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テーマ:連載戯曲(216)
カテゴリ:哀歌
圭介 ちゃんと書く仕事には就けたのか
守 一応は・・・。 圭介 何だよ、歯切れが悪いなあ。 守 そんなことないよ、ちゃんと仕事してるよ。 圭介 そうか? 守 ああ。 圭介 なら、いいけど・・・で、何の仕事してるんだ? 守 ん~・・・ 圭介 何だよ。 守 説明しにくい。 圭介 何で? 守 業務が多岐にわたっている為にそれを簡単に説明が出来ない。 圭介 別に簡単に説明しなくたっていいぞ。 守 いやでもほら口下手だから。 圭介 誰が? 守 俺が。 圭介 ん~君が仮に口下手なのだとすると口下手じゃない人ってどんな人だ? 守 何か誤解を招いているようなので、言っとくけど、俺は本当に口下手だぞ。説明下手というか・・。 圭介 軽く言う 圭介 ああ、そうだな。 守 何だ、その全く信用していないような軽い相槌は!! 圭介 だって心にもない相槌だもん。 守 いいか?そもそも相槌ってのは二人が一緒になって一つの釘を打っている様だぞ!二人がこう1.2.1.2のテンポで槌を打っているとだ、どっちかのテンポがおかしくなってきて二人同時に一つの釘をドンって打ったら丸い皿のような釘の頭がヘニャっと山型に折れ曲がって、そこの強度が低下して頭ごとポロって取れたらどうするんだよ!ある程度二人で打った後だから下手するともう全部打ち込まれてるんだぞ!頭がなくちゃ、くぎ抜き使っても、もう抜けないじゃないか!どうやって抜くんだよ!そうなったら! 圭介 何の話をしてるんだ? 守 1人、釘は1本って。2人とかでやっちゃ駄目。 圭介 あのさ、つっこみたいトコロは多々あるけれども、そもそも釘じゃなくて刀だろ? 守 あえてだよ。 圭介 あえての? 守 あえての。 圭介 あえての、な・・・確かに説明は下手かも。 守 はあ?何言ってくれてるんだよ。俺の説明が下手?そんな馬鹿な。 圭介 自分で言ったんだろ? 守 俺が?いつ? 圭介 今!今言ったじゃねえかよ! 守 今!?いいか?圭介。今ってのはほんの一瞬でしかないんだよ。例えばな・・・あ!今、あの人あくびした! 守 客席を指差して言う 圭介 え?何処、どいつ!?ここは部屋の中だけど誰だ!?そんな失礼な奴は!人が真剣に・・・ 守 しかしそいつは既に何もなかったようなすまし顔。 圭介 何だと! 守 でも無理やりあくびを中断したから出てきてしまった涙を自然に拭こうとする為に目が疲れたフリをしてる。 圭介 そんなあからさまに!なんて奴だ・・・。 守 と言うように今は瞬間でしかないんだよ。次の瞬間には今は通り過ぎてどんどん過去になってゆく。 圭介 そっか・・。 守 だから、「今、いったじゃねえかよ!」ってのは有り得ない。何故ならその時、今言ってるのはおまえ自身だから。 圭介 ・・・ウン、なるほどな。言われてみたら確かにそうだ。じゃあ・・・さっき言ったじゃねえかよ! 守 圭介。 圭介 何だ? 守 今の俺の説明を聞いてもまだ俺が説明下手だって言うのか? 圭介 だから、自分で言ったんじゃんか! 守 じゃあお前は俺がネス湖にネッシーがいるって言ったら信じるのか?屈斜路湖にクッシーがいるって言ったら信じますか?俺が・・・ 守 女性風に 守 あ、そこのお嬢さん!この化粧品は肌にとっても良いから使ってみない?、値段は3年で30万くらいだけど1ヶ月あたりだと利息を入れても1万ちょっとだから今とそんなに変わらないでしょ? 守 普通に戻る 守 とか言ったら、その化粧品を買いますか!? 圭介 買わないけど・・・てか化粧品なんて使ってないし。 守 使ってる使ってないが問題じゃない!え!?使ってないの? 圭介 ああ。 守 どうするんだよ。 圭介 何を? 守 だって今日収録だぞ。今は昔と違ってDVDだから永久保存だって言うのに! 圭介 はっ!忘れてた! 守 もう照明で表情が飛んじゃうじゃんかよ。 圭介 すまん・・・ちょっと寝坊したもんだから・・・。 守 すまんで済んだら・・・すまんってさ、済まないってコトだよな? 圭介 そうだろ。 守 それってすごい傲慢じゃないか?間違った当の本人が「済まねえよ!」って言ってるんだろ?逆ギレだよそれ。 圭介 ・・・守? 守 車でぶつけた奴がさあ、ぶつけられた奴に「何すんだよ!」