ＥＹＡＳＵＫＯの草取り日記

[絵画.・アート] カテゴリの記事

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• ギメ東洋美術館展

  　今日は主人の仕事が一段落したので、休養を兼ねて、かねてより行きたかった原宿の太田記念美術館の「ギメ東洋美術館展」に行くこととし、早朝の東京行きのバスに乗った。　太田記念美術館は、ラフォーレ原宿のすぐ前のこじんまりした美術館であった。今回の企画展の展示は、盛沢山の一級品の浮世絵を展示するため、かなりスペースを詰めての展示で、また、目玉である北斎の「龍・虎図」は、貴重品であるため、かなり照明をおとしてあり、また評判を伝え聞いて、かなりの観客が押し寄せたため、せまいわ暗いわで、視力の衰えを実感する始末であった。　それでも、さすがに北斎の龍・虎図は、いきいきとした表情のすばらしい作品で、90翁の作とも思えない、若々しい精神の感じられるものだった。　会場で上映されたヴィデオによると、美術館の基となった浮世絵コレクターのエミール・ギメは、明治9年に日本へ渡航した際、河鍋暁斎の元を訪れたのだと言う。同行したフランス人の画家が暁斎の顔をスケッチし出すと、暁斎もやおら筆を取りその画家の似顔絵を描き始め、双方のスケッチの競演となり、ギメは暁斎の画力にいたく感動し、作品の買い上げにいたり、その約定に基づき、後日「釈迦如来像」という作品が送られてきたという。　このほか展示品には、写楽、春信、歌麿の優品のほか北尾重政など珍しい浮世絵師の作品も含まれており、ギメの所蔵品の質の高さを窺わせるものだった。

  2007.01.18

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• 月の砂漠

  　「月の砂漠をはるばると」で始まる童謡のお好きな方がいらっしゃいました。この方は、また絵画コレクターでもあって、バブル経済最盛期に、ゴッホとルノワールの代表作をサザビーズのオークションで「ほんの小遣い」の150億円という巨額で落札し、金満日本の象徴として、報道されました。　しかし、時は巡り、この方が代表を勤めていた会社が人手にわたり、この話題の絵画も姿消てしまったそうです。　このゴッホやルノワールが象徴するような出来事が、日本の各地で起こり、その中でさまざまな絵画が、海外へ流出したり、金融機関の担保として倉庫で眠りに着いたりしているそうです。（糸井　恵　著「消えた名画を探して」（時事通信社刊））　まさにバブルの最盛期とその崩壊の象徴を絵画が担ったのでした。　この本で、糸井さんが、このような動きの対極として挙げられているのが、倉敷の大原美術館です。大原美術館の創生にかかわり、自分の画業よりも、100年先の日本のことを考えて身命を賭して絵画の収集に当たった児島虎次郎と、その後援者である大原孫三郎氏のことを思うと、「篤志」と言う言葉が生きていた時代が見えてくるような気がします。　

  2007.01.15

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• 白のロダン・黒のロダン

  　来る２月４日から、静岡県立美術館で、ロダン展が開催される。 http://www.spmoa.shizuoka.shizuoka.jp/exhibition/rodin.html同美術館は、設立時に購入した「カレーの市民」や「地獄の門」といったロダン作品に、個人コレクターから寄贈を受けた作品を加えたロダンのかなりのコレクションを持っており、それらの収蔵のため別館として「ロダン館」を建設した。　ロダン館は、すり鉢の底の部分に「地獄の門」が置かれ、上方に伸び、それを囲む半円形の階段式の展示スペースのそこここに「カレーの市民」などのロダンのブロンズが置かれている、明るい光に満ちた展示スペースである。　今回開催される展覧会では、ブロンズ作品に加えて、石膏で形造られたロダン作品をフランスのロダン美術館から借り受けて、白のロダン（石膏）、黒のロダン（ブロンズ）を展示するという画期的な催しとなるという。　２月が楽しみである。

  2007.01.13

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• 北斎の龍虎図

  　一昨日の読売新聞に、今回太田記念美術館で、初めて一幅対として展示される、北斎作の「龍・虎図」発見のいきさつが載っていて、興味深く読んだ。　「龍図」は、比較的新しくギメ東洋美術館に個人コレクターから寄贈されたもので、まだ調査段階の状態であったという。　２００５年に、互いの交誼により太田記念美術館の所蔵品をパリのギメで公開する企画が持ち上がった。その中に北斎の「虎図」が含まれていた。　この展示の最中に、くだんの「龍図」の表装と「虎図」の表装の近似が判明し、さらに落款も「九十才老人卍」と、同じであることが学芸員により確認され、二図をつき合わせてみたところ、一対をなすものであることが判明したという、まさに「事実は小説より」的なドラマチックな判明劇であった。　　もし、太田記念美術館とギメ東洋美術館との所蔵作品交流の企画がなされなかったとしたら、また、所蔵者の個人コレクターがギメ東洋美術館にこの作品を寄贈することを考えなかったとしたなら、この一幅対は永遠にめぐり逢う機会を失っていただろう。　いくつもの偶然に支えられた奇跡的な邂逅であったという。　

  2007.01.12

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• 対の文化：泰西王侯騎馬図屏風

  　一体に、まったく別個の美術品と思われていたものが、実は対をなすものであったというのは、今回の北斎の「龍図」「虎図」の双幅をまつまでもなく、過去にも幾多の例が挙げられている。それは、日本画、とくに障壁図が、対をなすことを念頭において作成される絵画であるということによる。　先日開催されたプライス・コレクションにおいても、数々の屏風図が、その本来の姿である一双を広げて展示され、多くの感動を呼んでいた。　この先例として、鮮やかにわたしの記憶に残っているものとして、「泰西王侯騎馬図屏風」がある。これは、桃山時代に伝来した南蛮文化の影響下、キリシタン大名として名高い蒲生氏郷が日本の絵師に命じて描かせたもので、長らく会津若松の鶴が城の障壁画として飾られていたものが、ひとつは戊辰の役の際流出し、個人の手を経て、神戸市立博物館に所蔵され、もうひとつは会津藩主であった松平氏の所蔵のものが同じく個人の手を経て、サントリー美術館蔵となったものである。　http://www.general-museum.fks.ed.jp/news/bijutsu_koza/bijutsu_04.html　http://www.suntory.co.jp/sma/jp/collections/2.html（サントリー：静）　http://www.city.kobe.jp/cityoffice/57/museum/meihin/041.html（神戸市立博物館：動）　　この２枚の屏風図が、対をなすものであることが判明し、一双として観覧されたのが、１９８５年（昭和６０年）１月～２月に、赤坂のサントリー美術館で開催された「二つの泰西王侯騎馬図」展であった。二枚の絵を並べてみると、一方は「静」、もう一方は「動」を表し、いずれもみごとなできばえで、双方がお互いを引き立てあうのが見て取れる。　余談ではあるが、映画「梟の城」で、秀吉の寝所を飾る障壁画にこの絵が使われていたように記憶している。（ちらっと垣間見ただけであるので、確証はもてないのだが。）　長い年月をかけて、寄り添うことのできた画は、自らの運命の数奇をどう思っているのだろうか。

