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じゅびあの徒然日記

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2007年11月12日
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カテゴリ:お薬の話
新しい病院で、まとまった数の入院患者さんを引き受けたのだが、処方の内容には驚いた。
こんなに「R」という薬の独り勝ちだとは、思わなかった。
もちろん、引き継いだ患者さんたちの、元主治医は一人ではない。
何人ものセンセイから引き継いでいるんだけど、ベースのほとんどは非定型と言われる、新しい世代の抗精神病薬。
「Z」や「A」も多いけれど、とにかく「R」が大半。
不穏時(落ち着かない時)薬もR液が自動的に使われていく感じ。
その「R」、前の病院では薬屋さんがえらいマメに売り込みに来ていたが、最近ジェネリックの採用病院が増えたせいか、急に来なくなった。

慢性期療養病棟でも、詰所カウンターに一日じゅう張り付いて大声で何か訴えている患者さんが多く、どことなくザワザワして感じる。
「R」が主流なせいだな、と私は感じた。
一日に何回も頓服のR液を取りに来ている人もいて、カルテ上サマリーには「頓服でよくコントロールされており...」なんて書いてあったりする。
私に言わせれば、「頓服使用量が多い」ということは患者さんが苦しいのだし、「定期処方の再考を要す」なんだけれど。

頓服薬頼みの処方というのはダメだ、と思っている。
結局一日のトータル薬剤量が把握できない。
その患者さんの症状が急に動いたとき、何によるものか、何を調整したらいいのか分からなくなり、頓服の回数で調整することになってしまう。
だいたい不穏時薬を毎日のんでいる患者さんは、毎日不穏ということだ。

4~5年前、Rを売る製薬会社の、大学へのゴルフ接待は凄かった(私は全くゴルフをしないので、もちろん無縁だった)。
その名残なのか。
でも、バカ売れしてジェネリックが採用されれば、それまでだったりして。

転勤して1ヶ月、とにかく処方調整や不穏時指示の書き換えに追われた。
引き継いだ患者さんのうち、半数くらいがやっとコントロール下に入った感じで、楽になってきた。

私よりだいぶ若い世代だが、中堅に入る先生が若手の先生に話しているのを耳にしてショック。
「ハロペリドール?そんなものは一昔前の薬だね。今はRといういい薬があるんだから、それから使っていくのが現代の精神科医としては当然じゃないかな。ハロペリドールなんて、非定型を全部使って、どれもダメな時にしょうがなく使う薬だね。」

今の若い先生たちにとって、ハロペリドールは副作用の強い、怖い薬でしかないらしい。
一番、余分な作用のない、副作用もデータが揃って知り尽くされた、シンプルで使いやすい薬なのに。

私は、Rのよさも、Zの副作用を逆手にとった治療も、Sのナチュラルさも、ある種の患者さんに対するLという薬の有用性も分かっているつもり。
A...だけは、新しすぎてまだまだ分からない部分が多い(実際現場の精神科医にも、よく分からず試しに使っている人は多いんじゃないか)。
でも、非定型薬というのはAを除いて、ハロペリドールやクロールプロマジンから派生したもの、使い方はそれらの応用なのだ。
ハロペリドールやクロールプロマジンなどの定型薬の使い方を知らなくて、非定型薬の使い方は知っている、ということがありうるのだろうか。

非定型薬の良さはやはり副作用の少なさにあるから、副作用が強いといわれる他の薬とチャンポン(寝る前に睡眠薬代わりに定型薬を加えるのを除く)することも、原則あってはならないと思っている。
また、非定型薬中心の処方なのに、副作用止めをてんこ盛り、ではどっちをのませたいのか分からない。

私なんぞに薬のことなどをよく尋ねてくれるお若い先生がいるのだが、先日こうおっしゃってくれた。
「先生に教わったのを参考に処方を変えたら、患者さんが別人のように穏やかな表情になって、カウンターに張りつかなくなったんですよ!すごい、全然一昔前の薬ではないです。今までRを使って落ち着いている、と引き継いできたので処方を変えにくかったし、薬ってこんなもんなんだと思っていました。Rの液は、何回使っても効いてなかったんですよ。」

抗精神病薬には、ものすごい種類がある。
中にはもちろん、流行りものみたいに消えていった薬もあるけれど、今でも使える薬が何種類もある。
その使い方を知っていれば、治療の幅はぐっと広がる。
大学もそういう教育をしているとなると、10年先の先生たちは、非定型薬しか使えなくなってしまうんじゃないだろうか、と危惧せざるを得ない。





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最終更新日  2007年11月12日 22時31分09秒
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