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無限に広がる夢の彼方へ…

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あげは君

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2006.12.30
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カテゴリ:小説BACK UP
「彼の行方は目下捜索中だ。十分休養をとって鋭気を養ってくれよ、リィティール。いず
れまた戦線にたってもらわなきゃならん」
そういうと上官は部屋を出ていった。
ラルイールは何も言わずにただそばに座っているだけだった。
窓の外の風景はいたって平和そのものだった。抜けるような空の青、射し込む太陽の光、
飛びかう鳥達は楽しげに歌っている。
「…僕にもっと力が…」
「おまえのせいじゃない」
父がリィティールの言葉を遮った。
「…」
静かに時は過ぎていった。何も変わらず依然、魔物がうろつき、若者が消える街のなかは物音一つ聞こえることはなかった。
ファンの行方もわからないままリィティールは街の警護と並行してファンの捜索と事件の捜査をしていた。
それというもの近衛隊は街と王宮の警護を優先事項とし、行方不明者の捜索は打ち切って
しまっていたのである。
冬の半ばに差し掛かり寒さも厳しくなってきた時期に軽めの鎧を着けていたとしても寒さ
は身に染みるだろうが、リィティールはもろともせず教会付近から街を見回っている。
「…あ」
リィティールが教会の裏手に回ったその時、裏手の出入口で辺りを見渡す不審な人物を見かけた。リィティールはとっさに身を屈め、茂みの中から覗き込む。
その不審な人物は黒いフードを目深にかぶり、手には黒っぽい杖が握られていた。
「…エサノア…様?」
リィティールには見覚えがあった。入隊当時に出会った不思議な初老の男、エサノアだっ
た。
エサノアが教会に出入りしていることは他の人も知っている。なのになぜか人目を気にしているのは不自然だし、玄関から入ればいいことだった。
リィティールはエサノアが出てくるのを待とうと茂みに座り込んだ。

数時間が経過しても出てくる気配はない。日は傾きかけてきた。夜になっては出てくるの
を確認できない。
リィティールは焦りはじめていた。焦る必要はないのだが嫌な予感がして冷たい汗が流れ
はじめていた。
『なんだ…この気持ち…?』
いらいらしだしたその時、教会の裏手の扉がゆっくりと開いた。
エサノアが出てきた。入った時と同じような格好で出てきた。
リィティールは慌ててエサノアの前に立ちふさがる。
少し驚いた顔をしたエサノアはすぐに笑顔にかえた。
「…リィティールじゃないですか。お久しぶりですね…」
「お久しぶりです、エサノア様。ここで何をなさっていたのですか?」
左手に剣の鞘を持ち、リィティールはまわりを警戒する。
「どうかしたのですか?剣など握り締めて…私が何か?」
エサノアは少し焦って一歩後ずった。
「質問しているのはこっちです。まずは答えてください」
剣を握る力を弱めることなくリィティールはエサノアを睨み据えた。どうして自分が彼に
たいしてここまで敵意をむき出しにしているのか、わからないままエサノアの返答を待っ
た。
「…お祈りに来ただけですよ。マリー様に祈りを捧げに来ただけです」
「いつ魔物が襲ってくるかもわからないこんな時に?裏口から?不自然だ」
リィティールの動機が激しくなる。彼に見つめられているだけなのに蛇ににらまれた蛙の
ように身動きがとれなくなりそうだった。
「…私はいつでも裏口から入ってますよ。こんななりで表から入るのを司祭様に嫌煙
されましてね。それにこんな時期だからこそ祈りを捧げるんですよ、リィティール。我ら
を助け給え…とね」
『司祭に嫌煙される?この教会はしばらく司祭はおろかシスターさえいないはずじゃ
あ…』
引っ掛かるものを感じながらもリィティールは彼からの無言の圧力に耐えきれなくなっ
た。剣を握る左手はいつのまにか震えている。
「……危険なんであまり外出なさらぬよう…失礼いたしました」
リィティールはその場から早く脱したくてエサノアへ礼もそこそこに切り上げ、王宮へ歩
を進めた。
「何か気付いたか…まぁいい。あんな若造に何ができるという」
一人、取り残されたエサノアは不気味に笑った。
王宮へ帰ったリィティールは待機室で座り込んで頭を抱えていた。帰りついてまず教会の
現状を調べたのだ。







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Last updated  2007.01.05 21:32:22
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Comments

あげは@ Re:最終報告 マッキー あいつみたいなやつは一度死なな…
卍makki@ Re:最終報告(02/16) あぁ、とんでもない元彼氏だったな;; …
あげは@ Re:最終報告 さんびゃくさん あーそーいやカキコしてな…
あげは@ Re:最終報告 ソワソワさん これ以上書くと自分が惨めに感じ…
あげは@ Re:最終報告 豊氏 そちらのブログにもコメントしました…

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