  2007.01.06

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• 龍虎相まみえる時

  　フランス国立ギメ美術館は、実業家エミール・ギメ氏の東洋美術コレクションをもとにした美術館で、ルーヴルの東洋美術館の役割を担い、そのコレクションは欧州屈指のものであるという。　いっぽう太田記念美術館も、実業家太田清蔵氏のコレクションをもとに設立され、浮世絵の名品の所蔵ではわが国内屈指の美術館である。　なんと、この二つの美術館の交流が、葛飾北斎の最晩年の作「龍図」の発見をもたらしたのだという。しかも、「この龍図」は、太田記念美術館が所蔵する「虎図」と対をなすものであることも確認されたのだという。　今回、１月３日から２月２５日まで開催される「初公開　ギメ東洋美術館所蔵　浮世絵名品展」では、この龍・虎の双幅が、初めて並べて展示されるほか、いままで他に公開されることの少なかったギメ東洋美術館の浮世絵の名品が一般公開されるということで、わくわくしている。　http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/dis070102.html　会期は前・後期にわけ展示物も入れ替えされるとのことであるが、なんとか両方に行ければと思っている。

  2007.01.05

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• 観音とは何か：仏像展（5）

  　今回の展覧会の目玉の一つは、向源寺の秘仏の十一面観音であった。そのたおやかで、優美な像は特別な展示がなされ、多くの人々がその美しさにため息をついていた。　ところで、観音とは何か？観音とは正しくは観音菩薩のことであり、菩薩とは悟りを開くことで如来になることのできる修行の位置にいるものである。その願いは、多くの衆生の救済であり、そのために色々なアイテムを持っている。それは、さまざまな表情だったり（十一面観音）、おおむね４０本の手（千手観音）である。　蛇足であるが、千手観音の手は、一本が２５人の人を救うことができ、それが４０本集まるので、千本の手であるという勘定になるのだそうである。また、その手の一つ一つには目がついており、いろいろなアイテムを持っているのだそうである。（山本勉著「仏像のひみつ」より）

  2006.12.08

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• 夢十夜：仏像展（4）

  　夏目漱石といえば、「こころ」や「それから」と言った謹厳なモラリストというイメージの作家であるが、｢夢十夜」という作品は珍しく耽美的・ファンタスティックな彩りのなされているもので、わたしのお気に入りの作品である。　その第六話に、「運慶が仁王像を彫り出す」という話がある。運慶は鎌倉期の仏師であるので、多分技法は寄せ木造りで作ったであろうが、彫像の世界では雄渾な金剛力士像を始めとしていくつもの名作の作り手として、神様的な存在であろう。瞬く間に彫り出される仁王像を彫っている運慶は、その手際に感心する「わたし」に、｢木の中にすでに存在しており、仏師はそれのなりたい形を取り出すだけである」という。　これは、まさに一木彫をイメージした情景ではないだろうか。　今回、さまざまに彫られた仏像を見ることが出来、古の人々が仏像に託した祈りを垣間見る想い、ひとしおであった。

  2006.12.07

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• 霊木：仏像展（3）

  　「仏像」展で、永らくあこがれていた宝誌和尚像を見ることが出来た。宝誌和尚は、不思議の人で、常々自分は観音の生まれ変わりといっていたが、ある日自分の顔を引き裂く（！）と、その割れ目から十一面観音の顔が現れたという伝説の人物であり、この伝説に基づき彫られた像は、確かに真ん中からパッカリ割れた顔から別の顔が覗いているという、シュールな像であり、フランスの思想家ロラン・バルトの日本論「表徴の帝国」の表紙を飾っている。　この像は、体のバランスも崩れており、これは、おそらく霊木を用いて像を作ったためであろうといわれている。今回の展示品の中にかなりこういった像が存在しており、一木彫という手法には、このような材料として用いた木そのものに意味のある場合が多かったようである。

  2006.12.06

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• 袖振り合うもネットの縁

  　メールをチェックしていたら、遠藤彰子先生からメールをいただいていて、びっくりしてしまった。遠藤先生のHPに、メールのあて先があったので、そこにHPや先日のつくばの感想等書き込んでしまったのだが、そんな拙文に、きちんとお返事をいただくなど、恐縮至極である。　先日の鶴岡タウンねっとのyoshikichiさんといい、今回の遠藤先生のメールといい、ネット環境がなければ生じなかったご縁である。また、エリック・ハイドシェックのCDなども、ハイドシェックのファンサイトを立ち上げてくださった方が詳細なディスコグラフィーをアップしてくださったり、BBSを作ってくださっていて、そこからどれほど情報をいただくことができたことだろうか。　俗に「袖振り合うも他生の縁」というが、ネットのご縁のありがたいことである。

  2006.11.30

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• 「讃歌」を読む

  　入院中に何冊か本を読んだのだが、この本だけは、読みきれなかったのが、篠田節子作「讃歌」である。女性ヴィオリスト（ヴィオラ奏者）の生涯を主題とした小説であるが、某新聞の連載されたもので、その時の挿絵が、遠藤彰子画伯であった。新聞掲載時は知る由もなかったわたしで、この夏の遠藤画伯のつくばの展覧会で、初めてそのことを知り、遠藤画伯のHPで、全イラストレーションが公開されているので、挿絵のみ先行して読んで（？）いたが、いったいどんな話であるかと、今回の入院の無聊をなぐさめるため、病院に持ち込んだのだった。　ところが、この単行本、表紙や中扉の装画からして遠藤画伯の絵ではなく、字だけの単行本である。（マァ、ショウセツナンダカラ、アタリマエトイエバ、ソウナンダケドネ）　読み進んでいくうちに、もういけない。遠藤さんのイラストは、ここをどう描いているかなぁ、とそればかりである。病院なので、当然ネット環境なんて思いもよらない。結局あきらめて、退院後遠藤さんのHPを見ながら小説を読むという楽しみを今日から開始することとした。　つくばでの展覧会の折、老年の男性が、この新聞小説の連載が始まり、遠藤画伯がその挿画を担当するということが発表されたとき、「『こりゃぁ、大変なことになったな』と思いました。」と、おっしゃっていた。毎日作者の原稿に向き合って、真剣勝負で、挿画を描く作業は、たいへんな精神の緊張を要する、と遠藤画伯ご自身もエッセーで打ち明けていた。　そんな甲斐あって、挿画は、小説を読むと挿画の情景が、挿画を見ると小説の中のシーンが想い起こされてくる、という出来であると思う。今日はちょっと所要で、夜になるまでお預けだが、秋の夜のなによりの楽しみである。

  2006.11.22

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• 和田義彦氏の絵

  　現在熱海起雲閣で「森村誠一展」が開催されている。江戸川乱歩賞受賞作の「高層の死角」以来の業績を辿るものである。　その一角に森村氏の肖像画が展示されているが、この作者が誰あろう、あの和田義彦氏である。例のアルベルト・スギ氏作品の盗作騒動で連日マスコミを賑わしたお方である。絵の出来は、可もなく不可もなく、まぁイタリア人の画家が森村氏を知っている可能性は少ないので、これは和田氏のオリジナルだろうと推察されるが、これが却って偽スギ作品との乖離を表していて、あの作品群がなければ、大臣表彰を受けるような画業ではなかったとわたしには思われるのであるから、げに恐ろしいのは天の眼である。　おぼろげな記憶であるが、例の騒ぎの時は、森村氏は数少ない和田氏擁護派であったに記憶しているので、その誼で、展示物の中に加えたのだろうか。　蛇足ながら、綿貫民輔氏の肖像画はどうなったのかな。

