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2007/04/21
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カテゴリ:読んだ本(時代)
江戸時代の芝居小屋を舞台にした中編集である,

松井今朝子の「似せ者」(2002)

を読んだ。

それぞれがストーリーとしておもしろいだけでなく,時代を変え,京都,江戸,大坂各地の芝居小屋について扱われているので,その事情を知ることができるという意味でも興味深い。

似せ者
宝永年間(元禄の次)の京都が舞台。

初代坂田藤十郎の死の1年後,彼に30年仕えていた与一は,藤十郎似で彼のものまねををして伏見や奈良の小芝居に出ていた旅回りの役者桑名屋長五郎を京に連れて行き,二代目藤十郎を名乗らせる。

正月興業は大当たりするが,4月に年号が正徳と改まる頃から客足が落ちだし,同時に与一と長五郎の思惑がずれていく。
与一が長五郎をあきらめ,明日からの算段を考えようとする潔さが気持ちよかった。

狛犬
吉宗の死の前後あたりの江戸が舞台。

若手の有望格である芸達者な市村助五郎と不器用な大瀧広治と助五郎の踊りの師匠お和佐,菊弥母娘を中心とした話。
助五郎の自意識過剰とも思える気持ちの揺れと,彼らを巡る運命の流れがおもしろかった。

鶴亀
天明から寛政に変わった頃の大坂が舞台。

役者の道をあきらめ,お仕打ち(江戸の座元にあたる興行師)になった嵐亀八が,元の師匠の嵐鶴介に振り回される話。
顔見世興業を「一世一代」(引退の舞台)としたいという鶴介の願いを聞いて,涙で終わる興行をした亀八だが,鶴介は他の小屋で一世一代をやったり,小芝居や大坂の舞台に出続けたりと……

亀八の鶴介への想いを考えると,このタイトルは秀逸。

心残して
幕末から維新にかけての江戸が舞台。

のちに三味線の名人となる若い杵屋巳三次と旗本の次男神尾左京の話。
「御前様」の声に惚れ込んだ巳三次が3度目の出会いのあと神尾が世話をしている吉乃に三味線を教えることになるが,黒船の来航以来大きく変わった江戸で,上野で彰義隊が錦裂に敗れ……

興津は絶対生きていると思っていたのだが,意外な登場の仕方に心が動いた。

松井今朝子の他作品についての日記は,フリーページ 読了本(日本) (松井今朝子)からごらんください。

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Last updated  2007/04/21 12:46:04 AM
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