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テーマ:本日の1冊(3698)
カテゴリ:本
気がつけば、最早、豆まきの季節である。
1月は、いろいろ忙しかったこともあるが、近年稀に見るハードな風邪を 引いてしまったことが何より大きかった。 今月は元気に楽しく過ごす予定なり(^_^;) そんな中、先日、松岡正剛の『17歳のための世界と日本の見方』を読了した。 読みながら、去年問題になった高校の「履修不足事件」が頭をよぎっていた。 今の高校の学習指導要領では、世界史は必修、その上で日本史か地理のどちらかを選択履修 することになっている。「世界史+日本史」か「世界史+地理」のどちらかの組み合わせで 勉強するわけだ。 一方、大学受験では、地理と歴史の科目を2つ同時に受験することができない。 例えば「世界史」と「日本史」の2科目を勉強しても、受験できるのはどちらか1科目だけである。 学習範囲・量とも多い世界史でなく、比較的範囲の絞られた日本史や地理を選ぶ高校生が 多いのは当然だろう。学校側もそれを黙認して、必修のはずだった「世界史」の授業を パスしてしまったことが履修不足問題を生んだ。 史学科出身の私にとっては、なんとも悲しいニュースだった。 一方で、高校で習う歴史が、学問としてどの程度意義を果たしているかも疑問ではある。 大学に入ってからは、これまで勉強してきた歴史って一体何だったの?と げんなりすることもしばしばだった。 それでも、歴史の授業は必要だと言いたい。 年表の羅列でも、出来事の列挙でも、ともかくまずは今現在へと連なる流れの 大枠は知っておいて損はない。 「げんなり」とは、新発見した時の驚きと喜びとのうらはらでもある。 『17歳のための世界と日本の見方』を読むと、歴史ってそういうことか、という 妙な納得感と爽快感がやってくる。 現在のこの状況を作ってきたものが何か、その底流や裏側や基調が浮かんでくるのだ。 人間の意識とか文化とかが、何と関係を持ってきたか、世界と日本の相互作用は どんなものだったのか、そういうことが書かれている。 以下、目次を少々お披露目するので、その一端を感じて頂きたい。 第1講 人間と文化の大事な関係 「関係」は変化しやすい、「編集」とは何か 、ノックの文化・匂いの文化、 ヒアとザアの世界、母型の違いと文化の違い ほか 第2講 物語のしくみ・宗教のしくみ 物語と言語、語り部の記憶、スターウォーズ大成功の秘密、ユダヤ教の光と闇、 一信教と多信教、 ほか 第3講 キリスト教の神の謎 生と死の問題、イエス・キリストとは何か、死海文書は誰が作ったか、 悪もキリスト教の産物、魔女というコントロール ほか 第4講 日本について考えてみよう 日本らしさとは何か―「コード」と「モード」、日本の神話に戻ってみる 、 カミとホトケの戦い、女人結界と悪人正機説、禅の感覚と引き算の魅力、ほか 第5講 ヨーロッパと日本をつなげる 「異教の知」―ルネサンスの幕開け、神秘のヘルメス思想、ゆがみとねじれの宇宙、 ルネサンスの利休、文化とはたらこスパゲティ ほか いかがだろうか。 こういう素材や視点をもって、歴史を教えている高校の先生はどのぐらいいるのだろう。 いたとしても、指導要領の枠内で、大学受験のせめぎ合いの狭間で、どんなことを 語っていけるのだろう。 いや、先生に期待してはいけない。 自分で読めばそれで済む。その先、何を知りたくなるかを楽しみにすればいい。 17歳の人も、ずっと昔に17歳だった人も、これから17歳になる人も、 一読をお勧めする。 同じ著者の『日本という方法』『情報の歴史を読む』を合わせて読めば、なおよろし。 17歳のための世界と日本の見方 日本という方法 情報の歴史を読む お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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