっくりしたよ。」と、剣吾は、少し狭い部屋の壁をコンコンと叩いてみる。音が幾度となく響き渡り、冷たい鉄板の温度が、音と比例して身体に浸透する。「サテ、練習ヲ始メヨウカ。」人形達が各別々に動き始めると、奥から等身大のわら人形を引っ張り出してきた。「コイツハソコラノ小サイワラ人形トハ格ガ違ウ。燃ヤサナイ限リハ、ホボ永久的ニソノ姿ヲ保チ続ケル。練習相手ニハモッテコイノ相手ダ。」特定位置に設置し、命狩が和希に近づくと、「マズハ、俺ガサッキ出シタ『烈式・時雨雹打』ノ練習ダ。コレハ殺戮人形ノ基本的ナ技ノ一種ダカラ、早ク覚エテオキタイモノダ。」そういって、最初に武術の技の稽古が始まるのであった。