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  ここまできたか…

  　都内に住む友人の娘さんは小学六年生です。二学期が始まったときのこと。担任の先生が，クラスのみんなにクリアファイルを配りました。　たくさんの色を使ったきれいなファイル。「世界の消費税（付加価値税）138ヶ国」の表題がついていました。138ヶ国の税率の一覧。主な15ヶ国の税率を比べた棒グラフ。税率で色分けした世界地図。　グラフでいちばん税率の低い国はほかでもない，5％の日本です。　「消費税　活かすみんなの　間税会」の標語。　“日本の消費税は低い。上がっても仕方ない”と思わせたいのでしょうか。　「全国間税会総連合会　平成19年9月」と記し，ファイルはつくりたてのほやほやらしい。間税とは，間接税の略です。負担する人と納める人が違う税金が間接税。消費税も，負担は買い物をする私たち，納税は店などの業者です。　調べてみると，間税会は納税者の企業の団体でした。　さらなる増税をおりこみ，消費税の「定着」へ税の教育を求めます。「消費税を含めた税の必要性，重要性を若年期から理解させるために，学校教育のなかでの租税教育を重視し，文部科学省等とも連携をとりながら積極的に推進すべきである」（ホームページ「税制に関する提言」）。　やはり民間の「消費税をなくす会」がクリアファイルをつくっても，学校で配れるのでしょうか。　食品などにもかかる日本の消費税の負担は軽くない，日本の大企業の税・社会保障負担は軽い…というような。↑このやり方に『悪意』を感じるのは私だけでしょうか，宜しければ応援クリックをお願いします。

  2007年11月12日

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  ティッシュ配りにおもう

  　最寄り駅の前で配られるティッシュやチラシに，時の移り変わりをみます。昼。サラ金や電話交際の誘いがめだつ時期もありましたが，いまは美容院が断然の多い。　町のあちこちに横文字の名前のおしゃれな店ができ，競争が激しいようです。働いているのは，若い人たち。女性主人とお弟子さんが家族のような雰囲気でお客様を迎える，かつての「パーマ屋」とはずいぶんとようすが違います。　「スーパー美容師」とか「カリスマ美容師」と呼ばれる人もいます。若くても年収1,000万円を優に超えるような売れっ子です。　しかし，「美容業界で働く若い正社員の美容師のほとんどがワーキングプアと呼ぶにふさわしい賃金水準の下で長時間の無法な労働条件で働かされている」といいます。　いま引いたのは，「首都圏美容師ユニオン」結成を宣言した呼びかけです。　ユニオンは先月10月末に産声をあげました。いまや企業化した業界。ユニオン代表の柳勝也さんが勤める美容室も82店舗もち，会社は財界団体の日本経団連に入っています。　ところが，です。「午前8時から夜の12時近くまでの勤務」，「美容師に1ヶ月以上，午前10時から午後11時過ぎまで30分間の休憩のみでチラシ配布を指示」，「大量の未払い残業代」。使い道が不明な，「教育代」などの天引きも…。　終電に間に合わず，店の床で眠る若者の，夢を砕いています。　美容院にお世話になることはないけれど，嫌な顔せずチラシを受け取ろう，と思います。↑お手数ですが，宜しければ応援クリックをお願いします。

  2007年11月11日

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  真相に迫る力作

  　「グリコ・森永事件」といえば戦後の迷宮入りした事件でも比較的記憶に新しい。といっても，発生から20年以上が経ち，一連の事件はすべてが時効が過ぎています。　「グリコ・森永事件『最終報告』真犯人」（森下香枝著 / 朝日新聞社）は，事件の一端を知るものも，知らないものも最後まで読みきらせる力作です。　犯人像は？犯人グループの動機は？多くの脅迫状と現金強奪を狙った際犯人たちが残した多くの「ブツ」，防犯ビデオの「キツネ目の男」の正体は？そして事件の真相は？･･･。　犯人検挙の最後のチャンスとなった滋賀県の名神高速道路栗東インター周辺での捕物劇。その逃走ルートをたどる取材をした記憶が甦ります。細い道，直角に曲がる道，ガードレールもなくハンドル操作を誤れば用水路か田んぼに転落…。　本書は膨大な捜査資料の解析と関係者への取材を通じ，改めて事件の構造を明らかにしてくれます。新事実も多く含まれ，銀行強奪事件との接点が最大のミソ。残念なことに「真犯人」は既に故人…。　それにしても，犯人グループの一員を検挙できる機会が，二度，三度とあったのに取り逃がした兵庫，大阪，京都，滋賀などの各府県警の縄張り主義，連携の悪さにはいまさらながら呆れるばかりです。↑無責任なくせに，縄張り意識だけは一人前の官僚組織が迷宮入りさせたのかもしれません。