  2006.10.17

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• 「仏像」展

  　東京国立博物館で、「仏像」展が開催されている。　京都宝菩提院願徳寺の「菩薩半跏像（伝如意輪観音）」や、滋賀県向源寺（渡岸寺観音堂所在）「十一面観音菩薩像」の二つの国宝をはじめ、国宝･重文45体ほか円空・木喰を含む一木つくりの仏像140体が一同に会するこの展覧会は、すばらしいものであろう。　とりわけ、わたしが拝観したいのは、宝誌和尚立像（京都・西往寺）である。なにしろ、この像、和尚の顔が真ん中からパッカリと割れ、割れ目から同じ顔が覗いているというシロモノである。　フランスの哲学者ロラン・バルトが、その著書「表徴の帝国」の表紙にしている。http://www.amazon.co.jp/gp/product/4480083073/sr=8-2/qid=1160975692/ref=sr_1_2/250-1937309-3365817?ie=UTF8&s=booksぜひとも、ご尊顔を拝し奉りたいものである。

  2006.10.16

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• 連々山図：「幻の棟方志功」展（3）

  　水墨画を見るといつも思うのだが、なぜ墨の濃淡だけで、パースペクティヴ技法なしで、紙の上に深山幽谷が描けるのだろうか。　この「連々山図」と題された一双六曲の屏風は、墨の濃淡及びところどころに緑青・群青を刷いただけであるはずなのに、山々の連なり、杉木立、里のさまが、さながら壺中天のような小宇宙を形作っている。飽きもせず眺め、この画の中に住ま居したいと暫し思ったものであった。

  2006.10.14

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• 断：「幻の棟方志功」展（２）

  　大原邸の蔵の二階を大原總一郎氏は書斎として使用していたという。その書斎を外界から隔てる扉の内側が今回出品されている。　キャメルに近い色の和紙の、通常の3分の2以下の小さい襖の上部に雄渾に棟方の字で「断」と書かれている。小さい落款が左側に一つあるきりで、ただ「断」の字が二つ並んでいる。書斎に篭った總一郎氏は、中に入りし時はこれを眺め、外に踏み出す時には、この字を破いて外世界へ出て行ったのだ。 　経営者として倉紡を率いた大原總一郎氏は、戦後の繊維産業を競争力のあるものとすべく、ビニロンの開発に心身をささげていた。棟方は、そのような氏のために「ツァラトストラは三十才の時、其故郷と其故郷の湖とを去りて山に入りぬ。---」で始まる美尼羅牟（ビニロン）頌板画柵を彫った。新繊維誕生へ懸ける大原總一郎氏へのオマージュである。 　一方で、大原美術館の近代日本絵画コレクションが、安井曽太郎であれ、岸田劉生であれ、その作品の質･大きさともに代表作の一つに数えられるような作品であることに見られるように、氏の審美眼の確かさには目を見張るものがある。 　経営者としての才、審美者としての才、50代の若さで亡くなった大原總一郎氏は、「断」の一文字で断とうとしたのは何であったのか？また、志功はどのような気持ちでこの襖を描いたのだろうか？ここにも、両者の特別な交誼が見て取れる。　

  2006.10.13

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• 「幻の棟方志功」展

  　大丸ミュージアム（東京駅八重洲口）で開催されている「幻の棟方志功」展は、すばらしかった。　大原總一郎氏が、優れた審美眼の持ち主であったことは、大原美術館の近現代美術コレクションを見ても、推察できることであるが、この大原家秘蔵の棟方作品は、一級の審美眼の持ち主と、上り坂にあり、自身の藝術をさらに高みに押し上げていこうという藝術家の高揚たる精神が結んだ特別な交誼による唯一無二の作品である。　会場は、まず32匹の鯉が悠揚として泳ぐさまを映す一双六曲の「御群鯉図」で始まる。墨と朱で32匹の緋鯉が描かれる屏風は、鯉のひれが水を掻き分ける音がきこえそうな広がりを持つ。「志功　写」の落款のとおり、自然（じねん）を切り取るかの趣きである。

  2006.10.11

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• 損保ジャパン東郷青児美術館の児童用パンフレット

  　いつも感心するが、ここの児童用パンフレットはよくできている。今回の展覧会のパンフレットも、まづ展示作品をジャンル別＝歴史画、風俗画、肖像画、風景画、静物画に分け、それぞれの代表作によりその特徴及び代表作の作品解説を平易に行ってくれている。　おまけに、最終ページではハプスブルグ家とウィーン美術アカデミーの解説を入れ、裏表紙には16C～20C間の「美術の流れ」「オーストリとウィーンの歴史」「日本の歴史」を一覧できる年表を作ってくれてあり、この作品は、オーストリアのどんな出来事があった時代に描かれたもので、そのとき日本はどの時代でどんな出来事があったのかが一望できる。　大人の鑑賞にも堪える立派なものである。　ミュージアムショップにあった、「ポップアート」編や「フィリッポ・リッピ編（プラート美術館の至宝展）」等閲覧させてもらったが、どれもよい出来であった。

  2006.10.02

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• ウィーン美術アカデミー名品展

  　朝５時起きで、６時発の東京行きバスに乗って、新宿の損保ジャパン東郷青児美術館で開催中の「ウィーン美術アカデミー名品展」に行く。http://www.sompo-japan.co.jp/museum/exevit/index.html　クラナッハ（父）が４点、ファン・ダイクの「１５歳の自画像」、ヨールダンスの透明感のある「画家の娘エリザベート」、レンブラントの「若い女性の肖像」、レオナルド・ダ・ヴィンチが構想をし、なんらかの事情で未完成に終わったものを、およそ１００年後ルーベンスが残された記憶を基に描いた「アンギアーリの戦い」ほかのルーベンス作品とムリーリョ。ここらへんは質も高く、フランドル絵画（ムリーリョは別だが）を堪能できた。　これらの作品群は、おそらく同美術アカデミーの中核をなすランベルク伯爵のコレクションではないかと推察され、その質の高さに驚いたものであるが、後がいけない。　その他の風景画や同アカデミーの教授たちの描いた作品は、歴史資料的には価値あるかもしれないが、藝術的にはちょっと先ほどのオールドマスターに比べれば見劣りしてしまう。あまりに総花的で、展示が進むにつれ、がっかり。　余談であるが、アカデミー教授であり、後にクリムトらとウィーン分離派を結成したモルの作品があった。アカデミーからの連想であるが、その昔パリに絵画修行に行った佐伯祐三がヴラマンクに教えを乞うた際、ヴラマンクは佐伯が持っていった作品を「アカデミズムの悪しき見本」と完膚なきまでに貶し、佐伯の画業がここから花開いたという逸話を思い出した。特に時代の激変期であった１９世紀末、アカデミズムへの反逆が新たなる絵画の地平を開いたことは、興味深いことである。

