神棚の榊
お父さんは家を建てた時に神棚を作った。それまでは借家だったので神棚は無く、毎年参拝している神社のお札は、父親の家の神棚に置かせてもらっていた。小さな借家に5人暮らしだったので、簡易的な小さな神棚ですら置く場所がなかったからだ。 新築した家の神棚は少し大きめに作ったつもりだったが、いろいろと社やお札を置いてみるとすぐにいっぱいになった。その中でも結構幅を取るのが榊を活けている花瓶である。最初は神棚用の小さな白い花瓶を使っていたが、榊というのはかなり水を吸う植物であるようで、すぐに水が無くなり枯れてしまう。 そんなわけで大きな花瓶を購入して神棚に置いたのだが、今度はかなり場所を取るようになってしまっている。 毎月1日と15日に榊を取り換えているが、不思議と15日で榊はかなり枯れてしまう。水はきちんと入っているのだが、それだけではダメなようだ。調べると長持ちさせるには毎日水を変えると良いと書いてあったが、大きな花瓶を毎朝神棚から出して水交換をするのはかなり面倒なのでやる気がしない。 お父さんの会社のベトナム工場にも神棚があるのだが、ベトナムには榊がないのでレプリカの榊を飾っている。水交換も榊の取り換えもいらないのでとても便利ではある。ベトナムでは榊が手に入らないという正当な理由があるので、レプリカを飾ることに罪悪感もない。 何度か自宅の神棚もレプリカに変えてしまおうかと考えたのだが、何となくズルをしているような気がしていまだに生の榊を飾っている。 何とか理由付けをしてみようと思って、どうして神棚に榊を飾るのかを調べてみた。正当な理由は見つからなかったが、神の世界とこの世の境におくので「境の木」が「さかき」になり、漢字を創作して「榊」になったということが書いてあった。 また榊は一年中緑色の葉を茂らせる常緑樹で、つやつやした葉と葉の先端がとがっていることが特徴との事。確かにそのとおりである。昔から神聖な木とされていて、神棚では神棚に飾るのは、神様の依り代になるとも書いてあった。 やはり飾らないよりは榊は飾った方が良いようだ。 神社の神主に聞いたという話もあったが、神様は神棚に祀るだけでも良いことなので、榊がレプリカでも大きな問題ではないという。形式より心が大事であるようだ。ところが「そうはいっても」と思う気持ちがまだぬぐえていない。 まだしばらくは本物を飾ろうとは思う。冬は夏に比べるとまだまだ榊がもつので。夏になって榊の痛みが早くなった時にもう一度検討してみようと思う。