第10話 恋の蘇生法
「いや、それは無理だ」彼は、そう言うとベッドから起き上がった。「それぐらい、叶えてくれてもいいじゃん!」私は最後のお願いに食い下がった。「無理だよ。嫌がる女を無理矢理抱いた上、今度はその気もない女にキスしろってか?!そこまでオレをロクデナシに貶めたいか?」それもそうだけど・・・・・・。「私、かずぼんのことが好きで、今にも死にそうなんだ。だから、心肺蘇生法のつもりでさ、・・・してくんないかな?キス・・・」私は彼のベッドにコロンと横になると、「私のこと、レサシ・アン(心肺蘇生法訓練の人形)だと思ってさ」と、言って目を瞑った。「おーい。リョーコさん、頭大丈夫ですかぁ?!」彼はそう言いながら、私の頭をノックすると、鼻を思いっきり強くつまんで、「この仮病クランケには気道確保の必要すらあっりませーん!」と、笑った。「ひっどーい!けち!いいじゃん、キスくらい!」私は心底自分のものにならない彼にむかついていた。そんな私の心を見透かすように、彼は気まずそうに苦笑いした。「お前とはさ、何年経っても笑って会える同級生でいたいよ。だからさ、オレに手を出させないでくれよ」彼は机の上のバッグを肩に掛けると、「ファーストキスくらい、いつか出会う両想いのやつとしろよ」と言って部屋を出た。何もかもお見通しなんだ・・・。プライドも何もかも捨てて、子供っぽいキスのねだり方をした。だけど、私の精一杯で頑張ったんだ。もういいや!自分の恋くらい自分で蘇生してみせる。私は机の上にある高校の卒業式の集合写真の中で微笑む彼に、「いい女、ゲットし損ねたんだぞ!タァーコ!!」と呟くと、そっとキスをした。