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Mar 17, 2008
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テーマ:本日の1冊(3697)
カテゴリ:本・コミック

題名通りかなり重たいテーマの本です。

アメリカでハーブ園を営んでいた著者のトマス・デバッジォが、
アルツハイマー病と診断されてからの手記で、
現在の闘病の日々と、本人の幼い時からの思い出、更に
アルツハイマー病についての執筆時点での最新情報という三つのテーマが
代わる代わる語られていきます。


アルツハイマーと闘う

アルツハイマー病は、脳の神経細胞が変性・消滅していく病気です。
アルツハイマー型認知症とも言われる通り、主症状は認知症で
脳血管性認知症などとは異なり、緩やかに進行するのが特徴です。

彼はハーブ園を営む前は新聞記者をしていたこともあり、
診断されてから自らの「地獄の物語」を書き記そうと決意します。

まずこの病気で最初に侵されていくのが、短期記憶です。
最近の出来事や、ついさっきやったことなどの記憶が
すっぽり抜け落ちてしまうのがそれです。
ただの物忘れと違うのは、エピソードを丸ごと忘れてしまうというところです。
長期記憶は病気がかなり進行するまで残るそうですが、
これもやがて蝕まれていきます。

自分を形作る記憶を、ひとつひとつ確かめるように淡々と語りつつ、
並行して、現在の自分の状態を―病気による変化や、
徐々に進行していく恐怖を包み隠さず綴っていく…。

この形式に最初は馴染めず戸惑いましたが、読み進むうちに
自分と同じようにこれまで普通に人生を送ってきた、
生身の人間としての彼の懊悩が胸に迫ってくるように感じました。

彼はただ手をこまねいているだけではなく、
世の理解を得ようと、ラジオのインタビューに応じたり、
ディスカッションに参加したりと、積極的に闘っています。
言葉を紡ぎだす力さえも日々失われていく中で、
懸命に書かれたこの著書の執筆もそのひとつでしょう。

いまだにアルツハイマー病の根本的な治療法は見つかっていません。
しかしこれから患者数はますます増加すると言われています。
アルツハイマー病を発症してから、病気を客観的に認識できる期間は短く、
この本は患者側からこの病気の初期を語った貴重な記録です。

そして人間にとって、記憶というのがいかに大切なものであるか、
考えさせられる本です。






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Last updated  Mar 18, 2008 04:52:24 PM
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