奇想天を揺るがす:博物館ラ・スペコラ
今回の旅行で、何よりも行きたかったところは、ウフィツィではなくて、国立動物学博物館ラ・スペコラであった。幸いガイドさあんが美術に造詣の深い方で、「ラ・スペコラへ行きたいんですけど、予約なしで大丈夫でしょうか?」との我々の問いに、「うへぇ」という顔をしながら、「まぁ、あそこを積極的に訪れたいと言う人はあまりいないから(予約なんて取らなくても大丈夫)」と、それでも開館時刻を確認してくれたところ、なんと午後1時30分で閉館だと言う。 ウフィツィを先に見て次の自由時間にラ・スペコラに行こうとしていた我々の目論みははずれ、ドゥオモからツアーを離れ、ラ・スペコラに向かうことにした。 これはラ・スペコラが人気のない場所だからということばかりではなく、かのドナテルロのダヴィデのある国立バルジェイロ美術館も平日は13時30分で閉館していたので、イタリアではよくあることのようだ。 ピッティ宮殿を過ぎて、だんだん雰囲気が一般居住区域になってきて、本当にラ・スペコラがあるのだろうか、と不安になってきた我々の前に、「国立動物学博物館」という標識がでてきたので、その方向に進んで行くと、何の変哲もない建物に、ひっそりとまるで見つけてもらいたくないかのように、ラ・スペコラの看板が架かった建物が現れた。 木製のドアを開けると、そこは平土間のガレージスペースで、警備員さんがいるブースがあるきり。「Bongiorno,Signor」と挨拶をして、ラ・スペコラに行きたいというと、「2階だよ」とのご案内。古い石造りの階段をあがると、1階は、中庭と閲覧室とトイレで、ここには何人かの研究員らしい人たちがたむろしている。それを横目に見て、さらに一段階段をあがると、そこがラ・スペコラの入り口で、ひとり5ユーロ、ふたりで10ユーロを払って中に入る。 入って、歩を進めるにつれ、われわれの口から感嘆の声がとびだしていく。ここが、動物学博物館(Zoologikal Museum)といわれるのは、伊達ではなく、ありとあらゆる種類の動物が剥製標本となって展示されているのである。 小さくは昆虫から、大きくは犀やトドといった海獣まで、まるでこの世の動物をあまねく保存しようとの情熱を具現しようとしているかのようであった。 だれがこのセクションのコレクションを企て、実行していったのか、まさに奇想というべきものであろう。 そして、ラ・スペコラにはさらに有名な一大コレクションが存在するのである。