  2007年11月10日

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  “ツケ”は国民自身に還ってくる

  　郵政分割・民営化のスタートから1ヶ月あまり。聞こえてくるのは歓迎ではなく，サービスの低下や後退に対する憤りの声ばかりです。　「チョットおかしい郵貯銀行」とのメール。定額小為替の手数料が大幅値上げされたことに関するものです。　遠方の自治体に戸籍を請求したところ，小為替で支払を求められ，郵便局で750円の小為替を請求すると，300円の手数料を取られた…。　少額の送金に便利な定額小為替。　民営化前まで手数料は証書1枚あたり10円でしたが，それが100円と一気に10倍もアップ。50円，100円，200円，300円，400円，500円，1,000円の7種類を組み合わせるもので，750円を送る場合は3枚必要になり，手数料は300円というわけです。　郵便局の窓口で値上げの理由を尋ねても「民営化されたので…」と納得のいく説明は返ってきませんでした。　まさに郵政民営化は「百害あって一利なし」。　小泉純一郎首相に，国民が騙され，煽られた前の衆議院選挙の“ツケ”が国民自身に還ってきているのです。そのうえ，取り返しがつかない民営化で国民はこの先もずっとその“ツケ”を払うことになりました。　国民の1票が国民自身に還ってくる選挙の恐ろしさを，政治の現実を国民自身がよく知るべきです。↑郵政民営化で何かいいことがあったら教えてください。

  2007年11月09日

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  いまに続く証拠隠し

  　情報は消されていた…。　薬害肝炎に感染させられていた418人の情報を，本人に知らせず地下倉庫にしまい込んでいた厚生労働省。実は，うち274人分を捨てていました。　担当局長は以前，「写しが残っている」と言っていました。しかし，野党議員が確かめると，原本も写しも「残っていない」。　一体どういう感覚なのでしょう。患者一人ひとりにとっては「命の記録」なのに…。　防衛省も資料を捨てます。　補給艦「とわだ」の航海日誌を，きちんと残していません。補給艦「とわだ」は，アメリカ率いる「不朽の自由」作戦に加わり，インド洋での給油などに携わった船です。肝心な時期の記録を処分したそうです。　こう相次ぐと，第二次世界大戦が終わったことまで遡って考えてしまいます。　敗戦が決まると陸軍省や海軍省は，日本軍の書類を焼却するように指示しました。「天皇の手によって書かれた書類を集め，…崇拝の念をもって焼却せよ」，「機密文書と重要書類は，持っている者が焼却せよ」。　いずれも，陸軍です。戦争責任の追及をおそれての証拠隠しで，日本軍「慰安婦」にかかわる記録も焼きました。「慰安婦」にさせられた女性たちにとっては，やはり「命の記録」だったはずなのに…。　戦争中の記録を焼き捨てたのは，日本だけではありません。しかし，いまに続く記録隠しに，日本の権力の過去を引きずる様が重なって見えてきます。　罪の意識をもたない，反省しない，責任をとらない…。↑お手数ですが，宜しければクリックをお願いします。

