トランプ氏米国大統領戦勝利のニュース以来
一昨日のドナルド・トランプ氏米国大統領戦勝利のニュース以来、メディアには様々な意見が飛び交っています。また、彼が取るかもしれない政策に生活の不安や社会的安定が脅かされる危険を感じている人達が、アメリカには多くいると思います。どんな立場を取るにしても、これが大きな「変化」であることは共通した事実。経済指標もそれを反映し、株式市場は一旦記録的に下げた後また上昇。為替相場も大きく揺れました。米国社会の「格差」や「分断」が如実にあぶり出されたのが、今回の選挙だといわれます。民意が、変化を求めた。私の友人がこんなことを言っていました。「例えばハーバード大学に通うための年間の学費は(コースによるけど)6百万円~8百万円。6年通うと、36百万~48百万円。裕福な家庭の子息だけが機会を得て、そこを卒業して投資銀行に入れば年収2千万円からキャリアがスタートする。一方、普通の人にはそんな高額の学費は払えない。循環は続き、富める者は益々富み、その他の人は機会も得られない。」私の知り合いには借金をしてハーバードのMBAを取った人も何人かいますので、これはちょっと極端な言い方かもしれませんが、ひとつの例だと思います。またアメリカに住む別の友人は、こういう風にFacebookに投稿していました。「私の周りでもトランプ氏支持者は何人もいました。彼らに論理はあまりないんです。“自分の給料の取り分が少ない。オーナーが盗んでいるからだ。インテリ層はそういうことをする(実際は自分が休んでいるだけ)""トヨタ車は暴走する。真面目にやっているアメリカの車は売れない(そういう事実は無かった)""ヒラリー嫌い。とにかく嫌い。ヒラリーじゃ無ければだれでもいい。"そんなかんじ。そういう人にトランプ氏は響いた。そういうことだと思います。」彼は経営者として普段から米国特有の雇用問題に悩ませられていた立場でしたから、こういう印象を持つのだと思います。映画監督マイケル・ムーア氏は、トランプ大統領の誕生を早くから予見した(そして批判した)エッセイの中で、こう書いています。「悪い知らせを伝えるのは残念なことだが、昨年の夏、ドナルド・トランプが共和党の大統領候補になるだろうと君たちに言った時も、俺ははっきりと伝えていた。そして今や、君たちにとってさらにもっとおぞましい、気の滅入るような知らせがある。それは、ドナルド・トランプが、11月の大統領選で勝つということだ。この浅ましくて無知で危険な、パートタイムのお笑いタレント兼フルタイムのソシオパス(社会病質者)は、俺たちの次期大統領になるだろう。トランプ大統領。さあみんな、この言葉を言ってみよう。だってこれから4年間、この言葉を言うことになるんだよ。「トランプ大統領」。俺の人生で今回ほど、俺は正しくない、俺が間違っている、って誰かに証明してほしいと思ったことはないな。」そしてこうも。「大勢の人間が疲弊した政治体制に怒っているから大衆はトランプに同意するわけでもなく、トランプの偏狭な考えとかエゴを気に入っているとかでもなく、ただ、投票できるからっていうだけでトランプに投票する。計画をぶち壊しにして、パパやママをこまらせてやろうっていうくらいの気持ちで、これをやる。ナイアガラの滝の端に立っている時、一瞬、柵を越えたらどうなるんだろうって心の中で思うのと同じような感覚で、黒幕になったような気分で、どうなっちゃうのか見てみたい一心でトランプにポンと票を入れる奴はいっぱいいるだろう。90年代に、ミネソタ州で知事にプロレスラーが選ばれたことを思い出してほしい。ミネソタ州の人たちの頭が悪いからそうなったわけじゃない。彼らが、ジェシー・ベンチュラは優秀な指導者で、政治的見識を持った人物だと思っていたら、彼に投票しなかっただろう。彼らは、ただ単にやってみただけだ。ミネソタ州は、アメリカでも最も賢明な州の一つだ。一方でミネソタ州の人たちはブラックユーモアを好む。そしてベンチュラに投票したのは、病んだ政治体制に対する、彼らなりの辛辣な悪ふざけだった。これがトランプにも再び起こる。」・・・こちらの真偽はわかりません。実際、多くの票を得たのはヒラリーで、選挙人制度こそが逆転の結果をもたらしたひとつの要因かもしれません。ともかく移民排斥、女性蔑視、マイノリティー軽視、等など過激発言の多いトランプ氏は、その点において世間の耳目を集めるわけですが、今回それが支持を得て選挙に勝ったわけではなく、エスタブリッシュメント層とそうでない人たちの乖離した「民意」がトランプ大統領誕生を導いたのではないかという気がします。外交、経済政策、新しい大統領が世界にどのような影響を与えていくのか、日本は、私たちは、どのように動くべきか。これからのアメリカの行動に、目が離せないと思います。終わりに、LinkdinのCEOジェフ・ウェイナー氏が社員に向けて発信したメールには、社会のシステムがどんな変化をしようと、人間として大切なスタンスが書かれていました。抜粋します。I'm not certain what a Trump administration will mean for the country. If Brexit and this process have taught me anything, it's how unpredictable seemingly predictable outcomes have become. What I am certain about is my value system, both as an individual and member of our team. I will continue to treat others, regardless of who they voted for, in a way that's consistent with those values. I hope the same holds for everyone at our company -- that no matter what our political leanings, our race, religion, gender, creed, or country of origin, we treat each other with respect, with compassion, and above all else, we take care of one another. No election should ever change that.(トランプ陣営が国に対して何をするつもりか私には定かではありません。もし英国のEU離脱とそのプロセスが何かを私に教えてくれたとするなら、どんなに予想できそうにないことも起こり得るということ。私にとって確かなことは、個人としてそしてチームの一員としての価値観だけです。それは、誰が誰に投票したかなんて関係なく、一貫した価値のなかで他人と接すること。政治的立場、人種、宗教、性別、信条もしくは出身国に関わらず、互いに敬意と思いやりを持って接すること、とりわけ何をおいてもお互いを大事にすること、我々の会社の皆についてこうあってほしいと思います。選挙の結果でそれが変えられることなどありません。)中村晃一