オトコは黙って、ストラトキャスター
ストラトキャスター・・・ナンと言うかっこいいネーミング。何人の男子が熱病にうなされたことだろう?わたしは鍵盤弾きだが、”ストラト”と聞くだけで、少々血流が良くなるような気がする。持っていようがいまいが、「ストラトなんか嫌いじゃ」というギター弾きを知らない。一人興奮して、ご存知ない方に申し訳ないが、あるエレキギターの商標名である。知り合いのストラト・・・1954年、レオ・フェンダーは名器:テレキャスターの後継となるエレキギターを模索していた。すでに、技術的な面、つまりエレキギターの基本的なスペックの担保は、テレキャスターで養っていた。問題は、生産性だった。ギターは木工芸品の側面を持つ。エレキギターといえども、木工技術に依存する点が少なくない。しかもエレキギターは、同時に”電化製品”の一面がある。木工技術(楽器として)が優れていても、音を電気的に増幅したり、制御する技術に乏しい場合、失敗作となりかねない。しかし、一本一本職人が手塩にかけて作り上げれば、単価の高騰が予想されるのは、自明の理である。エレキギターという一種のマニアックな製品と言えども、低コストで大量に製作でき、同時に高度な性能が要求される時代をレオ・フェンダーは予見していたわけだ。大きな特徴は、まずボディーとネックを別あつらえできるように設計していることだろう。ボルトで固定している。これはまさに、テレキャスターの”大量生産性”の良さを継承している。高級感という観点からすれば、いささかディスアドバンテージとも言える。しかし、このおかげで後に「xxxxさんの使用していたネック!」なるレアな商材が二次流通する起因にもなっている。次に注目すべきは異常に大きなピックガードだろう。デザイン的にも重要な”この部分”がストラトキャスターの成功の一因である。このピックガードをはがすと、ピックアップ、ボリューム、トーン・コントロールなどの”配線関連”がお目見えする。つまりユニット化されているわけだ。上記の工夫によって、ボディ・ネック・配線関連を別工程で製造し、”ポン付け”で楽器を大量生産できる構造を成立している。弦の振動を拾うピックアップの配置も妙だ。リア・センター・フロンにトシングルコイルを三つ搭載している。それぞれを有効にするかいなかを制御するスイッチがついている。マスター・ヴォリュームで全体的な音量を調整する。センターとフロントのピックアップに音の高低を調整するツマミがあるものの、リアのピックアップにはなぜか、ない。これらの簡単といえばオシマイの調節機能によって、その後様々なギター弾きが様々な”サウンド”を生成する。そして、大胆不敵なトレモロ・アームが設置されている。ストラトキャスターは、弦とボディーの接点である金具(ブリッジ)を固定するのではなく、可動式にした。弦のテンションは、ボディ裏のスプリングとでバランスをとるようになっている。そのブリッジにアーム(棒のようなもの)が付いていて、アームを操作することにより、弦のテンションが変えられる、つまり”音程”が変えられるようにした。トレモロ・アームが初モノであったわけではないが、ストラトキャスターのそれは既存のトレモロ・アームと比べ物にならない程優れていて、その後様々なギター弾きが様々な”芸風”を披露することとなる。ストラトを定番ギターにしたのは、恐らくジミ・ヘンドリックだろう。「ストラト+マーシャルアンプ」で、爆音系音楽が可能であることを世間に知らしめた。特にトレモロ・アームの機能をふんだんに利用した”曲芸的”とも言えるプレイスタイルに、見る者はあ然とした。そもそも、レオ・フェンダー氏ご自慢のトレモロ・アームは、”ハワイアンミュージック”のビブラート用に採用された機能だった。設計者のレオ・フェンダーは「なんちゅう使い方をしとるんじゃー!」と、少々ご立腹だったらしい。