  2007年11月08日

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  ノーベル文学賞のふたり

  　2006年のノーベル文学賞受賞講演を収録した，オルハン・パムク著『父のトランク』（藤原書店）が刊行されました。オルハン・パムク氏は1952年，イスタンブール生まれ。トルコの作家の初受賞です。　「全ての真の文学は，人々が互いに類似していることに対する子どもっぽい，楽観的な信頼に基づきます」　「小説という芸術の歴史は，人間開放の歴史です」　文学論として示唆に富む本書。若い人への助言を求められ，「手を良心の上に置いて，書きなさい」と答える作家の思索がつまっています。　一方，2005年のノーベル文学賞受賞講演や論文が収めたハロルド・ピンター著『何も起こりはしなかった』（集英社）は辛口です。　イギリスの劇作家である著者は，受賞講演でアメリカのイラク侵攻を痛烈に批判。　「言葉」と「真実」について鋭い問題提起をおこないました。　同書収録のインタビューではこう語ります。　「たいていの政治体制は恐ろしく曖昧な言葉遣いをします。だから，さまざまな国の市民として，そういう言葉遣いを厳しく吟味することは，私たちの責任であり，義務であるのです」。　編訳者（喜志哲雄）によると，「自ら社会主義者と呼んでいる」というハロルド・ピンター氏。　“世界水準”の文学者が良心に従い歯切れよく語る言葉が説得的で痛快です。日本にも，こうした硬派の作家が増えてこないものか考えてしまいました。↑宜しければ，読んでみることをお薦めします。

  2007年11月07日

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  ヤミの深さを感じる証人喚問

  　守屋武昌前防衛事務次官の証人喚問を見ました。防衛関連企業と「癒着と見られる事実を起こした」と釈明するものの，その証言には空恐ろしいささえ感じました。　前次官が軍需専門商社「山田洋行」元専務とのゴルフ接待は「多いときで月4回」といい，十数年前から数えると「200回を超えている」と証言しました。その上，「半分以上は夫婦で」行き，偽名でプレーしていたことも認め，数年前にゴルフセットをもらったなどなど。　こんな人物が防衛省（旧防衛庁）の中枢にいたこと自体が驚きです。　言いよどむ場面もありました。「山田洋行」元専務との宴会の席に同席したほかの政治家を問われた時です。　民主党の議員の質問に政治家の存在を認めましたが「名前は言えない」と前次官。さらに日本共産党の議員が，同席した「政治家は一人か複数か」と追及すると，「複数だった」と。　前次官は，いろんな政治家がいる席に元専務が行ったこともあると証言。さらに日本共産党の議員が「防衛庁長官経験者か」と質問すると「おられたと思う」。日本共産党議員の質問で，問題の政治家が防衛庁長官経験者で，昨年か一昨年に元専務どの宴会の席に同席したことが明らかになりました。　年間5兆円にものぼる軍事費。国民の税金が湯水のように使われている裏で，省庁のトップまでかかわる接待の実態があろうとは。政治家の名前は「迷惑をかけるので差し控えたい」と前次官は言いますが，そういう次元の問題ではありません。　ヤミの深さを示した証人喚問でした。↑このように無駄な軍事費をなくさないで，消費税増税というのはやめて欲しい。

  2007年11月06日

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  国連報告書の警告

  　『波』（新潮社）に連載されている「猫の目草」は時事問題に鋭い指摘をすることで共感する人も多い。今年の5月号では日高敏隆氏が「国連IPCCの報告書」と題して地球温暖化現象を取り上げていました。　横文字のIPCCとは，「気候変動に関する政府間パネル」の略で，国連環境計画と世界気象機関が共同して，1988年に設立した会議である。そこで二酸化炭素を減らそうとする京都議定書が提案され，多くの国々がこの，この京都議定書を批准した。　しかし，もっとも二酸化炭素を排出する大国が，依然として批准していない。　石油時代といわれる今日である。二酸化炭素を出さないように，石油の消費を減らせば，経済活動は影響を受ける。このような議論をしている間にも，温暖化は「着実に進んでいる」。　極地や高山の氷河が解けて「水没する国も出てくるだろう」といわれてきた。その問題も「いよいよ確実になってきている」。　玉蜀黍（トウモロコシ）やジャガイモからエネルギーを「作ろうという試みも始まっている」が，そのために，食料としての玉蜀黍やジャガイモが「手に入りにくくなってくることはない」か。　このように「問題は次から次へと生じてくる」。　人間が自らひき起こした地球温暖化という事態を，世界の人々と一緒になって解決しなければならないことを，いまさらのように痛感する今日この頃である。↑お手数ですが，宜しければクリックをお願います。

