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じゅびあの徒然日記

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2006年12月10日
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カテゴリ:統合失調症
不謹慎な言い方かもしれないが、私は、統合失調症(シゾ)の患者さんたちの話を聞くのが好きだ。
うつ病ばやりの時代、「これからの精神科医は統合失調症をやってもダメだ」と言うエライ先生もいらっしゃるが、私は精神科医の一番基本の疾患は今でも統合失調症であり、統合失調症を診るのが嫌いな精神科医は、精神科医ではない、とまで思う。
ところが実際は、統合失調症を診るのが嫌いな精神科医はとても多い。

クロールプロマジンだけしかなかった時代に初期治療を受けて、慢性期に移行し、人格水準が下がってしまった患者さんたちが、半世紀近く経って帰るところもなく退院できないのは仕方ない。
この頃、というのはとにかくみんな入院させて、最後まで面倒を看ましょうと約束した時代。
自宅で座敷牢に入れる代わりを、病院が引き受けていた。
今さら自宅に帰そうとしても、家族にもうその心構え、準備がない。
ほとんどの身内が、高齢の兄弟姉妹、遠縁。
もう、その患者さんが入院していることが前提、の生活スタイルが完全に出来上がっている。
患者さんを帰れなくした犯人は、医療機関そのものだ。

だが、ハロペリドール、さらに非定型抗精神病薬(リスペリドン、オランザピン、クエチアピン以降)開発後に発症した患者さんも、どうせよくならない病気、とシゾ嫌いの医者自身が思っているのか、病棟に放り込んだらそれっきり。
きちんと薬を使えば、うつ病以上にコントロールしやすいと思うのに。

シゾの患者さんというのは基本的に嘘のつけない、善良な人々だ。
症状としての思考障害があるので、非常に嘘をつくのが、ついたところで隠し通すのが、難しい。
普段は無口で、症状が悪化すると突然粗暴性が出る可能性のある男性患者さんを先日診察していたときの会話。
「先生、そんなに動き回って大丈夫なの?」
「どうして?」
「先生、お腹に赤ちゃんいるんでしょ。」
「いないよ。これは全部、お腹についた脂肪!」
「えーっ、いるんでしょ。そんなこと言って。」
....どうしても信じてくれない。
私はしまいに診察室で自分のお腹をバンバン叩いて、
「ほら、これで信じた?」

....いったい何をしてるんだ自分。
「分かった分かった。妊娠してないんだ。」
「そうそう。」
「先生、顔は綺麗なんだから、痩せたら美人なのに。」
....言葉を失った。

思ったとしても、こういうことを本人の前で口にしてしまう、というところがシゾの思考障害、であることは確か。
でも私が妊娠しているというのは妄想なのか、いや傍目に見てそう思えてしまうのが自然なのか!?
私の顔が綺麗と思えてしまうこと自体が認知の歪みなのか!?
考えたら訳が分からなくなってきた。

妄想の世界は奥深い。
日本人の場合、自分は天皇だとか、皇室の血を引いている、という血統妄想のある患者さんはとても多い。
病棟で、「天皇陛下」同士が「おはようございます」と挨拶していることはよくある。
他には日本語しか喋れない「ナポレオン」とか、「火星人」を知っている。

採血や注射、点滴のたびに拒否して大騒ぎになる患者さんがいた。
自分の時だけではない。
他の患者さんがされているのを見ても、「病院は人殺しだ」と大騒ぎになる。
なかなか理解できなかったのだが、何度か診察するうちに、「彼の世界」が分かってきた。
人間には心臓があって、そのポンプ作用によって、全身の弾力性のある血管に血液が送り出され、また戻ってくる...という当たり前の概念が、彼にはなかった。
血液というのは、人体内で作られるから、減っても時間が経てば補充されるし、水分過多になれば、腎臓で漉されて尿となって排泄される、という概念もない。
彼にとっては、全身に血管と言う、硬い、閉じた細い入れ物がある。
その中を決められた一定量の血液が、充満している。
そんな中から血液を抜いたり、充満しているところに無理矢理注射や点滴で、液体を入れるとは!
彼の世界は、訂正不能。彼はその世界の中で彼なりのバランスをとって生きている。
彼の定期的な採血検査は中止し、必要時に最低限行うことにした。

不謹慎かもしれないが、聞いていて面白すぎる。
他人にはこんな世界もあるのだ、と自分のキャパが広がる。
一般人のちょっとやそっとの話では、驚かなくなる。

医学は、医療は、日々進歩し続けている。
あと10年もすれば、抗うつ薬は、もう2世代進化するだろう。
そうすると、うつ病で入院、はなくなる時代が必ずやってくる。
ストレスケア病棟の増床が叫ばれているが、そんなものはここ数年の風潮に過ぎないとまで思う。
安全で万人受けする抗うつ薬が出たら、うつ病は内科で治療するのが当然の時代になってしまう。
うつ病流行りの世の中で、こんなことをいうのは時代に逆行するかもしれないが、今、統合失調症の患者さんを大切にしない精神科医が、しっぺ返しを食う時が必ずやってくる。
統合失調症だけは、永遠に精神科領域だから。





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最終更新日  2006年12月10日 13時32分23秒
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