  2006.09.30

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• アメリカン・イラストレーター

  　子供の頃、体が弱く、なにかというと熱を出して寝込んでしまう子だった。あとで分かったことだが、扁桃腺が肥大していて化膿しやすく、一ヶ月に一度は熱を出して２,３日、冬場になると３８度以上の高熱で一週間くらい学校を休むのが年中行事だった。そんなわたしの楽しみは、父が買ってくれた、毎月本屋さんが配達してくれる岩波の「少年少女世界文学全集」だった。その中の一冊にハワード･パイルの「ロビンフッドの冒険」があった。悪代官に挑むロビンフッドやシャーウッドの森の仲間たちの活躍が、悪とされる荘園領主や商人、僧侶などを懲らしめるエピソード等を中世物語風に、ちょっとスノッブな描き方で物語を展開していたようで、今思うと子供に理解できる範囲を超えていたように思うが、その頃は娯楽とて余りなく、退屈な自宅待機を味わっていたわたしは、むさぼるように読んだものである。　そのロビンたちの活躍を引き立てていたのが、作者パイルの挿絵だった。中世物語風に描かれたその絵は、物語の情景を劇画チックによく表していて、空想の中のシャーウッドの森をわくわくしながら散歩したものだった。　パイルがアメリカン・イラストレーションの草創期に一世を風靡したイラストレーターであることを知るのはずっと後のことであった。

  2006.09.27

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• 遠藤彰子さんの制作ノート

  　遠藤彰子さんのホームページに、隠しページとして制作ノートが置かれている。　http://www.akiko-endo.com/exhibition/index.htm　フラッシュを使って、実際に作品を制作している状態を、作者の解説入りで紹介しており、制作の黍を傍見できる興味深いノートである。　実際にお会いした遠藤さんは、とても明るい普通のおばさん（失礼、でも御綺麗でしたよ）のような印象を受け、５００号のカンヴァスを立てたり、寝かせたり、回転させたりの力ワザを駆使して一日１６時間もの画業をこなしているような方にはとても見えなかったのですが、こうして制作の現場を見せていただくと、本当に藝術に生涯を捧げているのだなぁと感激しました。ちなみに、絵を描く筆は習字用の細筆を使っているそうですが、一日一本のわりあい、一年でおよそ３３０本を費消してしまうそうです。　ホームページの外のページも、とても楽しいコンテンツが一杯です。とりわけエッセイは抱腹モノで、毎週日曜日に更新されるのを、待ちきれぬ思いで楽しみにしています。

  2006.09.26

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• カレンダー

  　諏訪の北澤美術館から来年のカレンダーのご案内が届いた。壁掛けタイプのものは、アールヌーボーのガラス器で、表紙はガレの桜桃紋ランプである。卓上タイプは、同美術館の日本画コレクションで、表紙は杉山寧画伯の「娑」という絵で、二羽の丹頂の舞姿を描いたものである。どちらも、日付部分を切り取ると、絵葉書として使用できるそうだ。

  2006.09.25

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• モジリアニとピカソ

  　この二人が共存した時代、世界は亡命者で溢れていた。第一次世界大戦、世界初の共産主義国家の誕生、Ｇｒｅａｔ　Ｃｒａｓｈ（世界大恐慌）、帝国主義国家による侵略戦争と植民地政策といった時代の激変が、それまでの人道主義的な知識階級による世界観では対応しきれないうねりを呼び、個人はなすすべもなく国を奪われ他国をさまよわなければならなかった。　その時代の気分を、ひとりは日々飲んだくれる生活の中で憂愁の表情の婦人像を描き、もう一人は青を基調とした貧しい人々を描くことで、世界に対峙していた。二人とも陽光あふれる南の地の生まれであったが、その活動の舞台は北の国際都市パリを選んだ。　一人は、耽溺したアルコールのため画業を評価されぬまま行路病者として逝き、もう一人は憂愁の気分を表す絵画を描きつつも、時代精神に戦いを挑み、千変万化の変貌を遂げ、衰えぬ創作意欲を生涯持続し、長寿をまっとうした。　この正反対の生涯を持つこの二人の作家に、けれどこの時期だけ、わたしの好みは合致しているのだ。それは、全感性を注いでこの時代への抵抗を藝術の高みに引き上げた二人の画家への賛歌なのだろうか。

  2006.09.22

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• モンパルナスの灯

  　アメディオ・モジリアニの晩年を描いた映画「モンパルナスの灯」でモディに扮したのはジェラール・フィリップ。生前は認められることのなかったモディの絵は、そのやさしさと憂愁の雰囲気により、世の人々を魅了してやまない。　うかつなことに、Bunkamura ザ･ミュージアムで、今月１日から「ピカソとモジリアニの時代展」が始まっていたことに気付かずにいた。http://www.bunkamura.co.jp/shokai/museum/index.html　ピカソとモジリアニが共有していた時間といえば、エコール・ド・パリと呼ばれる時代、モディにとっては、その晩年、ジャンヌ・エピュテルニュを得て、憂いに満ちた婦人像の傑作の多くが生み出された時代。ピカソにとっては、青の時代である。19世紀末を経て、文明がもたらす軋轢に出口の見出せない憂鬱さが色濃く時代を支配した。その閉塞感は、現代に共通するがゆえに、わたしはこの時代に強く惹きつけられるのだろう。

  2006.09.19

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• 幻の棟方志功

  　来月５日から、東京駅八重洲口の大丸ミュージアムで、「幻の棟方志功」展が開催予定である。http://www.daimaru.co.jp/museum/schedule/tokyo/index.html　大原美術館の創設者の大原孫三郎と親交のあった棟方志功は、１９３８年倉敷の大原邸を訪れた際、孫三郎の長男總一郎から大原邸の襖絵を依頼され、以後依頼に応じてさまざまな作品を倉敷に残したそうです。　大原總一郎は、紡績をはじめとした大原家の家業の経営者として有名ですが、また美術に対する一家言をも持っている方でした。その見識は、大原美術館の所蔵する近代日本洋画のコレクションの質の高さにうかがうことができます。その總一郎氏のお眼鏡にかなった世界のムナカタの版画は、いかなる水準のものでしょうか。大原美術館の一隅を占める棟方室に展示をされていない秘蔵のお宝が初公開されるこの展覧会、いまからとても楽しみです。

  2006.09.18

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• 神田日勝とベン・シャーン

  　神田日勝の絵を見てベン・シャーンを思い出した。二人とも手・足を人物の全体のバランスからすると大きく描いている。日勝は、日々の労働を支えるものとして、また労苦に見合わない労働対価へのやりきれなさとして、ベン･シャーンは、流亡の民の存在を示すものとして、彼らの手足は自己存在証明の表現である。　日勝の絵にジャズのジャケットを取り入れた物がある。ジャズの持つ、抑圧へのプロテストを普遍のものへ昇華していくエネルギーを感じていたのだろうか。

  2006.09.12

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• 三岸好太郎と三岸節子

  　吉武輝子著「炎の画家　三岸節子」を注文する。きっかけは、北海道立三岸好太郎美術館の『黄服少女』の解説文「好太郎は、生涯に多くの恋をし、このモデルとなった女性もその一人である」という一文。多くの恋の果てに三岸節子さんに行き着いたのかと思いきや、節子との結婚は1924年9月で、翌年には長女も誕生しているのに、この絵は1930年作。ということは、彼の中では家庭と恋は矛盾なく存在していた----なんて身勝手な男なんだろう、こんな亭主をもったら妻はたまらないだろうな、という感想を北海道で持った。　帰宅後ネットで三岸節子を検索。するとこの吉武氏の著作の紹介が。「好太郎の訃報を受け、節子は『ああ、これで私は画家を続けられる』と叫んだ。」とある。火宅の人好太郎とのドラマが展開していくのだ。二人の偉大な画家のあいだにいかなる葛藤があったのだろうか、吉武氏の労作に期待している。