  2007年11月05日

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  夢をしぼませる話

  　「え？ここで代える？」先日のプロ野球日本シリーズの最終戦。テレビを見ながら，つい独り言を言っていました。　8回まで日本ハムの打者24人の1人も塁に出さずにうちとってきた山井投手をひっこめ，抑えの切り札・岩瀬投手へ。勝負にとことんこだわった中日ドラゴンズ・落合監督の決断です。　優勝した中日ドラゴンズにとっては，「結果よければすべてよし」でした。　しかし，広くプロ野球の歴史や野球ファン全体にとってはどうだったのでしょう。日本シリーズでの完全試合という空前の記録達成と，その瞬間を目の当たりにする夢がしぼんでいきました。　中日ドラゴンズファンからも，惜しむ声が聞かれます。　さて，その試合の翌日も「え？ここで？」と驚かされました。福田康夫首相と民主党・小沢一郎代表の「大連立」めざす密室会談です。その3日前，1回目の会談後に福田康夫首相が言いました。　「（自民党・民主党協力は）損得っていうことでやるんですか？…国のため国民のためですよ」。　損得といえば，選挙での勝負もすぐ浮かびます。両党の協力は勝負にこだわる落合流ではない，という話です。しかし，「国のために憲法を変えよう」とか「国のために大増税を」と国民を欺く連立になれば，国民のためにも国のためにもなりません。　「小沢一郎代表の方から『大連立』を持ち出した」説も出て，投手交代ならぬ「党首交代」にまで発展しています。　私自身は真相を聞きたい。国民一人ひとりの行動と選挙で政治を変える，民主主義の夢をしぼませようとする『大連立』話ですから。↑恥ずべきは日本政府なのかもしれません，宜しければクリックをお願います。

  2007年11月04日

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  期限切れを考える

  　期限切れ。食べものの消費期限や賞味期限をごまかす会社が後を絶ちません。　しかし，うれしい期限切れもあります。　「協力支援活動等を，平成19年11月1日24時をもって…帰結せよ」，「1日24時をもって…部隊を帰国指させよ」。石破防衛相が司令官あてに発した，インド洋で給油などに携わる自衛隊の撤退命令です。　「11月1日24時をもって」。11月2日0時ではありません。「2日0時」なら，新しい時間の始まりです。「1日24時」の表現は，いままでの時間の流れがその瞬間に断たれて止まる，と実感させます。　アメリカの対テロ報復戦争を支えた，6年間にわたるインド洋での活動は終わりました。　「帰結せよ」，「帰国させよ」。問答無用の命令に，改めて思います。自衛隊は軍だ，と。軍を海外から退かせる命令を初めて世論の力で出させた2007年11月1日は，「歴史的な日」と呼ぶにふさわしい。　期限切れの「テロ特措法」の名は長い。　「平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法」。　国連だの人道だのと美しく飾っても，アフガン市民を殺す攻撃への支援という現実を隠せませんでした。代わりのどんな法案も，ごまかしはきかないでしょう。　今日は憲法公布61周年。不戦を誓う憲法九条に，期限切れはありません。↑今日だからこそ改めて憲法を考える日になって欲しいと思います

