カテゴリ:小説BACK UP
何も解決しないまま、夏が過ぎ去ろうとしていた。以前、行方不明者が続出し、人々は恐
れ、家から出なくなっていた。 そして、追い打ちをかけるようにして、街に怪物が出没するようになる。 人のように二足歩行をしてはいるが、人とは遠くかけ離れ口には鋭い牙がはえ、手にも 尖った爪が長々と伸びている。そんな異形のもの達が次々と人を襲いだしたのである。 リィティールやファンら近衛兵も人員を割き、街の警護にあたっていた。 静まり返った城下町。 「気持ち悪いな…」 ファンと二人で見回っているリィティールが呟いた。 「化け物も徘徊してるんだろ…」 自然と剣のつかを持つ手に力がこもる。 ガタ… 「…リィティール…何か聞こえた…?」 路地裏から微かな物音をファンの耳が捕らえた。リィティールには何も聞き取れなかった のだが…。 「少し見てくる」 ファンが剣を抜き放ち路地裏へ歩を進めた。彼が路地裏へ消えた瞬間、けたたましい声で いななく怪物がリィティールに襲い掛かった。 「うわ!?」 間一髪のところで一撃をかわし、後ろに飛びす去った。 「…ファン!」 剣を抜きながら路地裏へ消えた相棒へ声をかけたが返事はなかった。 化け物の攻撃を巧みにかわし、路地裏に消えたファンの無事を思案していた。 一つのことに集中していないリィティールは所々に隙ができていた。 化け物はそれを見逃さなかった。渾身の力をこめて攻撃を繰り出す。寸でのところでよけ たもののリィティールは脇腹に傷を負ってしまった。 「ぐぅ…」 思わず膝をつくが態勢を整え、化け物に剣を振りかざし、そのまま袈裟切りに振り下ろし た。 化け物は断末魔の叫びをあげその場に倒れ、息絶えた。 「…くっ…」 傷の痛みに耐え、路地裏へ近寄る。 静まり返った路地裏に人の気配はない。 「ファン…?」 力なく声をかけてみるが何も返事はなくただ風が唸る音しか聞こえてこない。 「ファン!?」 叫んでみるが空しさばかりが辺りを包む。 傷の痛みと出血でリィティールの意識はかすれてくる。 「…ファン…」 意識が遠退くのに我慢ができずにその場に倒れてしまった。 遠くで父が名を呼ぶのを聞いた気がした。 どれくらい眠っていたのかリィティールは脇腹の傷の痛みで目が覚めた。 「…」 そこは近衛隊の医務室だった。 ファンの姿を探して部屋を見渡してみるが誰もいない。 しばらく外を眺めていると、部屋に上官とラルイースが入ってきた。 「父さん…ファン、知らない?」 「…リィティール…彼と一緒だったよな?」 聞いたのに、逆に聞き返されてしまったリィティールはしばらく黙り込んでしまった。 「リィティール、あそこで何があった?」 横にいた上官が口を開いた。 「ファンと二人で街を見回っていました…」 事の出来事を詳しく彼は上官に報告した。 「…では路地裏へ行った後彼の…ファンの姿は確認してないんだね?」 「しようと思ったんですが意識を失ってしまって…」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.01.05 21:26:14
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