血液型選手権~♪
ええ、俺も密かにチェックしています。AB型です。朝から見ていて、「ごめんなさい、今日のビリは...」とか言われると、ちょっと凹みますよね、ちょっとね。血液型については、占いとかでよく使われるので有名だと思いますが、典型的な「メンデル型遺伝」に従うものとして有名ですね。親から子供へ、血液型はどう受け継がれるか?まず、A,B,O,ABと書いてありますが、これは「表現型」といい、血液の特徴として“見えて”いるタイプを表していて、実際には、「AA,BB,OO,AB,AO,BO」の6タイプがあります。A型とは、AA,AOをあわせてB型とは、BB,BOをあわせてO型とは、OOのみをAB型とは、ABのみを言います。AAとAO、BBとBOであっても実際の血液の違いはありません。これら二つのABOがペアになって血液型が決まるのですが、この二つは何処から来たのかといえば、両親から一つずつ受け継ぐことになっています。つまり、父親がB型(BO)で母親がA型(AO)なら、父親からはBかOのいずれかを、母親からはAかOのいずれかをもらいます。それぞれから一つずつもらったものの組み合わせで、子供の血液型が決まります。即ち、この両親からは、AB,AO,BO,OOの子供が生まれる可能性があり、表現される血液型としては何型でもありえるということですね。ここまでは良く知られていますね。さて、実は血液型だって「遺伝子」なのです。意外と気づかれててないのかな、そうでもないのかな?この、両親の二つ持っているペアのうち一つだけを子供が譲り受け、片親から一つずつでまた二つのペアを持つ、というのが全ての遺伝子の基本的な振舞い方です。子供がどことなく親に顔かたちが似ているというのは、おおよそこの遺伝子の振る舞い方のためです。さらに言えば、これはDNAの振舞い方とも一致しています。なぜなら、DNAこそが遺伝子だからです、当然の話ですね。DNAでの見方をすれば、子供のもととなる受精卵を作り出すとき、有名なDNAの「二重らせん」はねじれてほどけます。らせんがほどけて真っ直ぐなハシゴ状になり、二本の鎖となるのをイメージしてください。これらのどちらか一本が偶然選ばれ、DNA一本だけを持つようになった細胞が発達して、精子(あるいは卵子)になります。そして、受精によってこれらの細胞は一つになり、それぞれの細胞から来た一本のDNAは再び二つのハシゴを形成し、ネジレてもとの二重らせんにもどります。こうして、子供に両親の性質が受け継がれていきます。実際は人間ではここまで単純ではないのですが、ほぼこの原則はあてはまります。そして、面白いことに、この原則は人のみならず全ての生物に当てはまります。食中毒で問題になった大腸菌から、ニンジンもアリも鳥も人もクジラも全てです。これは生命の基本的な遺伝システムなのです。さて、話は血液型に戻ります。血液型血液型と言いますが、実際のところそれはナニモノなのでしょう?「輸血の際に、この血液型からあの血液型には輸血できないってことじゃん」「性格を決めるためのものよ、そんなことも知らないのか?」前者は正解です。後者は...さっき言ったように、血液型は遺伝子です。そして遺伝子で決められているのはタンパク質なのです。じゃあ何のタンパク質か?ABO型血液型に関して、答えは「血液中の赤血球の表面にあるタンパク質を決めている遺伝子」これだけの無味乾燥な事実です。このタンパク質にはAタイプ、Bタイプがあります。A型の人はAタイプのみ、B型はBタイプのみ、AB型はAB両方を持ち、O型はどちらも持っていません。これらのタイプに優劣はありません。輸血の際に血液型が重要になるのは、輸血液によっては大変なことになるからです。人間には、血液中に何かが入ってくると、それが自分にとって自分とは違うもの(例えばウイルスとか菌とか)か、自分と同じもの(自分の体を作る細胞)かを区別しようとします。その際、細胞表面のタンパク質が、自分と違うかどうかを区別するのに使われます。組み合わせによっては、輸血した人の血液の赤血球の表面のタンパク質が、輸血された人の体に異物だと判断されてしまい、血液の作用でガチガチと固められ、それが血管に詰まって死に至る時があるのです。自分の持っているタイプのタンパク質を持つ赤血球は大丈夫です。A→AB,A、B→AB,B、AB→AB、O→A,B,AB,Oが大丈夫ですね。輸血する人のタイプの英字は、される人のタイプにもありますよね(O型は何も持ってないので誰にしても大丈夫なのです。)ABO血液型とはこれだけのことです。さらに言えば、血液型にはRh型など他の血液型もあり、これらは多種多様です。これは他の種類の赤血球表面のタンパク質の遺伝子です。ABO型は決して特別なタイプの血液型ではありません。さて、はたしてこの単なる赤血球に突き出したタンパク質を決めるだけの遺伝子(血液型)が、性格に影響するでしょうか?赤血球の表面に突き出ているタンパク質が性格の指標になるとは、生物学的には到底考えられません。統計学的な事実というのも少々説得力に欠けます。母集団の問題や、データのバイアスがあるようです。さらに言えば、四つの血液型で性格を分ける、というのも無理があります。多種多様な性格を判断するには4という分類は極めて雑です。もちろん、「根拠がない」ということは、「可能性がある」とも言えます。実際、とある科学論文で「血液型遺伝子が性格決定遺伝子(これも決定的なものではありませんが)と遺伝的に近い場所にあり、血液型が性格とともに受け継がれている」というのを聞いたことがあります。が、これは本当に最近の話ですし、この論文は正直どうだかわかりません。しかし、血液型性格診断は昔からさも当然のように信じられ、会社によっては血液型で採用不採用、部署の向き不向きを決める指針にしているところもあるということです。血液型「占い」を嫌いではありません。僕も良く見てますしね。信じる信じないは自由ですが、これに科学的根拠が与えられていないことを踏まえてそれを信じるのか?偏見を生み出す要因のあることを踏まえているか?これが重要だと思いますね。それは根拠のないことをさも当然のように扱っているものだ、ということを抑えておくべきだと思います。最近、血液型番組に「血液型による偏見や相性の決めつけはやめましょう。」というテロップが出ます。これはBPOの、「血液型と性格の関係には科学的根拠は証明されておらず、社会的差別に通じる危険がある」という指摘があったせいのようですね。・・・あああ、なんか社会的なことが科学にからむとつらいものがあります。怖い怖い。科学の神を信じるか?血液型占いの神を信じるか?それだけの違いだ、と言えもするのかなぁ?