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テーマ:本日の1冊(3696)
カテゴリ:本
-われわれ地球の住人が「地球」と呼んでいるところのものを、
月の上にいる人々の立場から「ヴォルヴァ」と呼ぶことにした。 ・・・彼らには、天空にあるこの球体は、それ自身の不動な軸を中心として たえず回転しているように見える。- ヨハネス・ケプラー 月知系の古参といえば、ヨハネス・ケプラーだろうか。 彼の『ケプラーの夢』を挙げておきたい。 ケプラーといえば、いわゆる「ケプラーの3つの法則」を発見した16世紀の人だ。 ケプラーの法則とは、 第1法則:惑星は太陽をひとつの焦点とする楕円軌道を描いて公転している。 第2法則:惑星と太陽を結ぶ直線は一定時間に一定の面積を描く。 第3法則:惑星と太陽の平均距離の3乗は惑星の公転周期2乗に比例する (太陽から遠い惑星ほど一周するのに時間がかかる)。 というもの。 かのニュートンは、これがなかったら万有引力の発見には至らなかったと 公言してたとか。 そんな大科学者ケプラーが記した『ケプラーの夢』は、小説である。 自身の月についての考察を、フィクションとして提示したのだ。 この時代、あんまりエライこと言うと、大変なことになってしまうからなのだろうか。 実際、ケプラーの母は魔女の嫌疑を掛けられ、裁判を受けたという。 物語は、ある島で科学者ティコ・ブラーエから天文知識を学んだ主人公が、 その母と母が呼び出した精霊の力を借りて、月世界旅行へ向かうというもの。 空想科学小説の先駆けってところだろう。 本文は非常に短いが、解説がその4倍ほどの量になっている。さすが科学者。 小説としてのクオリティは置いといて(笑)、月から見た地球という視点が 私にとってはとても魅力である。 月(レヴァニア)から地球(ヴォルヴァ)がどんな風に見えるかを淡々と 書き綴っている様は、標本ケースを喜色満面で眺めている風情を感じる。 ちなみにレヴァニアはヘブライ語で月を意味するレバナ(レヴァナ)から、 ヴォルヴァはラテン語のvolvereからで「回転する」の意味とのこと。 くるくる回り続ける月から見た地球を夢想しながら、月と地球の二つの動きを 同時に見るという、その行ったり来たりの交錯する感覚がなんとも愛おしいのだ。 だから、なんで月の住人がヘブライ語やラテン語やねん!というつっこみは 勘弁してあげてね。 ●ヨハネス・ケプラー『ケプラーの夢』(講談社学術文庫) 1985 もう一つ、日本語で読めるケプラーの著作。 ●ヨハネス・ケプラー 『宇宙の神秘』 工作舎 1982 関連本はこちら。 ●吉田武 『ケプラー・天空の旋律(メロディ)―60小節の力学素描』 共立出版 1999 ケプラー・天空の旋律(メロディ) ●ジョシュア ギルダー 『ケプラー疑惑―ティコ・ブラーエの死の謎と 盗まれた観測記録 』 地人書館 2006 ケプラー疑惑 ●アーサー・ケストラー 『ヨハネス・ケプラー>―近代宇宙観の夜明け』 (ちくま学芸文庫) 2008 ヨハネス・ケプラー お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年09月26日 01時38分10秒
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