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テーマ:闘病日記(4013)
カテゴリ:家族のコト
「この危機を乗り切れば、完治するのか?」という父の兄の質問に先生は答えた。 「弟さんは、すい臓がんのステージ3です。決して初期ではありません。すい臓がんは発見が最も遅れるガンの1つで、気づいたときに手術ができる割合は50%、さらに手術ができても他の臓器に転移が見られずガン部分を切除できる割合がその半分です。残りの半分は開腹しても取り除くことはできず詰まっている胆管を通すなどのバイパス処置しかできません。 弟さんの場合は、術前の検査でも開腹時においても転移が見られなかったので切除手術を行いました。現在まわりの組織を生検に出しリンパ節に転移がないかどうかを調べているところです。 しかしながら、すい臓がんはもっとも転移のおきやすいガンであるため、仮にリンパ節に転移がみられなくても、5年生存率は10%と低いことに変わりはありません。本人から余命については聞かれていないのでこれまで申し上げておりませんが、平均余命は1年半ともいわれています。すい臓がんの手術というのは、5年生存率10%になんとか入れようと試みるためのものでしかないのです。完治はありません。胃がんや大腸がんのように、ガンの部分だけを切除すればよいというものではないからです。 よほど自覚症状がなく、たまたま健康診断などで初期に見つかった場合はこの限りではありませんが、弟さんの場合は胆管がつまり黄疸がでる、という症状がでてからの発見ですから。次に再発した場合これ以上の手術はできず、あとは抗がん剤治療を行うことになります。 どんなに術前元気だったとしても、あのまま手術を行わなければ余命は数ヶ月だったと思われます。手術ができる状態で望めたことは最善の策でした。今回大動脈瘤破裂という、類稀な不幸が起こってしまったことは大変残念ですが、今は完全に止血すること、他の重要臓器の不全をなるべく未然に防ぐことに全力をつくすしかありません」 先生の話を一通り聞き病院を出たときは23時をまわっていた。 自分で調べたとき、どう割り引いても「すい臓がんのステージ3」は母親が言ってたような初期じゃない。オペが成功すればそれで万々歳ってことじゃないんじゃないの?って思ったけど、「手術は大成功だって!ガンは全部取り除けたんだって!お父さん、すぐに元気になるよ!」っていう母親の言葉を素直に信じちゃってた。 それが先生からはじめて「余命」の話を聞かされ父親に残された時間はそう長くないことを実感した私は本当にショックだった。 でも、ショックなのはもちろん私だけじゃなかった。 「え・・・・。平均余命が1年半?大変な手術を2度もして今もまだどうなるかわからない苦しい状態なのに、これが持ち直して退院できたとしても1年半しか生きられないの?先生は手術は大成功、リンパにさえ転移してなかったら大丈夫っていってたのに!!」 と母は動揺を隠さない母に、「明日また病院に来たときにちゃんと先生に説明聞こうよ。とにかく今は早く元気なお父さんに戻ることを信じるしかないよ」としか言えなかった。 その一方で私は、こんなことになるならたとえ余命数ヶ月だったとしても、手術なんかせずに普通に生活してたほうが良かったんじゃないの?という思いが消えず、それを母には聞こえないように看護師である妹にぶつけた。 「そんなことないよ。合併症っていう不幸なオマケはついてきちゃったけど、手術できる状態だったなら手術することが最善の道だったんだよ、おねえちゃん。お父さんも先生もがんばってくれてるんだから、お母さんもおねえちゃんも私も信じて支えあわないとね。」 そうか、そうだよね。 ここで否定しちゃったらがんばってるお父さんがかわいそうだよね。 ごめんね。頼りにならないおねえちゃんで。いつも近くにいてお母さんを支えてきっと一番泣きたいのはユウだよね。私はたまにしかこないのに涙流してばっかりでごめんなさい。本当にどっちが姉かわかんないね。 「そんなことないよ。おねえちゃん、初めてあんなお父さんの姿みたんだもん動揺してあたりまえだよ。私は私までが涙流しながら動揺したらお母さんどうなっちゃうかわからないって思ってるから」 今晩だけ。 明日からは泣かないから。今晩だけはゆるしてね。 夫にも泣きながら電話をし、泣きつかれて眠りについた。 どうか明日は少しでも元気な父の顔が見れますように、と願いながら。ただひたすら待つことしかできない本当に長い長い一日だった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.03.17 15:29:46
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