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じゅびあの徒然日記

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2008年06月09日
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カテゴリ:認知症
当然のことながら、認知症が増えている。
私がここ1ヶ月に入院でとった新患はなんとほとんどが認知症、70代後半から80代後半。
私一人で病棟患者さんの平均年齢を押し上げている。

確かに精神科の病院でも認知症を扱うが、こと「入院」の場合、物忘れがひどいから、と言う理由でのお引き受けはしない。
入院治療で物忘れが進行することはあっても、よくなることはないから、物忘れを理由にした入院に、退院はない。
つまり、生涯(もしくは身体の病気が出て転院するまで)入院、という結果になってしまうのだ。
基本的に認知症の患者さんを入院でお引き受けする場合は、せん妄を代表とする何らかの精神症状、特に幻視や幻聴、著しい被害妄想などだけを一時的に入院によってコントロールするというのが目的だ。
そのへんは、入院時に連れてきた家族、施設入所者の場合には同伴してくることがある施設スタッフに、説明の上でお引き受けしている。

また、今まで全く投薬を受けてない、未治療の高齢者の場合、少量の抗精神病薬やチアプリドの投与により、数日~1週間でこれらの症状をコントロールできることも多い。
統合失調症の幻覚妄想と似ていても、治療的には大きく異なり、ほとんどのケースが単純明快なのだ。
だから、本人が服薬を渋り(降圧剤などの内科薬を既に服用している患者さんなら、説明の仕方を誤らなければ、「お医者さんの出した薬はのまなければ」と思ってくれることが多い)、家族や施設が内服させられない場合を除いては、かなりの患者さんが数日待ってさえもらえれば、外来通院で何とかなってしまうのだ。

「まずこの薬を1週間のませてみてください。それで無理なら、入院を検討します」と説明するのだが、それでは納得しないという家族(もしくは施設)も多い。
「渋るのをやっと連れてきたのに」「暴言があって困る」「今だって静かにしているが、待合室ではずっと家族の足を蹴っていた」などなど...。
「じゃあ今夜この薬をのませれば必ず静かになるんだな。ならなかったら警察を呼んで、お前の名前を出してやる。何か起こしたら、お前の責任だからな。お前は何て名前の医者だ」と寄ってたかってすごむ家族までいる。
これは、相手が私でなくても、入院を頼む家族としては得策ではないように思うが。

家族が暴力を受けたり、服薬をさせられなかったりする(これがまた難しい。家族がはなから服薬をさせようと努力するつもりがない、もしくはそこまでビビってしまっていることが多いのだ)場合はやむをえず最初から入院で引き受ける。
ところが、入院させるとたいてい素直に服薬に応じてくれるし、病棟スタッフも対応に慣れているのでその結果、症状のピークは2~3日で治まってしまうのだ。
「2~3日でよくなりましたから退院」と言っても家族が受け入れがたいことは分かっているので、一応、1週間くらいは様子を見て、問題行動がないことを確認してから家族にまずは外泊などの連絡をする。
施設などの在籍期限がある場合は、いきなり退院を勧めることもある。

ところが、家族や施設は、そんな短期間で病状が治まるとは、到底信じられないらしい。
もちろん、服薬をしてもらって、が条件であるから、退院後も家族なり施設なりが本気で内服薬の管理をしてくれることが退院の必須条件である。
「主治医がいる時に面談してから」と先延ばしにして、主治医がいる時には来院しないようにする家族もいれば、家族経由で退院の話を伝えた途端、「とんでもない」と施設スタッフが怒鳴り込んでくるケースもある。
施設スタッフの場合はたいてい、患者さんの落ち着いている様子を見て、主治医には何も言えずに帰って行くのだが。
施設の場合は、営業的に「そんなにすぐに帰ってくるはずがない」と空き部屋を他のショートステイメンバーで埋めてしまっていることもあるのだ。

今朝も、日用品を運んできた家族が、主治医在院を知っていながら逃げるように帰ってしまった。
私に情け容赦はないので、追いかけてじかに電話をかける。
病院名と名前だけを名乗ると、私が女だからか、家族は看護師と勘違いして「先日お話したように、先生と面談してから」などと言い出すので、これ幸いと「なのでお電話を直接差し上げました。外泊は本人の希望ではなく、治療的意味合いがあり、私からの指示です。治療にご協力いただけなくては困ります。」と強く出る。
認知症の患者さんの場合、あまり長く病院にだけ置いて慣れてしまうと、子どもと同居し始めて間もない自分の家の中を忘れてしまう可能性だってある。

最近は「性格の先鋭化」のような状態で「面倒をみきれない」と連れてくる家族や施設も多く、「もともとそういう人だったでしょ」とこちらが言いたくなることも多い。
介護保険もどんどん切り詰められ、グループホームや特養も営利的に厳しいのだろう、ここ半年ほど目立って面倒見が悪くなってきている。
88歳のおばあちゃんが、「もともと元気だったのに家でひきこもって何もしません。家族が身の回りのことをみんなしなくてはなりません」って、「もういいじゃないの。これ以上何をさせたいの?」と言い返したくなる。

どんどん、高齢者が住みにくい、行き場のない社会になっていると、痛切に感じる。





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最終更新日  2008年06月09日 21時51分36秒
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