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テーマ:本日の1冊(3696)
カテゴリ:本
中沢新一氏の「アースダイバー」という本を読んでいる。
まだ読了していない。読みやすい本なのだが、さらさらと進まないのだ。 なぜかというと、この本の素材である「東京」という街を、余り知らないこ とが一つ。そしてちょっと読んでは、巻末についている「アースダイバーマ ップ」を参照して、感慨にふけってしまうということがもう一つ。 原型もそのまた原型についても知識がないので、色んな方面に想像が及び、 そうこうしていると、中々読書というものははかどらない。はかどらないが、 これがまた楽しい。 この本は、東京という土地について考察しているものなのだが、その土台に しているのが「アースダイバーマップ」、つまり沖積層と洪積層に塗り分け られた縄文時代の東京地図である。この古代の地図に現在の東京の姿を重ね 合わせて、フィールドワークしていくと、これまで見えてこなかった東京と いう街の風貌が、新たな振舞をもって立ち現れてくる。そこを丹念に、地域 ごとに解説・考察している本なのだ。 どこの土地でも、大昔はもっと海は内陸まで来てました、という話はよく耳 にする。しかし、これを実際に地図として見てみると、こんなに入り組んだ 地形(中沢氏はあえて「フィヨルド状」と表現している)だったのかと驚き を禁じえない。そこには海が干上がった土地である沖積層の触手が、枝分か れを繰り返した形状で、蠢いている。 言い換えれば、海が満々と水をたたえていた時代、洪積層だけが地面であっ た頃、ぐぐっと細長く突き出した「岬」だらけだったのである。 本書にも説明が随所に出てくるが、この「岬」=さきっぽにこそ、古代日本 人が霊性とか聖性を感受した土地なのだ。 ゆえに。神社や寺、古代遺跡などは、この「岬」たる洪積層と沖積層の境界 上に存在している。古代から連綿と続くスピリチュアル・スポットが点々と そのサカイを明示しているのだ。 当然といえば当然なのだろうが、このマーキングを一覧で見ると、いにしえの 人々の敬虔な執着のようなものに、感嘆してしまう。 ここから中沢氏の宗教学者としての本領発揮で、古代の息吹がいかに現在に まで深く大きく影響を与えているかを縷々と述べている。 中には「そーゆーもんかねー」などと、詳しい根拠を知りたくなってくる場 面もあるが、全体的には不可思議ともいえる都市物語に魅了される。 遠く1万年以上も前の祖先から受け継いだこの土地から、常に響いているであ ろう命や死や性といったうねりが、きっと自分にも流れていて、知らず知ら ずに感知しているに違いない。今現在、この世の表面に浮き出ているミーム と言われるものの正体の一端であることは間違いないだろう。 そんな大きな流れの先端=「岬」に今自分がいることを直観させる一冊である。 なぜヒトは、「岬」にこれほど霊性を見出しているのかを、もう少し考察して もらえれば、もっと楽しい一冊である。 アースダイバー お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005年11月25日 03時43分32秒
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