  2007年11月03日

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  世界の遺児100人の夢

  　交通事故や災害で親などをなくした子どもを支援する「あしなが育英会」が世界の遺児たちと交流会を始め，7年が経ちます。世界には2億人の遺児がいる，といいます。　山中湖畔で催した，昨年の交流会でのこと。アフガンの男の子が話しました。「僕のお父さんはアメリカに殺された」。隣に座っていたアフガンの女の子が，「私のお父さんも」と続きました。　一瞬，静まりかえる座。9･11テロで遺児になった，ニューヨークの男の子が手を挙げ，語り出しました。「本当にごめんなさい。ここに座っているのが恥ずかしい」。再び流れる沈黙。　アフガンの男の子が応じました。「君が悪いじゃないよ。おとなが悪いんだ」。日本の子，各国の子，みんな泣き崩れました。「私たち，きょうだい」と抱き合う，アフガンとニューヨークの子ども･･･。　そんな交流から，『世界の遺児100人の夢』（岩波ジュニア新書）が編まれました。　『夢』の中で，遺児たちは願います。「日本の遺児たちと同じように，平和に勉強を続けたい」。アメリカ軍の空爆でお父さんを失った，アフガンのグラム・ザゲル・ザクリアくん（15）です。　別のアフガンの戦争遺児（12）は，「世界中の大統領が銃にお金を使わないで，その分で遺児を支援して」と。　グラムくんが描いた絵も載っています。爆弾を落とす飛行機。アフガン国旗と日の丸を掲げる子。グラムくんの好きな日本は，空爆を支援する国ではないでしょう。↑恥ずべきは日本政府なのかもしれません，宜しければクリックをお願います。

  2007年11月02日

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  ネット社会に対する政府の危機感

  　「存在が目障りだ…お願いだから消えてくれ」　「おまえは会社を喰いモノにしている，給料泥棒だ」　4年前，製薬会社の営業マンを自殺に追いやった，上司の暴言です。　東京地裁は，自殺を労災と認めました。職権をかさにきた嫌がらせ（パワーハラスメント）で発症した，うつ病が原因だから，と。おとな社会，企業社会に広がるいじめのありさまが，裁判で明るみに出ました。　おとなのいじめは将来もっと酷くなるのではないか。そんな不安を抱かせるのが，いまの子ども世代のネットいじめです。携帯電話やパソコンのインターネットを利用する，言葉の暴力です。　「死ね」，「学校に来るな」，「うざい」など，やはり人格や存在そのものを否定する書き込みが多いのが実情です。7月に神戸の学校で飛び降り自殺した高校生は，無理やり撮られた裸の写真がネット上に載せられていました。　だれが書き込んでいるのか分からない。事実無根の中傷がたちまち広く知られ，ほかの誰かも便乗して攻撃してくる。本人が知らない間に自己紹介ページが作られ，悪用される。　被害者は人間不信に陥り，逃げ場を失います。軽い気持ちでいじめに加わる人も，人格を歪めていきます。　欧米でも同様です。イギリスでは12歳から15歳の子どもの34％が，なんらかのネットいじめに遭っています。イギリス政府が撲滅を呼びかけています。まずは，学校に担当者をおいたり，証拠を保存し報告するなど。　効果のほどはともかく，政府の危機感の大きさが伝わってきます。↑日本政府にも同様の危機感が欲しいものです，宜しければクリックをお願います。

  2007年11月01日

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  戦場に響く「魔笛」

  　モーツァルトのオペラ「魔笛」の映像化といえば，スウェーデンの巨匠イングマール・ベルイマンの作品が名高い。彼の演出した舞台に基づく映像で，ザラストロという女王が別れた夫婦という設定が秀逸だった。　それから30年余，イギリスの気鋭の俳優・演出家ケネス・ブラナーが「魔笛」にメガホンを取り，話題を呼んでいます。　ケネス・ブラナーは設定を第一次世界大戦の時代に移しかえた。序曲を背景にいきなり戦闘シーンという衝撃的な幕開け。塹壕で毒ガスに襲われる兵士タミーノは3人の従軍看護婦に救助される。そこに現れるパパゲーノは，カナリアを飼う毒ガス検知係という設定。　彼女らの首領である夜の女王は，娘パミーナを奪ったザラストロへの憎悪を募らせ，タイーノに娘の救出を依頼する。音楽的には原型を守りつつ，夜の女王は戦車に乗って登場するなど，独創的で大胆な演出が随所に施される。　ところが，悪党とされていた敵の指導者ザラストロは，平和と寛容を説く人格者だった。この急展開は原作に由来し，よく「魔笛」の筋の難点として指摘される。だが，ケネス・ブラスナー演出は，戦争と平和，憎悪と寛容の対比を通じ，現代社会の抱える問題を考えさせます。↑大変お手数ですが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月31日