  2006.09.10

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• 平沢貞通の絵

  　然別湖畔のミネルバ美術館で、平沢貞通の絵に遭遇した。富士山を描いた水彩画である。ここのオーナーの福原治平氏と交流があったようで、はがきも何点か公開されている。平沢は、帝銀事件の犯人として死刑を宣告され、人生の大半を獄中で送ったが、本業は画家であった。　とはいっても、見た限りではあまりうまくない。水彩の技法も中途半端だし、デッサンも甘い。かろうじて絵手紙風のはがき絵に画家らしいタッチを見るくらいであるが、まだ修行中の絵という感じである。住所は仙台市とあって、最初は同名異人かとおもったが、仙台には死刑囚収監の刑務所があることに思い至り、刑務所から福原氏あてに出したものと知る。獄中ではたしかに絵の修行など思うようにはいかなかっただろう。　謎の多い帝銀事件、現代の進んだ化学捜査が存在していたら、平沢氏の運命は如何だったろうか。画の道にまい進できていたのであろうか。　

  2006.09.09

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• 三岸好太郎図録

  　札幌の三岸好太郎美術館にはミュージアムショップがなく、「なにもないの？」と聞いたら、美術館友の会というのがあって、そこから2003年開催の生誕100年特別展の図録を送ってくださるということなので、手配をお願いしておいたら、今日図録画届いた。ピンで止まった蝶々の絵が表紙の美しい図録である。　たのしみに残暑をのりきろう！

  2006.09.08

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• 神田日勝記念美術館

  　小樽から国道274号線、日勝国道をひた走り、鹿追町に着く。そぼ振る雨の中、神田日勝記念美術館に到着。道の駅との複合施設で、駐車場と美術館の距離に、もっと近くに駐車場があるんじゃないかと、美術館の周辺を一周するが外になく、北海道の距離感覚を実体験する。　記念美術館の入場料は一人450円。受付で支払い、歩を進めると階段を3段ほど下がったところにメイン展示場があり、絶筆となった「馬」の絵を正面に、日勝の作品が展示されている。「馬」は、写真で見たよりも克明に毛並みを一本一本描いてあり、それだけに未完に終わった悲しみが一層漂っているように見え、この天才の早世が惜しまれた。　「馬」を挟んで、日勝の画風が大きく相違してくる。向かって左側にはゴッホの糸杉のようなうねりを色彩で、しかも青やピンクというショッキングな色彩で表現している絵が連なっている。男女が抱き合っている姿をテーマとしているものもある。「馬」に到達するまでの、セピアを中心とした、日常の中での人間の労働と日々の団居をテーマとした作風と全く趣を異にした作品群に驚きを禁じえない。思わず、美術館のかたに「何か精神的に異常があった時期でもあったのでしょうか？」と尋ねてしまう。「そういうわけではなく、いろいろな絵画技法を模索した時期があったと聞いています」とのお話である。しかも、制作年を見ると同じ年に両方の作風が併存していて、「馬」に収斂していく。いろいろの試みを経て、「馬」を描く境地に到達した、というようなコメントもある。　わたしはどちらかといえば、セピアがかった作風が好きで、日勝はそういうものしか描かないかと思い込んでいたので、ちょっとショックが強い。　美術館で購入した伝記本にも、「農民画家というレッテルをはられることを嫌っていた」ような記述もあったことから、自身の画風を変革しようとした時期があったということだろうか。

  2006.09.05

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• 三岸好太郎美術館

  　今日は盛沢山の予定のため、朝6時に宿を出発する。朝食のかわりに宿でおにぎりを用意してくださったので、ありがたく頂いていく。　まず、最初は旭岳。ロープーウェイで900ｍを一気に駆け上がる。残念なことに夏の花は綿毛になってしまっていて、かろうじて竜胆が紫の清楚な姿を見せてくれている。姿見の池まで岩のごろごろしている道を登っていく。日頃の運動不足がたたり、息切れしつつ、ちょと上っては休み、上っては休みする。情けない。やっとついた姿見の池は、折からの風で漣がたっていて、旭岳の姿は映ることはなかった。お昼は、ロープウェイ駅の売店のフライドポテトですませ、一路札幌へ向かう。　札幌のお目当ては三岸好太郎美術館である。「絵画技法の大海を一気に泳いだ」と、土方定一氏の評した夭折の天才三岸好太郎は、彼の描いたピエロを見て以来わたしの憧れの人であった。その作品220点を、妻の三岸節子画伯が北海道に寄贈し、北海道立美術館として発足したものを、三岸好太郎美術館として発展的に新築し、現在に至っているという。　初期の人物画数点、独特の哀愁を漂わせた道化師が数点、後年シュールレアリズムに興味を抱きその影響下に描いた蝶や貝の絵。蝶の絵は、安西冬衛の有名な一行詩「てふてふが一羽韃靼海峡を渡っていった」を思い出させる。　しかし、普通この手の美術館にありがちなミュージアムショップなどなく、カタログとかないんですか？と聞くと、（神田日勝記念美術館は立派なのがあったぞ！）ないという。せっかく三岸の絵に憧れて通ったのに、悲しいことである。　ねばって、特別展のカタログがあることを聞き出し、それを送ってもらうよう手配して、美術館を後にした。　

  2006.09.02

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• 黄金のリュトン

  　東京都美術館で開催されている「ペルシア文明展」が今日の日曜美術館で紹介されていた。奇しくも、本日市立図書館で読んだ雑誌にも紹介記事があった。週刊新潮の記事は、アメリカのイランへの経済制裁以後、イラン政府からペルシア期の文物の公開がなされなくなって久しく、やっと公開にこぎつけたのが今回のこの展覧会であるとのことで、日曜美術館での映像をみる限りかなりの質の像や装飾品等が展示されている様子である。　中でもひときわ輝いているのが、翼を持つライオンのリュトン（酒を入れる容器）で、その黄金の輝きは千何百年を経た今でも燦然とした光を放っている。　３０年以上前であるが、東京国立博物館で「スキタイとシルクロード展」という催しがあり、そこではこういった黄金の文物を持つ遊牧民族スキタイと、その活躍の舞台であったシルクロードが取り上げられていた。そういえば、シルクロードの起終点は、ペルシアと日本（正倉院）であり、正倉院御物の一つ玉杯（ｋジャットガラスの杯）によく似たガラス杯が今回の展示品として紹介されていた。

  2006.08.27

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• Tiger,Tiger（プライスコレクション（５））

  　Tiger,tiger　burning bright,(虎よ、虎よ、明るく燃える）  In the forest of the night（夜の森で）　と歌ったのは、ウィリアム・ブレイク　　その虎は（少なくとも江戸期には）日本にはいなかったと思われるのだが、プライスコレクションには、結構な数の虎図が含まれている。秀吉の朝鮮侵略の逸話として、加藤清正の虎退治というのがあるので、少なくとも虎の毛皮は日本に輸入されていると推察されるので、そのようなものとか、猫の姿態とかを見て描いたのではないかと思うのだが、みなさんユニークな虎を描いている。少なからずユーモラスなのは、やはり実物を見ることがなかったため、虎の獰猛さというよりは、幻獣的な意味合いで描いたものだろうか。 

