「夫の宿題」
故・遠藤周作夫人、遠藤順子さんの講演を聞く。「日本人の心に届くキリスト」日本人の心に届く「キリスト教」ではない。キリストは、すなわち、キリストの愛、である。『沈黙』は、私にとっては、最初に読んだときには、神様のことも神様の沈黙の意味もわからなかった。発行当時には、「禁書」であった。やはり、「わからない」信者さん、「わからない」教会がたくさんあったということだ。「隠れキリシタン」の子孫たちは、現代でも「転びもの」として同じクリスチャンからも低く見られている現実があるというのも初めて知った。キリスト教が日本に伝わったとき、仏教伝来からは、すでに1000年経っていた。仏教は、信仰だけでなく文化としてもすでに、10世紀のときを経て、花開いていた。それから500年近くが経ち、今、クリスチャンは、人口の1%。決して、多くはないと思う。そのうち、42%がカトリックで58%は、プロテスタントだという。神の愛を伝えるためにまだ見ぬ世界へと派遣される伝道師たちは、勇敢であり、信仰の篤さに圧倒される。「ザビエルの東洋の人間たちに白人の神の教えを広めてやる、という上から下へという姿勢は間違っていたと思います。私は、好きじゃありません。」カトリックの高校での講演、シスターである校長先生の前で小気味良いほどにずばりとおっしゃる。ご著書「夫の宿題」にあるように「死は終わりではない」というメッセージを伝えること、「心温かな医療」を確立させること、そして、この「日本人の心に届くキリスト」を伝えていくことで忙しく、ひとりになったことを悲しんでいる暇はない、とおっしゃっていた。溌剌として、凛とした姿、美しい日本語の使い手でもあり、本当に素敵な方だった。ご主人と天国で再会されたときにあわせる顔がないのでは困るとおっしゃっていたが、精力的な活躍ぶりに、ご主人もしばらくは奥様にこの世でがんばって欲しいと声援を送っていらっしゃるのではないかと思った。