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カテゴリ:思い出(社会人・海外)
見積りという仕事がある。知らない人のために説明すると、自分たちの製品やサービスに値段をつけて、買い手に提示することである。スーパーなど一般消費者にモノを売るときと事なり、ビジネスとして会社同士がモノの売り買いをする場合は、売り手は必ず見積りを買い手に提示し、買い手がその値段を了承すると取引が成立する。 つまり売り手にとっては、モノが売れるかどうかが決まる大事な仕事だ。買い手が見積りした値段に納得できなかったり、相見積りと言って、いくつかの会社で見積りをして競合する場合は、値段が一番安かった会社に決まるのが基本である。
自分たちの製品はできる限り高く売りたいが、買い手が納得してくれる値段以上をつけると取引が成立しない。競合の中で最安値を付け、かつ買い手が納得し、そのうえで自分たちがきちんと利益を出せる値段をつけるのが見積りという仕事である。 見積りに失敗すると、売上げはゼロである。かといって安い値段を安易につけてしまうと製品は売れるのだが、利益が出ない。つまりは会社が赤字になってしまう。
そのため見積りという仕事をする人たちは、必死で社内で利益が出る値段を確保し、且つ買い手が買ってくれる値段を探っていつも頭を悩ませている。 特に他社と競合する場合に、自社の製品に自社だけがもつ何らかの付加価値がない場合、単純に値段だけの勝負になってしまうので、とても大変である。
逆に、自社でしかできない製品の見積もりは、競合する他社がいないので、買い手が納得する金額であればよいし、買い手がどうしても必要な製品であれば、かなり高い値段を提示しても取引は成立する。
よって見積りの成功率は自社の独自性、技術力によってかなり違いが出る。オリジナルの製品を作る力があったり、同じような製品なら他社よりも安く作れる技術力があれば、見積りはそれほど苦労しないで済むということだ。
お父さんは見積りの仕事をしていない。現場の製造コストを下げる取り組みや、他社が作れない製品を作れるようにする技術の仕事をしている。 よく見積りを担当している同僚から、このコストで何とか作れないかと言われるのだが、できない時はかなり厳しいことを言われる立場である。
逆に見積もり担当者は、売上げを出さなければならないので、現場の技術力が弱い場合は本当に苦労をする。安く見積りすれば社長からも現場からも非難を浴びるし、高くとろうとして失敗すれば同じく非難を浴びる。 上手に高値で取引を成立させたときの見積り担当は、とてもうれしそうだし、達成感もかなり高いようだが、お父さんの会社では大抵の場合は失敗して落ち込むことの方が多い。
これは見積り担当の力不足というよりは、製造現場の力不足が本来の原因であるので、お父さんも同じように責任を感じることになる。 独創性のあるオリジナル製品を開発することは、製造業を営む会社にとっては常に目指すところではあるのだが、成功している例は非常に少ない。それゆえに見積り担当者は常に悩んでいる。お父さんはその姿をよく見ているので、見積り担当にはなりたくないと思っている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.01.14 00:10:11
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