  2006.08.21

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• プレゼント（プライスコレクション（４））

  　酒井抱一画「四季草花図・三十六歌仙図色紙貼交屏風」6曲１双は、プライス氏が奥さんのエツコさんにプレゼントした品である。お約束のとおり、梅から始まって左へ季節が移ろっていく。すみれ、たんぽぽ、れんげ等の野の花も描かれ、桜を過ぎて、かきつばた、アジサイ、朝顔等の夏の花を描き、萩、尾花、山葡萄からもみじを経て、冬枯れの木からつわ蕗で終わる冬へ、ほどよいリズムが、草木の配置、色彩で形作られ、そのあちこちに、三十六歌仙の歌がちりばめられる構成になっていて、なんとも艶麗で優雅な作品である。　こんなプレゼントを一回でいいからもらってみたいものである。

  2006.08.20

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• プライスコレクション（３）

  　展覧会の最終室は、圧巻である。ジョー・プライス氏の発案により、ガラスケースを取り払い、自然光の移ろいを照明装置で人工的に作り出した展示方法が取られている。これによりわたしたちは、一日の光の変遷により変貌する絵画を体験することが出来る。　この全く新しい視点には、驚きを禁じえなかった。プライス氏の卓見に脱帽である。確かに、日本画は、掛け軸や屏風、襖絵として、調度の一つであるので、このように自然光の移ろいの中、さまざまに印象を変えて鑑賞されてきていたものであろうし、このように展示されることで初めて見えてくるものもある。　また、広い展示室に多くの屏風が展示され、堪能することで、いまさらながらではあるのだが、この屏風絵という形式の面白さに気付いた。　屏風の決まりごとは、1.偶数曲数の左右一対、2.右から左へ動き（時であったり、ものであったり）がある。ということが基本であるが、それに基づいて鑑賞していくうちに、６曲なり８曲の曲がり自体に動きのあることに気付いたのだった。　たとえば、鶴の群像が描かれている屏風を右から左へこちらが動いて鑑賞していくわけだが、動くうちに曲がりがあることから、視界から消えていくもの、見えてくるものという動きが加わってくるのである。これにより平板の絵と違い、全体の構図も変貌し、さまざまな局面が展開していく。なんとも楽しい経験ができたのである。

  2006.08.19

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• プライスコレクション（２）

  　東京国立博物館で開催されている「若冲と江戸絵画｣展は、アメリカ人ジョー・プライス氏のコレクションによるものであるが、このコレクションがかって所蔵されていた「心遠館」の写真が紹介されていたが、一目観たとたん、ライトの建築ではないか、と思ってしまった。実際は、ライトの弟子のブルース・ゴフという建築家の設計になるものだという。この建物は1996年に火災で焼失してしまったということで、残念なことである。　プライス氏の父君は、パイプタインの敷設で財をなした方であり、フランク・ロイド・ライトにオフィスビルの設計を依頼（プライス氏は自分が紹介したと書いているが)したことから父子２代にわたる親交を結ぶこととなった。思えば、このライトとの親交が、プライス氏の日本画コレクションのきっかけとなったのだ。　詳しくは、公式ブログ等のプライス氏自身のことばを参照されたいが、ライトのお供でさる美術商を訪ね、そこでまだ景和と名乗っていた若冲の若書の「葡萄図」にめぐり合い、そのFascianatingな魅力に魅せられ、以後若冲のコレクションから江戸絵画のコレクションに続いたということである。　詳細と図像が公式ブログに掲載されている。http://d.hatena.ne.jp/jakuchu/　ライトは、また、「Godと大文字で書くように、わたしはNatureと記したい」というほどに、自然をインスパイアした建築家であったそうであり、その命脈はプライス氏に脈々と受け継がれているという。わたしたちは、江戸の自然をも感じ取ることができるのである。

  2006.08.18

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• プライスコレクション

  　たった今東京から帰ったばかりです。国立博物館で開催中の「プライスコレクションによる『若冲と江戸絵画』」を観てきました。まず、おどろいたのは、その質の高さでした。冠の若冲筆の葡萄図をきっかけとして若冲のコレクションをはじめたというプライス氏ですが、コレクションは若冲・芦雪・基一にとどまらず、狩野派、琳派、円山派と多岐に渉っており、また、その量・質ともに日本人ではこうは行かないというすばらしい質での一大コレクションでした。　あまりすばらしすぎて、ちょっとまだわたしのアタマの中でまとまりがつかず、明日以降また感想などアップします。久々の感動でした。http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/Con?pageId=B01&processId=01&event_id=3119 

  2006.08.17

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• 美術館が面白い

  　美術館が面白くなっている。今までのように、単に展示をするだけでなく、いろいろなパフォーマンスをすることが多くなってきた。　先だって観に行った遠藤彰子さんの展覧会でも、講演会だけでなく、ギャラリートークということで、画家に自作の絵を語らせ、観衆との質疑応答の機会を設け、画をさまざまな角度から見ることができる試みが行われていた。東京都立美術館の展示も、2,3年前は質的にイマイチの感があったが、最近のものは充実してきている。　ひとつには、公立の美術館・博物館が独立行政法人となり、収支決算を気にせざるをえない状況が生じてきたことである。より観客を動員できる企画の勝負を要求される、厳しいが、学芸員にとっては腕のみせどころでもある。　これから芸術の秋に向けて、より意欲的な催事があることを期待したい。

  2006.08.11

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• ガラスケース

  　現在東京国立博物館で開催中の「若冲と江戸絵画」の中のいくつかの作品は、コレクターのプライス氏の意見を取り入れ、ガラスケースなしの展示が行われているという。「（画の描かれた）江戸時代に、ガラスケースなぞなかったはずですよ」とのプライス氏の意見に、自然の光のなかでの絵画鑑賞をすることに決定したそうである。　そういえば、先日鑑賞した遠藤彰子展も、画が500号、1000号と大きなこともあって、絵はそのままの形で展示され、こまかなタッチまでくわしく鑑賞でき、感激が増したものだった。　多くの展覧会では、貴重な絵の保存のため、また絵を傷つけようとする不心得者もいないではないので、ガラスの嵌った額縁に入れ、その額縁からも距離を設けて、それ以上近づくと、警備員やら監視スタッフが寄ってきて、「お客様、このロープの線から中には入らないでください」と、慇懃無礼が始まるので、絵のタッチなぞゆっくり鑑賞することもできない展覧会が多いが、このような見識をしめしてくれる美術館なり作者、コレクターのいることは、近来ない快挙であると、快哉を叫びたい気持ちである。