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  国際映画祭に山本薩夫特集

  　10月の第20回東京国際映画祭に続いて開催されるもうひとつの国際映画祭第8回東京フィルメックス（公式サイト）で山本薩夫監督の特集上映が組まれています。　東京国立近代美術館フィルムセンターとの共催，11月17日より11月25日まで同センターホールで12作品（うち1本を除きニュープリント）が連続上映されます。　上映されるのは「戦争と平和」にはじまり，「赤い陣羽織」，「荷車の歌」，「忍びの者」，「赤い水」，「傷だらけの山河」，「にっぽん泥棒物語」，「スパイ」，「白い巨塔」，「にせ刑事」，「座頭市牢破り」，「牡丹燈籠」まで。　生涯劇場用映画だけで57作品を残した山本薩夫監督だから，その全体像のごく一部だし，1970年代以降の「華麗なる一族」，「戦争と人間」，「あゝ野麦峠」などの大作は次回待ちだが，東京フィルメックス（公式サイト）のガイドも，山本薩夫監督作品は「徹底した社会派リアリズムに貫かれているだけでなく，メロドラマ，チャンバラ，戦争アクション，文芸作品などあらゆるジャンルで観客を楽しませる魅力に溢れていました」と書き，題して「ザッツエンタティンメント」と謳っています。　今回の12作品はそのように，大衆の代弁者として常に社会に発言してきた山本薩夫監督が，同時に日本映画史上，指折りの映画を面白くしてきた巨匠であることを教えてくれます。めったに見られぬ異色作である。　私たちの巨匠の再評価を心から歓迎したい。↑「山本薩夫監督作品が大好き！」という方，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月30日

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  芸術の秋

  　芸術の秋。今年は北欧の当たり年のようです。ここで北欧とは，スウェーデン・デンマーク・ノルウェーのスカンジナビア三国と，フィンランド，アイスランドを指します。　音楽では，エドヴァルド・グリーグ（Edvard Hagerup Grieg，ノルウェー）の没後100年，ジャン・シベリウス（Jean Sibelius，フィンランド）の没後50年にあたります。エドヴァルド・グリーグ（なら，音と音の間からしみじみとした情感がこぼれでるピアノ作品「抒情小曲集」など、秋の夜長にうってうけです。　文学の世界では，『長くつ下のピッピ』で知られるアストリッド・リンドグレーン（Astrid Lindgren，スウェーデン）の生誕100年です。　美術に目を転じると，東京（国立西洋美術館）でムンク展（2007年10月6日～2008年1月6日）が始まりました。代表作「叫び」を含むエドヴァルド・ムンク（Edvard Munch，ノルウェー）の大がかりな作品展は10年前にも日本で開かれています。　不確かな愛や死のイメージを放つ，エドヴァルド・ムンクの絵。日本人が好きなのは，不安な時代のせいでもあるのでしょうか。今回は，“いまや労働者の時代だ。芸術は万人の財産になる”と語ったエドヴァルド・ムンクの別の表情にも光を当てるそうです。Imagine Peace Tower　次は，人ではなく場所です。北極圏にかかる氷河の国，アイスランドの首都レイキャビクで先日，オノ・ヨーコさん制作の「光の塔」（イマジン・ピース・タワー，公式サイト）が完成しました。　円い台座から天に向かって一直線，光で照らします。台座にオノ・ヨーコさんの夫だった故ジョン・レノンの歌の一節「イマジン・ピース」を24ヶ国の言葉で刻みました。　世界で最北の首都から，平和の光で世界をつつみ込みたい。光の芸術にこめた，オノ・ヨーコさんの願いです。↑大変お手数ですが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月29日

