【書籍感想】魔導の福音
書籍の感想です。今回は「魔導の福音」です。魔導の福音 (創元推理文庫) [ 佐藤さくら ]魔導の系譜の続編です。魔道士の身分が極端に低いラバルタで兵器のように扱われていたわけですが、その隣国であるエルミーヌではさらに忌避感が強いです。魔力を有する者は魔物棲みとして早々に神の元へ送るのが正しいと疑うことも知らないのです。神の元へ、なんて綺麗な言い方をしているけど、要は人殺しです。魔法使いが好きな私としてはなかなか辛い世界観ですが実際魔法があったらこういう反応はありそう。人って自分と違うものを排除しようとするもんね〜その上、その少数派に力があるとなれば権力者にとっても危険な存在です。今の統治構造を崩しかねない存在なんていなくて良いし、守る必要もないのです。そんな国で家族に魔物棲みが出てしまったカレンスのお話です。カレンスもこの国の常識に囚われていて魔物棲みの妹、リーンベルのことを迷惑だと思っているし、親友だと思っていたサイも実は魔物棲みだったという事実に悩むことになるのです。前巻の主役だったレオンとゼクスは巻き込まれる形でこの国の騒動に関わることになるのですが、ラバルタからの魔導の技術供与などもあり、少しだけ世界は変わり始めます。もちろん、世間の忌避感はそんなに簡単には変わらないと思いますが、存在すら認識されていなかった時よりは前進したと言えるでしょう。リーンベルは兄のカレンスの事も未だに憎しみしか感じられません。しかし、サイ、そして、カレンスの友、アニエスが側にいることで、リーンベルの心も少しだけ溶けた気がします。カレンス、サイ、リーンベルにとって魔導が福音となりますように。