達磨大師の仏性論に次のような言葉がある。
「故に至人は、その前を謀(はか)らず、その後ろを慮(おもんばか)らず、念念道に帰す」
森田先生はこの言葉を次のように説明されている。
至人、すなわち達人で悟った人は、金をなくしたとかいって、以前のことの繰り言をいったり、「来年のことをいうと鬼が笑う」というように、当てにもならぬ未来のことを空想するようなことをしない。
ただ念念道に帰して、そのときどきの現在に対して、全力を尽くすというくらいのことであろうと思うのである。(森田全集 第5巻 385ページ)
私たちの心の中は、絶えず過去のことを後悔し、これから先のことを取り越し苦労しています。
望月俊孝氏はこの2つでエネルギーの90%を奪われていると言われている。
「今、ここ」に集中している時間はせいぜい10%程度だと言われているのです。
(自分が変わる本 フォレスト出版 101ページ)
集中しなければならないときに、他のことに気を取られてしまうと、心がついうわの空になってしまいやすいということです。
特にネガティブな過去の出来事や将来の予期不安がでてきてお節介を焼くのです。
潜在意識の中には行動に待ったをかけるネガティブでマイナスの記憶がいっぱい詰まっています。
うわの空で行動すると集中できないので出鱈目になってしまいます。
「今、ここに」注意や意識を持ってくる方法としてはマインドフルネスがあります。
そのなかに、「食べる瞑想」というものがあります。
例えば、おにぎり一つを、五感をフルに使って感じながら、30分ほどの時間をかけて食べるといった方法です。
まず心を落ち着け、おにぎりをじっくり観察します。
おにぎりの形や一粒のお米の色つやをよく見たり、匂いを嗅いだり、手にもったときの重さや温度、手触りを感じたり、それから一口ずつ、ゆっくりと味わって食べます。
十分に噛んでから飲み込み、口にしたおにぎりが胃に落ち着き、少し重みを感じる様子まで感じ取ろうとします。
(願望実現脳は1分でつくれる 山富浩司 大和出版 214ページ)
これを山富浩司氏は、「3段食べ」と呼んでおられます。
まず、食べる前。食事を見て、「おいしそう」と思います。
次に、食事の最中、食事に集中して味わい、「おいしい」と食べます。テレビを見ながらといった「ながら食べ」はしません。
食事を楽しむことだけに集中します。
最後に、食べ終わってから、「おいしかった」と食事の余韻を味わいます。
こうして食べると、一度の食事で「食べる前」「食べている最中」「食べた後」の3回も感動できます。感動を覚えたとき、脳内ではドーパミンというホルモンが出ることが分かっています。
ドーパミンが出やすくなると、小さなことにも喜びや幸せを感じられる「幸せ体質」なっていきます。そこが重要なのです。
その他、山富浩二氏は、「今 ここに」に集中するために、マインドフルネスタッピングを指導しておられます。
これは比較的取り組みやすいので毎日のルーティンに取り入れています。