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テーマ:本日の1冊(3697)
カテゴリ:本
これは先月から始まったNHK人間講座のテキストだ。
全8回、氏の美意識からの視点がバランスよくまとまった内容になっている。 もちろん、氏の著作を読めば事足りるわけだが、さらりと俯瞰的に 氏の生き方、考え方、ものの見方をうかがい知るには、役立つ一冊なのだ。 まさに「テキスト」ね。 興味を引かれたのは、第6回「『黒蜥蜴』と『毛皮のマリー』」。 言わずと知れた、三島由紀夫と寺山修司の名舞台である。 その舞台裏的なお話を綴っているのがこの回なのだが、これが深い。 セリフをいかに解釈していくかが役作りの重要なポイントであることは、 想像に難くないが、氏の解釈が、なんともすさまじいのだ。 その解釈をして、「俺はこんないい台本を書いたんだな」と寺山本人を 大感動させてしまったという。 実際に「毛皮のマリー」のセリフの一部を採って、その解釈が6ページに わたって書かれてある。 幅広く、的確な喩えをたくみに用いていくその解釈は、言葉の意味を十全に 際立たせていく。 観客にその膨大な情報は伝わらないだろうけど、情報の持つエッセンスは 必ず伝わっていくんだろうなと思う。 あと、すごく気持ちに残っているのは、「広く深く多重的に生きる」という言葉。 まずは日本人として、「自分が生まれたときから持っているものを深いところで 重構造にする」ことが大事だという。 自分の国のいろいろな歴史、住んでいる場所のこと、風習などを研究して 身につけなさいと。 ごく簡単に言えば、文化を持て、ということになるのだろうか。 今、私がやっている編集稽古は、その文化とものすごく繋がっている。 その繋がり方や詳細は、うまく説明できない。 言葉そのものの構造的な側面もあるし、言葉一つ一つが持つ意味や連なり、 変遷、関連などの側面もある。 そういった事を、今ここで纏めるなんて芸当は無理だ。 それでも、何か、あいまいなのだが、「文化を持つ」手がかりになりそうな 気がしている。 ◆美輪ワールドを活字で満喫するなら ああ正負の法則 ( 著者: 美輪明宏 | 出版社: パルコ出版局 ) ◆美輪ワールドを音で満喫するなら 日本の心を歌う 美輪明宏/全曲集 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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