カテゴリ:小説BACK UP
―在職中の神父おやびシスター・なし。現在は教会本部よりサルファンへ管理権が譲渡さ
れている― 一枚の紙切れにそう綴られている。 教会は今、サルファンの管理下のもと、解放されていた。よって裏口から入る必要もな い。 ますますエサノアへの不信感が高まった。が、リィティールにはもう彼に会いたくなかっ た。 そしていろいろ調べていくうちにエサノアと国と奇妙なつながりをリィティールは発見し た。一年ほど前から研究費として多額の金が国からエサノアに流れていたのである。 ますます教会に出入りしてる彼への疑いを深めた。 エサノアの周辺を調べている間に冬は終わり、春がやってきた。リィティールは15歳に なっていた。 街にはもう若者の姿は消えて老人や女子供ばかりになった。 それでもまだリィティールは街を見回っている。特に教会付近を重点的に警備していた。 「…」 教会前まで来た。高くそびえ立つ荘厳な建物。今は静かにたたずんだ廃屋のような雰囲気 だった。 リィティールは意を決して教会の扉を開いた。二重扉なのか道に出る扉は軽快に開いた。一歩入ると目の前に再び大きな扉と両サイドに受け付けだろう机が置いてある。 奥の扉は頑丈にできているのか入り口の扉よりも重苦しい音が教会内部に響き渡る。 重い扉を開けた先にはマリー・アントワープ像がある礼拝堂にでた。正面に見えるはアン トワープ像で優しい微笑みで見下ろしている。アントワープ像のすぐ上に、天使が歌い遊 ぶ様を描いたステンドグラスが太陽の光で輝いていた。 教会内部は不気味なほど静まり返っていた。リィティールは慎重に、辺りを見渡し奥へ進 む。嫌な予感がリィティールを包む。 礼拝堂の奥にある扉を開き、中へ滑り込む。司祭たちの寝室へつづく廊下へ出た。 廊下に出たとたんにむっとする異臭がした。リィティールには何の臭いかはわからなかっ たがかまわず奥へ進む。寝室を一つ一つ開けて中を確認して回った。何もなく誰一人とし ていない。 廊下を突き当たると、再び扉があった。リィティールは躊躇いもなく開いた。 ふぎゃっ 何かがリィティールにむかって飛んでくる。とっさに後ろに避けるが、その何かは再び爪 を立て飛んできた。 「っ」 リィティールは間一髪でよけると剣を抜き放ち、襲ってきたものを一太刀で切り落とし た。 襲ってきたものは黒い猫のような生きものだった。 それは、もう見た目が猫なだけで、それ以上は形容しがたい容姿をしていた。背中には黒 い羽が生え、牙と爪は異様に伸び、足はトカゲのようだし、口は裂けていた。 「…なんだ…これは?」死んでしまった猫のような生きものを見つめる。 リィティールにはわからなかったが立ち止まってもいられないので前を向き直した。 目の前には上と下に続く階段がある。 リィティールは迷うことなく下へ向かった。階段を降りると鉄の扉があり、南京錠で閉ざ されていた。 躊躇いもなく鍵を壊してしまう。 剣を握り直しゆっくりと扉を開けた。先程より濃い異臭がリィティールを襲う。顔をしか めながらもリィティールは部屋の中へ入った。部屋のなかは凄惨な状態だった。両端に設 置された大きなビーカーみたいなものに入れられた人間や獣。目の前の棚におびただしい 数のいろんな薬や器材。部屋の中央に実験台なのか大きな机が置かれていた。 異臭はビーカーに入れられた人間や獣が腐りかけている腐臭だった。 「…ふ…ぐ」 堪りかねてリィティールは吐いてしまった。 腹にあるものをすべて吐き出してしまったリィティールなのだが依然、吐き気は治まらな い。呼吸を整えようといったん外へ出た。 「…あれは消えた街の…」 ぽつりと呟き、ふと辺りを見渡してみた。何かが先程と違う。上の階で人の気配がする。 エサノアが戻ってきたのだろうか。 「やばいな…」 ガタ… 部屋の中から何か音がした。リィティールは部屋の中を見渡すが何も見いだせない。 ガタ… 再び音がする。部屋の中からではない。下から音がするのに気が付いた。 辺りを見渡し、どこか入り口を探す。机の奥に椅子のようなものが見えた。 その椅子が音がするたびに微かに動いている。 リィティールはその椅子を移動させ、下への扉を開いた。地下室は暗やみに包まれ何も見 えなかった。 傍にあったランタンに火を入れると辺りが少し見えてくる。 部屋には所狭しと檻が並んでいた。各檻に何か入れられている。 中をよくみるとまだ生きた人間もいた。というのも街を襲ってきた怪物もいたのだ。 「これは…街から消えた…?」 ほとんどの人間は生きてはいたが瀕死の状態か、怪物化するとちゅうだったりした。 「…むごい…これが…やつのやってたことなのか…」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.01.05 21:36:06
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