もう一度窓を見るとあきらかに夜が明け始めている。そんな時間が好き。
午前3時。あるいは、もうすでに午前4時を回っているかもしれない。ベランダの向こうでは、新聞配達員が遠慮がちな排気音をまき散らしている。その気配に俺はやっと『そろそろ寝なきゃな』と思う。おぉっ!思いがけず今日は叙情的なオープニングだ。や。まぁね。『俺ってば、夜更かし』ってことが言いたかっただけなんだが。月に一度の名古屋滞在時は、実家で寝泊まりさせてもらうのだが一番の困難は、両親と俺とでは生活サイクル・リズムが極端に違うということだ。ヤツらときた日にゃ、夜9時前には布団に入っちゃうのでおちおちテレビも観てらんなくて。そもそも家に着くのが夜の12時を回ってたりするので物音で起こしちゃあ、翌日何を言われるかわかったもんじゃない。家に入る時だって勝手口から、そぉっと忍び込み脱いだ靴を取り込みつつドアを閉めるというお前は泥棒かと自分ツッコミをしてる状態だ。非常に気を使い、かつ、肩身が狭い。息苦しい。世話になってるので文句も言えないし、文句を言うのは決まってアチラ側だ。曰く『昨日、風呂場の電気がつけっぱなしだった』曰く『洗濯してほしけりゃ洗濯物は、このカゴに入れなさい』曰く『ひげ剃りを出しっぱなしにしておくな』曰く『読み終わった新聞は畳んでココにしまえ』曰く『まだいるつもりか』曰く『いつまでいるつもりだ』曰く『明日からオバチャンが来るから』曰く『そろそろ出てってくれないか』居づらいことこの上ない。早々にオイトマする。広告の仕事をしてると残業が多くて生活が不規則であること。活字中毒で、許される限り本を読んでいたいと思うこと。映画のDVDを時々買うが、観ないままたまってる作品が沢山あること。夜が好きで、寝ちゃうのがもったいないと思ってしまうこと。こんなに条件が揃っていては寝るヒマなどないのだ。実家にいる間は夜更かしをガマンするにしても、お気楽な独り身としては起きてないでどうするか!という結論に至る。70歳まで生きたとして、あと27年。まあ、5時間に睡眠時間が増えたとして、5(時間)×365(日/1年)×27(年)=49,275時間こんなにたくさんの時間、やっぱ寝るのはもったいない気がする。先日、夜明け近くまで本を読んでいて泣いた。内容がよかったのか、自分自身が少し疲れてたからか、歳をとって涙腺がゆるいだけかわからないけど『夜』が泣かせたのかもしれない。夜だから泣けたのかもしれない。昼間では、ありえない贅沢な時間だったのかもしれない。