【書籍感想】風牙
書籍の感想です。今回は「風牙」です。風牙 (創元日本SF叢書) [ 門田充宏 ]この小説は3つの話で構成されていて、その1話目が風牙というタイトルになっています。風牙というのは犬の名前でその犬は重要なキーパーソン(キードッグ?)なのですが、主人公は珊瑚という名前の女の子です。近未来を舞台としたSF小説なのですが、まず前提として人の気持ちを分かりすぎてしまうという症例が報告されている世界、というのがあります。人の気持ちがわからない、分かろうとしないということはままあるわけで、人の気持ちがわかる人、というの人の機微を察することができる人ということなので、気が利く人、やさしい人みたいな人なわけですが、人間誰だって人の知られたくない感情の一つや二つはあるわけで、それも含めて知られてしまうとしたらどうでしょう?妖怪の「さとり」が人々から恐れられるように、世の中から恐れられる存在となっていくわけです。この「人の気持ちが分かりすぎてしまう」ことをHSPと呼び、5段階で分けています。主人公の珊瑚はその最高レベルであるレベル5のため、そのままでは日常生活ができない状態でした。なにしろ、周りの人の気持ちが自分の中に入ってきて、自分と他の人との区分けができない、つまり自我が確立できない、という状態になってしまうわけです。そんな彼女を救い出してくれたのが「不二」でHSPを意味のある有益な才能としてその能力を生かした会社を設立し、その社員として珊瑚を迎え入れるのです。世界観だけでもとても面白いですね。その能力を生かして、人の記憶、思い出の中に入って問題を解決していく、という感じの物語です。新鮮でとても面白かったです。