電気通信産業における競争と将来(総務省の講演)
6/28に立教大ビジネススクールの「都市ビジネス論」のゲストとして、日本の通信業界の舵取りをしている総務省総合通信基盤局電気通信事業部の料金サービス課の課長のご講演を聞けました。総務官僚が立教大で講演されるのは初めてとのことでした。○ブロードバンドサービスにおける市場シェア(2004年12月) ◆ブロードバンド全体 1,863万人 NTT東西34.5%、その他電気通信48.2%、電力系1.9%、CATV15.4% ◆FTTH(戸建・中小企業) 138.2万人 NTT東西77.9%、USEN1.8%、電力系19.2%、その他1.2% ◆FTTH(集合住宅) 105万人 NTT東西33.9%、USEN19.7%、電力系8.3%、Fiber-bit7.2%、その他30.9% ◆ADSL 1,333万人 NTT東西37.5%、ソフトバンクBB35%、イー・アクセス13.7%、アッカ9.6%、その他4.2%日本は速度当りのブロードバンド接続料金が世界一安くなった。(データ伝送量100Kbps当りの通信料(US$、2004年9月):日本0.06、韓国0.24、スウェーデン0.85、米国1.77、ドイツ2.77、英国4.12、フランス6.18)近年、FTTH(光ケーブル)とADSLの格差が大幅に縮小し、月別純増数ではADSLをFTTHが超えている。○電気通信サービスの契約数 2005年3月 携帯+PHS 9,148万件、固定電話5,879万件、ADSL1,333万件、FTTH243万件 携帯+PHSが固定電話を2001年11月に超えた。 通信業界では、今後、携帯電話の契約件数が、国民の数の1億2千件を超えるか?が注目されている。○通信業界の競争状況FTTH市場とADSL市場に於いては、単独、或いは複数事業者間の協調による市場支配力は働いていないが、携帯・PHS市場においては、複数事業者間の強調による市場支配力行使が懸念される。携帯市場は現在3グループ、4社のみ。携帯市場の競争促進要素として、2006年導入予定の番号ポータビリティに向けた顧客囲い込み競争、PHSの自網内通話定額制料金の出現があげられる。○通信業界の課題と将来展望・米国の通信は地域のコミュニティ毎に通信網を構築してきた歴史があり、ネットワーク管理技術をオープンにして相互接続を保たないといけなかったのだが、日本は国家の公共サービスとして国策で通信網を構築し、ビジネス化した為、ネットワーク管理に関するルールがNTTとKDDIのみでクローズされてしまった。・国内に携帯端末メーカーは9社あるが、トップのNECでさえ世界シェアは1.7%にとどまっている。世界シェアトップはノキア35%、サムスン20%、モトローラ19%。携帯端末メーカーは、今後グローバルに展開をしないと生き残れないので、数社に集約されるのではないか?・IP電話の出現により、地域会社と長距離会社に分ける意味がなくなりつつあるので、NTT再々編もありうるのではないか?・米国では、グループ会社で地域通信、長距離・国際通信、放送・映像配信、移動体・無線を全て持つ方向へ移行している。日本に於いても携帯電話市場に新規参入が見込まれ競争が進展する模様。PS.授業の後、社会人大学院恒例の懇親会で、USENの話になりました。USENはギャガと日活を買収しましたが、日活については過去のコンテンツが目的ではなく、ブロードバンド放送向けのコンテンツ制作を目的として買収したそうです。FTTHで顧客を囲い込んだ後、「ブロードバンド・コンテンツ・プロバイダー」を模索しており、FTTHハード部門の売却も有り得るとのこと。勿論このビジネスモデルは、マッキンゼーから引き抜いた三羽ガラスを中心に、練られているそうです。