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  自然環境と経済の変化が絡み合う2作

  　この秋わが国で公開中の2本の中国映画は，深い余韻を残しています。　ひとつは「長江哀歌」。昨年のベネチア映画祭で大賞（金獅子賞）をうけ，中国でも評判をとった作品です。　やがて長江・三峡ダムの底に沈む古都にやってきて，建物の解体の仕事につく男性。彼は中国に一億数千万人いる，出稼ぎ労働者の一人です。訳あって去った，妻と娘を探しています。　由緒ある町の滅亡。汗とほこりにまみれ，底辺に生きる人々。片隅に追いやられる人と，のしあがる人。誇りを捨てまいと涙をふりはらう人…。ふるさとへ帰っていく主人公を待つのは，いっそう命を危険にさらす仕事と借金です。　勇ましくふるまう者は登場しませんが，悠々と流れる大河のほとりに立ち，生き抜こうとする庶民の姿から，強靭な叙事詩の風格がにじみでる映像です。映画『長江哀歌』　次の，東京・岩波ホールで上映中の「白い馬の季節」は，内モンゴルの話です。モンゴルの草原。目の覚めるような緑を思い浮かべます。映画にあらわれるのは，砂漠化する乾いた大地です。　土地も囲い込まれ，昔ながらの遊牧生活ができなくなって息子を小学校にもやれない父と母。金が万能の社会にのみこまれていく一家の最後に残る財産が馬です。しかし馬は，家族同然で，モンゴルの文明の象徴でした。映画『白い馬の季節』　二作とも，自然環境と経済の変化が絡み合っています。　「経済の成長で払った資源と環境の代償は大きかった」　社会の格差にも目を向けた，中国共産党大会への胡錦濤総書記の報告にうなずきました。　日本に目を向けると，なかなかはっきり見えてこない福田康夫首相の曖昧な答弁。国民のためではなく，アメリカと大企業のための政治を推し進める自民党政治の限界が見えてきます。↑「この映画観た！」という方，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月28日

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  カネが政治を，法律を，社会を歪めてる

  　昨年の儲けが5,240億円のキャノンにとって，4,000万円ぐらいは「はした金」かも知れません。しかし，政治献金となれば意味合いが違ってきます。　昨年キャノンが自民党に差し出した献金が4,000万円。一企業の政治献金では，トヨタ自動車に次いで多い。キャノンは，売り上げの86％を海外であげています。カメラや印刷機を買った欧米やアジアの人々は，代金の一部が自民党に渡るなど思いもよらないでしょう。　キャノンの株も，外国人や外資が半分以上もっています。外資系企業からの政治献金は，日本の政治や選挙に外国勢力の影響が及ぶのは好ましくないと，法律で禁じられてきました。　ところが自民党・公明党・民主党が，外資系のキャノンも昨年から政治献金ができるように法律を変えてしまいました。　それに味をしめたからかもしれません。キャノンの御手洗冨士夫会長が，「法律に無理がある。見直しを」と発言したのは。偽装請負で働かせていた労働者に，「正社員にしてほしい」と告発された直後でした。　違法と知りながら偽装請負を強い，不正をつかれると“法律が悪い”。　日本経団連の会長でもある御手洗冨士夫氏は，安倍晋三前首相に期待をかけていた人です。「御手洗氏は法令の順守は当たり前と発言している」とかばったのも，安倍晋三前首相でした。　政治献金は，法律を変えるよう迫る，ひとつの圧力です。しかし，二人三脚のはずの安倍晋三首相は「政治とカネ」の問題で辞めてしまいました。　御手洗冨士夫氏も，企業人として，財界人として，社会的責任をわきまえた方がいいでしょう。↑同意される方はお手数ですが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月27日

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  「チーム安倍」になにがあったのか

  　参議院選挙の大敗を受け，政権を投げ出した安倍晋三前首相。「戦後レジームからの脱却」を高らかにうたいあげ，約70％という高支持率でスタートした安倍政権が，なぜ，わずか1年で終焉を迎えるにいたったのか…。　「安倍政権低迷の一年」のサブタイトルがある上杉隆著『官邸崩壊』（新潮社）は，官邸機能の強化を真っ先に掲げ，発足した「チーム安倍」のなかで，何があったのか，その真相に迫った内幕ドキュメントです。　前途洋々にみえた安倍内閣ですが，野党議員が暴露した「教育改革タウンミーティング　イン八戸」での「やらせ質問」が取り上げられています。　新年早々，松岡利勝農水相，伊吹文明文部科学相（いずれも当時）らの「事務所経費問題」も，“2007年1月3日，六本木ヒルズで休日を過ごす安倍に連絡が入る”と，その衝撃ぶりが伝えられています。　柳澤伯夫厚生労働相，久間章生防衛相，赤城徳彦農水相ら問題閣僚の擁護，年金時効撤廃特例法案，教育関連三法案（学校教育法・教育職員免許法・教育公務員法），イラク特別措置法など，70回以上に及ぶ強行採決。　民意とかけ離れた安倍晋三氏は，そもそも首相の座に就くべきでない人物だったことを，改めて実感させます。↑お手数ですが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月26日

