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無限に広がる夢の彼方へ…

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あげは君

あげは君

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2007.01.09
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カテゴリ:小説BACK UP
ドンは動かなくなった自分の息子らしい物体の顔を覗き込んだ。
その顔は異形化しているものの確かに自分の息子のファンだった。
「!?」
まわりにいる彼の部下達は波を打ったように静まり返る。
「…隊長…」
「何故だ…何故、ここで息子が死んでる…何故……」
息子の側でわなわなとこぶしを震わせ、悲しみのあまり涙を流していた。
「彼を追いましょう。彼が一番、よく知っているはずです」
側にいた隊長補佐の男がドンの肩を叩く。
「…ルーベンス、隊を二手にわけ、お前が指揮をとれ。この教会内部を捜索、およびファ
ンの遺体を安全な場所へ移送。私はリティールを追う」
ファンの安らかな顔さえ気付かなかったドンは立ち上がった。
「しかし、どこへ行った?」
教会から出たものの、リティールの行方に見当がつかず立往生する。
「隊長!」
教会の中から一人の近衛兵が走ってきた。そして、一枚の紙切れをドンに渡した。
「…なん…だと…」
その紙切れは国王がエサノアに依頼した狂気なる仕事の契約書である。

―人を人と思わずただ殺戮のみを目的とした殺人兵器、その力は人の幾数倍、ベースは人
であり、近衛兵よりも強力な`駒´の作成を依頼する。それにともなう、人員および経費
は国が面倒をみる―
全文を読み終えたドンは目眩を感じた。
「…リティールは…陛下のところだ…これを読んでいたなら、きっとそこしかない」
他のものは城のまわりを固めろと言い残すと、ドンは一人で謁見の間へ入った。
やはり、リティールは王の側にいて、あろう事か血に濡れた剣を王に向けていた。
怒りで我を忘れているのかドンが入ってきたのも気付いていない。

「その剣でどうするというのだ?」
玉座に座ったまま、現国王であるサマエルがリティールを睨む。
「王たるものが…民を守らず…誰を守るのですか!?」
「…」
サマエルはリティールを見据えたまま黙っている。
「…陛下…嘘だと…言ってください…」
「悪いが…」
その一言でリティールの怒りが爆発した。
「!?」
剣を構え直し、サマエルに向かって攻撃を繰り出した。
「やめるんだ、リティール!!」
ドンがすかさずリティールとサマエルの間に入り込みリティールの剣を防いだ。

「!?」
「何をしている?」
リティールの剣を受けとめたまま、睨み付ける。
「…どいてください、おじさん」
「たとえどんな者でも忠誠を誓った相手に剣を向けることは騎士道に背く」
リティールの剣を後ろへ弾き飛ばす。そのまま剣の切っ先をリティールの首筋に突き付け
た。
「くっ…」
「何があったか詳しく話せ」
「…」
リティールは黙ったまま、俯き涙をこぼしていた。
「ファン…」
「息子を殺したのは…リティール、君なのか?」
「殺したくなかった!殺すなんて…」

リティールは剣を握り締め、涙を拭い、ドンを睨み付けた。
「僕は…陛下が許せないんだ!忠誠なんてもうどうでもいい!陛下は神か!?違う!あん
な…人を人と思わぬ事をして平然としているのがどうしても許せない!」
リティールは首筋に突き付けられた剣を自らの剣で弾き飛ばし、ドンに体当たりをして転
がした。そのまま身動きの取れないように体重をかけて、封じた。
「ファンは僕が殺した…でも大元を辿れば陛下に行き着く。陛下があなたの息子を殺した
も同然なんだ…」
ため息をつき、澄んだ目でドンを見た。


「止めないでください、おじさん」
一度、ゆっくりとまばたきをすると、リティールは剣を持ち立ち上がった。
そして、そのまま走り出すが、ドンに腕を掴まれ阻止される。
「陛下がどんな人物であろうと守のが近衛の仕事だ」
その言葉を聞いたリティールは酷く悲しそうな顔をした。
「息子よりも…ファンよりも陛下を選ぶのですか…」
力強く剣を握り締めていた腕をだらりと落とし、大粒の涙を流した。
「…僕は…いつかファンの無念を晴らします…」
そういうとドンの腕を振りほどき、謁見の間から走り去った。
謁見の間に静寂が訪れた。サルファンでの一騒動はエサノアの死とリティールの裏切りと
いう形で終わった。
王を守り通したドンは栄光が与えられ、リティールは指名手配され、その父親であるラル
イールはその職を剥奪された。
ファンの死は友に無残に殺されたとして人々の悲しみを煽った。
当のリティールは街を去り、サルファンで目撃されることはなかった







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Last updated  2007.01.28 22:28:40
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あげは@ Re:最終報告 マッキー あいつみたいなやつは一度死なな…
卍makki@ Re:最終報告(02/16) あぁ、とんでもない元彼氏だったな;; …
あげは@ Re:最終報告 さんびゃくさん あーそーいやカキコしてな…
あげは@ Re:最終報告 ソワソワさん これ以上書くと自分が惨めに感じ…
あげは@ Re:最終報告 豊氏 そちらのブログにもコメントしました…

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