交通事故と裁判所(1)
「現代の世の中では,皆が交通事故の危険とは隣り合わせの生活をしている」ということは,運転免許更新の際の講習でいつも聞かされる。車やバイクを運転している者は当然のこと運転していない者も,いつ何時交通事故に巻き込まれるかもわからない。交通事故を起こせば,警察で取り調べを受けた上裁判所から呼び出されて大変面倒なことになる,ということくらいは誰でも知っているだろう。一般の人にとって,裁判所が最も身近に感じられる時かもしれない。不幸にして交通事故を起こしてしまった時には,加害者と被害者との関係に警察・検察庁や裁判所といった国家機関が絡み,さらにその中に損害保険会社が絡んで,非常に複雑な法律関係作っている。それをある程度正確に理解している人は少ないように思う。相手との示談交渉は保険会社や弁護士に任せきり,警察の言われるままに現場検証が行われて調書(「実況見分調書」という)が作られて,なんかわからないうちに罰金を払わされ,,運転免許停止や取消になって終わり,という人が多いのではないだろうか。もちろん交通事故を起こさなければ,こんなことを知っておく必要もない。しかし,どんなことで巻き込まれるかもわからない以上,ある程度は交通事故発生時の法律関係を事前に知っておくべきだと思う。私の日記では,今日からしばらくの間,交通事故が発生した際の「車両運転者の責任」という観点から法律関係を整理し,それに裁判所がどのように関わっていくかを書いていきたいと思う。車やバイクで道路を運転している最中に事故を起こした場合,運転手がまずしなければならないことは何かということは誰でも知っているだろう。まず第一に車やバイクの運転を停止し,負傷者がいればその負傷者を救護しなければならない。そして第2に道路における危険を防止するための措置(三角マークを道路に置く等)を講じた上で最寄りの警察に事故の届け出をしなければならない。道路交通法72条の規定だが,こんなことも知らなければ車を運転する資格はない。教習所で何回も聞かされているだろう。問題はその後である。おおまかに言って,運転者には民事責任と刑事責任の2種類の責任が課されると同時に,行政処分が課される。明日の日記から,これらの責任を順を追って書いていきたいと思う。