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テーマ:本日の1冊(3696)
カテゴリ:本
そういえば、この日記でコミックのことを書いたことって、あんまりなかったなあ。
「不思議な少年」は、「天才柳沢教授の生活」で有名な、山下和美の作品だ。 雑誌「ダ・ヴィンチ」2005年2月号の「今月のプラチナ本」コーナーでは、 小説でも哲学でも宗教でも容易に到達できない域に著者は達している、 なんて紹介されていた。 ちなみに「今月のプラチナ本」は、「絶対ハズさない」がウリ文句である。 かなりの期待と興味をもって、某大型中古書店にて1・2巻を購入してみた。 ううーむ。確かに、読みごたえある。 永遠の命を持つ「少年」が、時間も空間も越えて人間の生を見つめる物語。 一話完結で、各話とも関連なく独立している。ページ数もばらばら。 そして、どの話も非常に完成度が高い。 何か話のウラに自分が気づいていない重大なテーマとかがあるんじゃないかと、 つい読み込んでしまう。そんな作品だ。 「これが欲望のままに生きた人間が奏でる調べなの?」というセリフが出てくる 第一話からして、しびれる(ラスト10数ページの展開はちょっと陳腐だが)。 永遠の命を持ち、自在に時空を飛び越え、善悪も彼岸な「少年」なのだが、 神のような完全無欠な存在ではないところも、いい。 第五話「ソクラテス」では、「君の命がもしも永遠なら、君は永遠に死を知ることはできない」 というセリフに、一瞬たじろいでしまったりもする。 こういう内容だと、どうしても手塚治の「火の鳥」を思い出す。 もしくは同じく「ユニコ」とか。 でも、「少年」は、火の鳥のような超越者としてでもなく、ユニコのような弱者ゆえの指弾者という存在でもない。 タイトル通り、「不思議な少年」なのだ。 この「少年」が何者であるか、どこから来たのかなどは、全くフォーカスの必要性を感じない。 描かれている人間達のドラマにのみ、スポットが当たる。 人間という、「正しさ」のない不思議な存在の姿をじっくり味わえる作品だ。 【楽天ブックス】不思議な少年(3) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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