って 圭介 守! 守 強ぇ~!言ってみて~! 圭介 守!! 守 ん? 圭介 仕事・・・うまく行ってないのか? 守 神妙に 守 ・・・いや、そう言う訳じゃないんだが・・・ 圭介 らしくねえよ。言いにくいのは分かるけどさあ・・・。 守 ・・・ああ、そうだな。すま・・・俺が悪かった。 圭介 で、どうしたんだよ。 守 うん・・・いや順調だったんだよ。本当に。あれから色々あったけど本当に順調だった。最初はさ、普通に出版社に勤めて上がってきた原稿チェックして直してみたいなことばっかりで自分で書くことなんてぜんぜん出来なかったんだけど、だんだんと記事も任せてもらえるようになってきて、まあ、記事ったってどこそこのラーメンは旨いとか、今お勧めのデートスポットは・・・みたいなのばかりだったけど、俺の書いた記事見て読んだ人から感想が届いたりしたんだぞ。発行部数も少ない、こう言っちゃなんだけど、しょぼい雑誌だよ。それなのにさ。 圭介 凄いじゃないかよ。 守 でもな・・・会社がさあ・・・ 圭介 どした? 守 潰れた。 圭介 え? 守 いや~、ほら俺って宵越しの銭は持たない主義じゃん?貯金とかも全く無くてさ。まあ、保険は下りてるんだけど、俺、基本給は安かったもんだから全然成り立たなくて・・・。 圭介 そっか・・・で? 守 え、いや・・だから、あの・・しばらくですね、俺をここに・・・ 圭介 ああ、いいよ。別に。 守 ええ!まだ最後まで言ってないのに! 圭介 家賃払えないんだろ?いいよ、別に。落ち着くまでいれば。 守 すま・・・ありがとう。 圭介 いいって別に。幸い彼女がいるってわけでもないし。 守 いないの? 圭介 いないって。 守 ああ良かった、それだけが心配だったんだよ。 圭介 それだけなのか?他にもあるだろうがよ。俺が4畳半のアパートに住んでたらとか・・ 守 それなら大丈夫。俺、場所取らないから。 圭介 実は俺も家がないとか・・・ 守 心強い味方だ。 圭介 101匹のワンちゃんと暮らしてるとか・・・ 守 それなら尚更、俺1人増えたところでどうってコトないだろ? 圭介 ま、そうだな。 守 ああ、そうだ。 圭介 守さあ、それならそうと早く言えよ!なんかもっと別のこと想像しちゃったじゃねえかよ! 守 別のことってなんだ? 圭介 例えば、借金があるから金を貸してくれとかさあ。 守 借金のほうが良くないか? 圭介 いや~貸せる額ならいいけど、俺だって貯金ないし・・。それか、実は病気でもう長くは生きられないとかさあ。 守 そんな馬鹿な。 圭介 そうなんだけどさあ。確かに守は殺しても死なないと思うけども、そういう想像を一杯しちゃったってコトだよ! 守 悪かったよ。・・・で、どのくらい彼女いないんだ? 圭介 いいじゃねえかよ。別に。 守 いいじゃねえかよ、教えてくれたって。 圭介 うるさいなあ、ずっとだよ。 守 だから、ずっとがどのくらいかを聞いてるんだよ。 圭介 ずっとはずっとだよ!これ以上聞くなら出て行ってもらう。 守 もう聞かない!興味ない!全くない! 圭介 ならいいが・・ま、今日はとことん飲もう! 守 俺はいいけど圭介、明日仕事じゃないのか? 圭介 俺?俺は今フリーだから。明日は午後から打ち合わせがあるだけで、あとは特に何もない・・・いや、ないわけではないけど、急ぎじゃない。 守 フリー!?なんだ!その悠々自適な響きは! 圭介 いや、そんな良いもんじゃないよ。仕事無いときは全くないし・・・80%以上が運だね。 守 そんなもんか? 圭介 ああ、俺は小説を書く時間が欲しいから、フリーをやってる様なもんだから。 守 やっぱり書くのか? 圭介 まあ、夢ですから。 守 夢か・・・いいな。 圭介 なんだよ、守にだってあるだろ? 守 そうだな・・・いや、特にないかな。普通に生きていければ。爺さんまで。 圭介 爺さんか・・・。そりゃ夢が叶ったのか分かるまで相当かかるな。 守 ちょっと考えて 守 ・・・だな。 暗転 つづく ご愛読ありがとうございます この勢いでポチっとお願いします!! やる気大きく変動中!! ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
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