  2006.08.10

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• 神田日勝

  　内田康夫さんのミステリ「幸福の手紙」の表紙で、神田日勝の絶筆「馬」を見た時の衝撃は忘れられない。絶筆であるから、日勝は全体を描くつもりで頭から書き出し、胴体の真ん中まで来たとき、病篤くなり、そこで中断されたということが実情であろうが、若くして逝ったこの画家の無念の気持ちを表してか、「馬」は、文字通り胴体が寸断された様が描かれているようで、なんとも衝撃的に見えたのだった。　この印象は、何の予備知識もなく日勝記念美術館のHPでこの絵を見たうちの亭主も、同じ感想をもらしていたから、かなり普遍的ではないかと思う。　これに衝撃を受けたわたしは、日勝の生涯を調べ、その夭折を知る。それ以来、何とか鹿追にあるこの記念美術館を訪れたいと願っていたが、今月末に北海道旅行をすることになり、旅程に組み込んでもらった。いまから、その日の来るのが待ち遠しい。

  2006.08.09

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• 遠藤彰子展（２）

  　壁一杯に広がる５００号、１０００号、１５００号の世界。その中で繰り返し現れるのは、怪魚・幻獣・馬・爬虫類・犬・猫・たくさんの輪になって踊っている子供たち・母子・炎・空・階段・部屋---それが遠藤彰子の世界である。　わたしが画伯の絵を知るきっかけとなったのは、「安井賞」受賞作の『遠い日』という作品。すり鉢状の構図の中央部を囲むように道路がはりめぐらされ、すり鉢の底へ下がっているような、しかし、見ようによってはすり鉢から上がっているようでもある階段。その中で遊びに興じる子供たちや子供をベビーカーに乗せて歩いてくる母親らしき女性。　どこかしら予定調和のような無機質名な静けさ。どこにもあるようで、どこにもない空間。その時間と空間が一つの画面に表現されている、このような空間表現をなしうる画家を我々は初めて得ているのではないか、それが、この絵を見た際のわたしの感想であった。　それが、近年では、無機質な静けさが消え去り、植物や昆虫や木（それもゴツゴツした流木のような枝）に、上でのびたような遠藤彰子の世界の生き物たちが絡んでいく、きわめて豊饒で濃密な有機的な生命の世界に変わって行っている。それとともに絵の大きさも増化していっている。　ギャラリートークの際、不躾にも、その変容と、その変容のきっかけ的なものがあったとしたら、何であったのか、お聞かせねがいたい、というわたしの質問に、画伯は、にっこり微笑んで、『遠い日』の世界は、自分のその当時(３８歳）の日常---現代社会の発展速度に追いついていかず、これからどうなっていくのかという漠然たる不安、そして今まで自分のなかで育まれた記憶の世界と、現実をどうバランスをとっていくのか、という越し方行く末にわたる存在の不安---それを表現したものが『遠い日』であった。そういう思いを抱えて生きてきた自分が、初めて５００号という作品を手がけたとき、「絵とは、もっと自由でよいものだということを初めて実感し、この世が良い物であり、善き物、善き事であると感じることが出来、それから絵が変わっていった」とおっしゃいました。　学芸員である舟木館長も、解説の中で、遠藤画伯の絵は、幻想画のようではあるが、それは決して現実逃避の幻想ではなく、生を肯定し、希求する力に満ち溢れた世界であり、それこそが、画伯の提唱する「アキズム」という前向きな生を一義とする世界観であると言ってらっしゃいますが、遠藤画伯ご自身も、しきりに前向きな生ということをおっしゃており、非常に元気をいただいた一日でした。

  2006.08.07

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• 大原美術館（３）

  　昔、バブルの頃、史上最高額でゴッホとルノワールを競り落とした日本人がいたが、その絵画は偽物疑惑だの、さんざん嫌がらせをされたあげく、２点とも流転の憂き目を見、海外へ流出したときく。また、ゴッホの「ひまわり」を買い上げた保険会社も外資の軍門に下ったようで、会社名が変更になっている。いずれもバブルの時期を象徴する事例として、よく挙げられる。これと正反対の途を歩んでいるのが大原美術館である。　倉敷の大原美術館を中心とした美観地区は、昔の面影を映す、すばらしい景観で、いつ行っても心が和む。　美術館の魅力は、大原孫三郎・総一郎父子、児島虎次郎画伯の献身的な努力に寄与することが多いとしても、その後美観地区の景観とともに、この文化財産を守ってきたのは、倉敷の市民のみなさんの力であろう。　　栄枯盛衰の激しい世となっているが、どうかいつまでも、すばらしい文化を守っていけるよう、エールをおくりたい。

  2006.07.30

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• 大原美術館（２）

  　大原美術館の創生は、大原孫三郎と児島虎次郎の情熱によるものであったが、もう一つ特筆すべきことは、孫三郎の子息大原総一郎氏の存在であろう。　家業の紡績業の経営者でもあった氏は、しかし美術品に関しても、一家言を持つ人であった。今日、大原美術館にある近代日本絵画の質の高さと密度の濃さは、その見識眼を証明している。安井曽太郎や岸田劉生といったビッグネームが、しかしその大きさと内容の濃さで、粒よりに揃っている近代日本画コレクションは、他に類を見ないものである。　素封家であったとはいえ、大原家の美術館への援助財政も限りあるものであったろう。それを最大限に生かす眼を氏が備えていたことが、このコレクションの充実を生んだのである。

  2006.07.28

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• 児島虎次郎と大原美術館

  　無名とまではいかないが、自身東京美術学校（現在の東京藝術大学）を主席で卒業しながら、絵画制作よりも、後進の育成のため、美術館創設にその生涯を捧げたのが児島虎次郎であった。　倉敷の素封家大原孫三郎の援助により、東京美術学校卒業後、絵の修行のためヨーロッパに渡った小島は、自身の絵の研鑽もさることながら、ヨーロッパの大家の絵を日本に持ち帰り、絵画を志す若者たちに触れさせたいと考えるようになった。　この趣旨に賛同した大原孫三郎の出資により、児島はその頃主流であった印象派の絵画を中心に、巨匠の絵を買い求め、日本に送るのであった。　しかし、ただ一人、その絵を買い求めることのできない大家がいた。睡蓮の画家モネである。意を決した児島は、ジベルニーのモネの家を訪れ、直接交渉を行った。児島の情熱と人柄に打たれたモネが、睡蓮を譲ってくれたのは有名なエピソードである。　　日本の若者に、オリジナルな絵画を居ながらに触れさせたい、という情熱で欧州を駆け巡った児島は、病に斃れ、大原美術館の完成を見ずして亡くなった。しかし、このときに児島虎次郎が収集した絵画が、現在の大原美術館の基礎となり、わたしたちはいつでも大原美術館を訪れれば、エル・グレコやモネの絵に触れることができるのである。　彼の画業は、倉敷アイビースクゥエア敷地内にある大原美術館別館の児島虎次郎館で見ることが出来るが、光に溢れたその画業はありあまる才能を感じさせ、大原美術館創生という偉業をわたしたちに残してくれた児島が払った犠牲を惜しむものである。

  2006.07.27

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• 遠藤彰子さん（２）

  　ネットオークションで、性懲りもなく又絵を買ってしまった。４月に腎生検で入院した際の高額医療費分が戻ってきたので、それをぱっと使ってしまった。なんとかしなければ、この浪費癖。　でも、買ったのは、遠藤彰子さんのイラストレーション２枚一組なのだから、勘弁してもらいたい。それも、大好きだった、朝日新聞連載の「おはなし　おはなし」という小説の挿絵だ。連載中に、絵を見て魅了され、以前注目した遠藤さんの絵と分かり、それ以来なんとか手に入れたいと思っていたものなのだ。今回の出品は、連載第１0回と第１１回の挿絵である。本当はもう少しあと、１５回から１８回くらいのものがほしかったのだが、これも遠藤ワールドが十分に描かれているものであり、なによりわたしのお小遣いで賄える（can afford)金額であったので、飛びついてしまった。　今は、わたしの４畳半の書斎の壁を飾っている。

