絵金祭り
昨日は、絵金蔵から思いがけずメールをいただいて、舞い上がってしまい自分の勝手な随想だけを書き連ねてしまって☆反省☆それゆえ、何がそんなに興奮すべきなのかじっくり説明させていただく。☆土佐の絵師、金蔵---略して「絵金」六尺ゆたかな大男で、藩の御用絵師を務めたほどの腕前だったが贋作事件に巻き込まれて、お役目を追われ十年ほどの行方不明の後、姉の嫁ぎさきである赤岡の町にふらりと現われ酒蔵をアトリエとして人々の求めに応じて、芝居のシーンを屏風絵に描いた。その絵は、凄惨な場面が多く生首や血飛沫が飛び、悪人が癖のある顔で見得を切り、人外のものが描かれる色も、赤・青・緑の原色を多用した強烈な個性の絵である。時は幕末期、坂本竜馬と同時代人である。☆最初に絵金の絵を見たときは、その絵の凄惨さに驚き「ええじゃないか」のような世紀末の行き所のない民衆のエネルギーが画面に飛び散る血飛沫に現われている時代の気分を具現した異能の画家絵金というイメージでした。☆ところが、今年の3月、高知を訪れて絵金蔵のことを知り、オリジナルが見られるというので、出かけて行ったところわたしの描いていた絵金のイメージに大幅な修正を要することとなりました。絵金の絵は、魔よけなのだという。高知では、魔が海から陸へ上がって来るという言い伝えがあるのだという。その禍々しい霊を,強烈な赤で照らし、追返すのだとそのために絵金の絵は赤いのだという。しかも、サーヴィス精神旺盛な絵金はそのころの一番の庶民の娯楽である芝居のハイライトを描いて上げたのだという。人々の関心の行方は、あだ討ち場面や、武運つたなく自害する悲劇の武将「お若ぇのおまちなせい」という、きめ台詞を吐く幡随院長兵衛葛の葉の子別れ、播州皿屋敷、良弁杉に巣食った鳶にさらわれる赤ん坊え、この話はどんなあらすじなの?どんな役者がどんな劇を演ずるの?道具立ては?衣装は?これらを体験できるように、絵金の屏風絵には、輻輳した時間が描かれている右から左へ、因果がわかるように、異なるエピソードが一枚の画面に収まるような構成がなされている。それを見て、人々は、遠い都会の芝居小屋に思いを馳せたのだという。だから、絵金の絵は宝物蔵の奥に大事にしまって、一年に二日だけ家の表に飾って、人々に自慢するのだ。それが、四国の陰陽師を束ねる芦田主馬太夫も住んでいたという地赤岡町の絵金祭りの起こりなのである。