「あしたの、喜多善男」最終回とアンドリュー・ワイエスの世界
ドラマ「あしたの、喜多善男」の最終回を見ました。レビューには書いていなかったけど、時々見ていてその独特な世界観と、洗練された雰囲気が気に入っていました。 最終回もよかったなー。 自分の人生に愛想をつかして死を選ぶといいながら、世の中をあきらめるといいながら、とてもいい人で、周囲に優しい主人公と、そんな彼をもてあそび、利用しようとしていたのにいつしか彼に感化されて良い人になっていく周囲の人たち。英語に"Chemistry"という言葉があります。意味は1.「化学反応」、2.「人間同士の相性、親和力」。最初の相性。それは最悪だったり、実は相手が殺意を持っていたり。でも、人の心の化学反応が、人間関係や相性までも変えていく。そして、それは「親和力」という、素敵な力になっていく。このドラマは、まさに「ケミストリー」のお話だったかなとそんなことを思いました。ドラマの雰囲気は、ちょっと「ロス:タイム:ライフ」にも通じるところがありましたね。 それから、このドラマはモチーフの使い方も素敵でした。音楽は「Alone again(naturally)」ギルバート・オサリバン/アローン・アゲイン「投身自殺しよう」と思っている男のつぶやきをちょっとユーモラスにつづった歌詞と優しいメロディの曲。このドラマにぴったりでした。歌詞はこんなのです・・・(一部だけ)。In a little while from now, if I'm not feeling any less sourI promise myself to treat myself and visit a nearby towerAnd climbing to the top, to throw myself offIn an effort to make it clear to who-ever what it's like when you're shatteredLeft standing in the lurch, at the church with people saying"My God, that's tough, she stood him up, No point in us remainingWe may as well go home", like I did on my ownAlone again, naturally(「もう少ししたら、僕はどこかの塔によじ登って身を投げようと思ってるんだ・・・こんなに打ちのめされてしまったことを、みんなに知らせてやるんだ。だって式の当日に花嫁がいなくなってしまったんだ・・・」っていう感じの歌詞です(テキトーな訳です、お許しを)そして、もう一つは絵。主人公が好きだったという絵が出てきました。これが、私もずっと好き、というか「心が吸い寄せられる」ような感情を持って見てきたアメリカの画家アンドリュー・ワイエスの「オルソン・ハウス・シリーズ」の中の一番有名な一枚「クリスティーナの世界」でした。【アートポスター】クリスティーナの世界 (281x358mm) -ワイエス-この絵の中の女性、クリスティーナは、ポリオのために両手足に重い障害を持っていたにもかかわらず、弟と一緒に、寒さの厳しいニューイングランドの片田舎で暮らしていた人。ワイエスは、この姉弟のつつましやかでたくましい暮らしぶりを、彼らが亡くなるまでの数十年にわたり描き続けました。足が不自由なクリスティーナが、草原に座り、自分の目の前に広がる空を受け止めるように眺めているその後姿のたくましさ。善男さんは「クリスティーナは、振り返らない」って言ってましたが、ほんとに、何かとても強い意志を感じさせてくれる絵なのです。ドラマに出てきた風景は、確かにワイエスのこの絵に似ていました(セット、作ったのかな???すごいな!!!)。視聴率はイマイチだったようですが、大人のための童話のようないいお話でした。役者も達者な人、若手ながらも有望な人が揃っていてなかなかでしたよ。主役の小日向さんは、目とわずかに動かす表情だけでお芝居の出来るすごい役者さんだと、改めて感じました。それから「薔薇のない花屋」と「あしたの・・・」、どっちも松田兄弟、いい味出してがんばってますね。二人とも、それぞれのドラマで主人公のことを最初は利用しようとしつつだんだん弟分のように慕っていく役で、ちょっと共通するキーパーソンを演じてましたね・・・。ほかの役者さんたちもみーんなほとんど外れなしによかった。要潤や小西真奈美は「影のある悪役だってできるよ」っていう新境地を開拓したのでは? ほっとできる結末で、善男さんが死ななくてほんとによかった!そして、カレーライスが食べたくなっちゃった あしたの、喜多善男 オリジナル・サウンドトラックあしたの、喜多善男 DVD-BOX