  2006.07.21

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• 遠藤彰子さん

  　遠藤彰子画伯の展覧会がこの２１日からつくば美術館で開かれる。安井賞の受賞時から注目してきた画家である。彼女の絵は、一見だまし絵風、何層にもなった街の風景が描かれる「街」シリーズは、どこかなつかしく、どこにもありそうで、どこにもない、記憶の中での実在感の濃厚な絵である。http://www.akiko-endo.com/exhibition/index.htm　昨年「府中の森美術館」で、展覧会があり、友人と観にいったが、その画の大きさにまず、驚いてしまった。初期のころは２００号くらいであったものが、近年では５００号が標準、しかも、連作という形をとって１０００号から１５００号という大作も何点か描いている。「画面の大きさは、記憶の重層さ」と、なにかの対談で語っていらしたが、５００号を描くのには１０００時間かかるそうで、そのエネルギーも驚嘆すべきものである。　この方の性格も、とても面白い。府中での展覧会の図録のおマケの小冊子には、ワニの剥製の話だの、牛の骨を庭に埋めた話だの、抱腹絶倒のエピソードが満載で、読みながら一人で吹き出してしまい、、家人に気味悪がられた。ホームページがあり、http://www.akiko-endo.com/　楽しいエピソード（ドロボーが納屋に住み着いていた話）や、新聞連載小説のイラストが掲載されていたりの「遠藤彰子ワールド」が展開されている。ぜひ覗いてみてください。

  2006.07.20

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• 伊豆の長八

  　土曜・日曜と家族で伊豆の松崎町へ旅行した。民芸茶房という美味しい魚を食べさせてくれる食事処があり、そこが経営するホテルに泊まって「美味しい魚と温泉」を満喫した。　松崎町といえば、最近では映画「世界の真ん中で愛を叫ぶ（セカチュー）のロケ地として人気が高いそうであるが、古くは独特のなまこ壁の家並びや、桜葉の塩漬けの生産が国内トップであることでも知られている。その松崎町のもう一つの名物に伊豆の長八がいる。　漆喰を使って、鏝で絵を描く鏝絵の名人として知られる長八の作品を集めた「長八美術館」が、松崎町にあり、母と一緒に観覧した。入り口で虫眼鏡を渡される。展示してある作品の細かい部分をよく見ていただきたいとのことで、作品にあててみて、納得する。筆の線と思われたものが、実は鏝で盛り上げているので、虫眼鏡でみると、その盛り上がりが見えるのである。地模様で、いまでいうスクリーントーンを貼ったように見えていたものが、実は鏝で切り込みを入れた細工であるのだ。　鏝絵は、壊れやすい漆喰で作られ、また天井絵や戸袋、腰壁や生活雑器といったものに描かれ生活の中に埋もれていってしまうものなので、芸術品としての評価は低いかもしれないが、その細部にいたるま手を抜かない作者の情熱が感じられ、fine-artとしては喧伝されないかもしれないが、一種の無名性を楽しむ人生が窺われ、感じいってしまうのだった。

  2006.07.03

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• Foujita(4)

    5年前の7月にランスに旅行した。目的は、カテドラルの見学とフランスに帰化してレオナール・フジタとなった藤田嗣治が作った礼拝堂の見学である。ミシュランの赤本のランス(スペルはReims)を頼りに街を歩く。「赤本というと、グルメ本というイメージがあるが、地図は正確で、街歩きに重宝する」というレビューがアマゾンに載っていたとおり、街のかたちそっくりに描かれた地図を頼りに、まずカテドラルそして次にChapel Foujitaへ向かう。　ここぞと思われた地区はお屋敷町で、ちょっと迷う。すると、たまたま通りかかったビジネスマンっぽいムシューが、「Le chapel Foujita?」と、声を掛けてくれるではないか。「この先をいったところだよ」、と教えていただき、無事Ｌｅ　Ｃhapel Foujita(正式名称は、ノートルダム・ド・ラ・ペ礼拝堂：平和の聖母礼拝堂）に到着した。この界隈で日本人の探すところといえば、この礼拝堂ということで、親切に教えてくださったのだろう、感謝。　入場料を払って中に入る。実は、この礼拝堂はコルドン・ルージュでおなじみのＧ.Ｈ.Ｍuｍｍ社の社長さんの個人礼拝堂で、その社長さんがフジタのフランスでの後援者の一人なのだと言う。だから、建物の規模は決して大きくはないのであるが、中は一面フジタの世界である。　入り口、正面、左右にフジタのフレスコ壁画と、日用品まで自分で手作りしたというフジタの技能が存分に生かされ、ステンドグラスや小さな戸の装飾まで、すべてフジタの手になる礼拝堂である。　現在京都を巡回中の藤田嗣治大回顧展に、写真ではあるがこの礼拝堂の一部が再現されているので、興味のある方はご覧になってみてください。　静謐な祈りに満ちた空間であった。

  2006.06.23

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• ルーヴル美術館（２）

  　ルーヴルは、元は宮殿として使われていた建物である。晩年のダ・ヴィンチのパトロンであったフランソワ１世、その息子のアンリ２世、その愛人ディアーヌ・ド・ポワチエ、アンリ２世の王妃がカトリーヌ・ド・メディシスであり、彼女の占い師がノストラダムスであった。　カトリーヌ・ド・メディシスは、新教徒の弾圧を行ったことでも有名だが、結局彼女の息子たちは早世し、新教徒出身のアンリ・ド・ナヴァルがアンリ４世として即位し、信教の自由を認めるナントの勅令を発し、血塗られた宗教戦争に一応の決着がはかられる---といった歴史をこの建物は持っているのである。

  2006.05.28

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• ルーヴル美術館

  　ダ・ヴィンチ・コードは、ルーヴル美術館の殺人が発端である。5年前にパリを訪れたとき、残念ながら火曜日で、ルーヴルは休館であった。今回映画の中で、美術館入口や、外観、ガラスのピラミッドやセーヌ川にかかる橋などの映像がふんだんに映り、懐かしさと入館できなかった無念さが交錯している。ちなみに、映画の撮影時の入場ゲートのポスターはカラバッジオ展であった。　なんとか時間を作り、再訪したいものである。

  2006.05.25

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• Foujita(3)

   　今日は、先日藤田嗣治展に行った際買い求めたポスターを額装してもらったものが出来てくる日である。Ｂ1サイズのものを買ったので、巨大な面積を占めることになり、どこに飾るか、思案投げ首というところである。　「こんな大きなモノを買って！」と、亭主の顰蹙をかったのだが、ポスターに使われた『カフェにて』は、フジタの代表作であるし、タイトルの『Foujita』のoとuのところに、『闘争』と題された画に描かれている猫が２匹躍動した姿そのままにアレンジされているシャレたもので、小さなポスターではその味が消えてしまうので、ぜひとも欲しかったものである。　まぁ、なるようになるさ、ケ・セラ・セラ、と極楽蜻蛉は考えている。

  2006.05.24

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