テーマ:海外生活(7775)
カテゴリ:英国
皆さんはロバート・バーンズという詩人をご存知だろうか?
スコットランドを代表する国民的詩人であり、日本でも親しまれているスコットランド民謡「蛍の光」の作詞者でもある。 酒と女におぼれ、37才にして極貧のうちに夭折したこの詩人は、とにかくスコットランド人にとっては特別な存在らしい。 1月25日のロバート・バーンズの誕生日の前後には、こちらでは「バーンズ・サパー」「バーンズ・ナイト」などのイベントが開かれる。 スコットランドだけかと思いきや、世界中のあちこちで行われているらしく、日本でも行っている団体がある。 スコットランド名物料理のハギスを食べ、スコッチウイスキーで乾杯し、ロバート・バーンズの詩をジョークを交えながら朗読する。 そういう趣旨のイベントである。 先日、友人からそういう「バーンズ・ナイト」の一つにお誘いをいただいた。 こちらは「バーンズ・ボール」ということで、正装してでかけるフォーマルな晩餐会&舞踏会、ということらしかった。 おお!舞踏会ですと! 期待は一気に膨らむ。 外国人として、そういう正式な舞踏会を見る機会など、めったにあるものではない。 とにかく、これは何をおいても見に行かねば。 とりあえず、一張羅のフォーマルドレスも持参してきたし。 やはりヨーロッパではフォーマルは必需品だ。 え?社交ダンスはできるのかって? そんなん、できるわけないでしょ。 でも、心配ご無用。 舞踏会といっても、なにしろここはスコットランド。 こちらでダンスといえば「ワルツ」でも「タンゴ」でもない。 「ケーリー」と呼ばれるスコットランドの民族舞踊だけなのだ。 ステップはとってもカンタン。 要は小学校で習ったフォークダンスに毛が生えたぐらい、と思っていただいて間違いはない。 しかもフォーマルというのは・・・ こちらスコットランドでは、タータンチェックのキルトを意味する。 そう、スコットランドの正装であるキルトのスカートに身を包んだ男性と踊るのである。 あっ、そこのあなた! いま、「えぇ~、スカァトォォ?」とかいって馬鹿にしたでしょ! 私も初めてスコットランドは来て、スカートをはいて歩いているお兄さんとすれ違ったときはショックを受けた。 でも見慣れてくると、これがねえ。 なかなかに華やかで、かつセクシーなんである。 おそらく男性の民族衣装としては、最も華麗でかつエレガントなもののひとつではないか、と今では私は思っている。 タータンの柄は、自分のクラン(氏族)の紋章のようなものなので、彼らはこの衣装を着ることにとても誇りを持っている。 しかも! 彼らはスカートの下には何もはいてない。 ・・・いや、はいていないはずだ。少なくとも正式には。 実際にはパンツをはいている人が殆どだろうけれど、「可能性」は捨てきれないのである。 つまり、お相手の男性がノーパンだ、という。 ちょっとドッキリでしょ? その男性がスカートのすそを翻して踊っている姿を想像していただきたい。 もしも、それが若くて逞しい男性だったとしたら・・・? ね? とにかくそういうわけ(ってどういうわけだよっ!てツッコミが入りそうだが)で、スコティッシュの民族衣装に身を包んだ男性と踊るとしたら、やはり「ケーリー」と決まっているのである。 それ以外はない。 「ワルツ」だの「タンゴ」だのという展開にはどうしたってならないのである。 さて、男性があくまでも女性の引き立て役に徹する洗練された社交ダンスと違い、ケーリーでは、男女は全く対等だ。 しかも美しさとか、エレガンスだとか、全く関係なし。 とにかく体力のゆるす限り、めいっぱいエネルギーを使って踊る。 そう、フォークダンスを10倍激しくしたカンジ? それがケーリーだ。 始めは馬鹿にしていても、踊ってみると、これが意外に楽しい。 いや、実に楽しい。 子供に戻った気分。 みんなでワイワイ、とにかく手をつなぎ、腕を組み、走ったり回ったり、足を踏み鳴らしたり。 難しいことは何も言わない。 気取ったことも何もしない。 いっぱい汗を流し、ただ単純に楽しめる、そのシンプルさがいい。 ということで、ハギスとワインとウィスキー、そして気の良いスコットランドの人々にほだされて、真夜中すぎまで踊って踊って踊りまくった、めくるめく?スコッティッシュな夜であった。 その夜の最後のしめくくりは、みんなが輪になって手をつなぎ、互いの友情を確認しあう「蛍の光」(Auld Lang Syne)の合唱。 いろいろなイベントの終わりにこの歌が歌われるのは、日本と同じだが、意味するところが多少違うようだ。 日本では別れの歌のイメージが強いけれども、こちらはむしろ友情を確認しあう歌。 この歌を歌いながら、私はこの「バーンズ・ナイト」の意義がはじめて分かった気がした。 それが、ハギスとウィスキーとバーンズをキーワードに、世界に散らばったスコッツたちが絆を確認しあう場なのだ、ということを。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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