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  まるで選挙対策会議

  　10月3日午前，都内のホテルで開かれた自民党と日本経団連（会長・御手洗冨士夫キャノン会長）の首脳懇談会。来るべき解散・総選挙について，古賀誠自民党選挙対策委員長が「経済界の支援を」と懇願すると，御手洗会長は「自民党の体制をしっかり支えていきたい」と応じました。　「政策議論なんてほとんどなかったよ。まるで自民党の選挙対策会議」。参加者の一人がこう漏らします。政策はとりあえず解散・総選挙まで「棚上げ」なのでしょうか。　懇談会では，自民党内の組織の崩れなどが議論になりましたが，財界中枢肝いりの福田康夫首相の誕生で，「壊れてしまっていた自民党支持基盤もちょっと元気が出てきた」と財界側も風向きの変化に期待します。　一方，自民党に与野党の政策協議の推進を強く求めている財界は，民主党にも秋波を送ります。すでに小沢一郎代表を囲む財界人の会もあるようです。　国民の皆さん，保守二大政党を目指す動きには要注意です。↑お手数ですが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月25日

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  小田実氏の遺志

  　作家で，九条の会（公式ホームページ）でも大きな役割を果たした小田実氏が，7月30日に75歳で亡くなりました。その追悼特集が『すばる』（10月号）で組まれていました。　故人の遺言のような著書となった『中流の復興』（生活人新書）について，林京子が「悔い」という文章をしたためています。林京子は中流という言葉が，物欲と拝金を着こんだ利己を追うように思えて，故人への礼状に「中流という言葉は嫌い」と書いたことを明らかにしています。　しかし，故人が説いた中流は，「戦後の磨かれた個を生き，群れない人びと」であり，そうした普通の市民の生活から国の平和を考えようとするスケールの大きなものだったことを知って，先の礼状へ謝罪しようと思いながら，それができなかった悔いを綴っています。　また瀬戸内寂聴は，故人を病院に見舞った思い出に続けて，体調を崩して葬儀に出席できずに，一人で経をあげていたときに，故人の声がはっきり聞こえたことを書いています。　その声は「なあ，おれのぬけたあと，九条やってや」というのであった。　それは故人の遺志に応えようとする瀬戸内寂聴自身の決意を公に示そうとしたものだろう。そして同時に，平和の大切さ，憲法九条を守り続けることの大事さを訴え続けた故人の遺志を，読者に伝えたいという思いが込められている。　そして瀬戸内寂聴に聞こえた声も，本当に故人のものであったとさえ私自身には思えるのである。↑お手数ですが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月24日

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  僧侶と民主のデモ隊

  　黄衣の僧侶のデモ行進は群集に包みこまれてひろがる。軍隊が僧院を襲い，黄衣を剥いで連行する－日本人ジャーナリストも殺害されたミャンマーの反軍政行動は，銃口のもと，一応押さえこまれたかのように見えます。　が，軍事独裁政権の民衆の不満・批判・抵抗が，これで収まることはないだろう。　ミャンマーは，国民の85％以上が敬虔な仏教徒で，仏教が人々の生活に深く関わっている国である。　中国や日本に伝来した大乗仏教と違って，上座部仏教（上座部とは釈迦滅後，分裂した一派。スリランカからビルマ，タイなどに伝わる）と呼ばれ，かつては，人々の救済より自己の悟りに重きをおくということで，大乗側から小乗仏教とおとしめられた。　戒律に基づく修業生活を僧院でおくる出家集団は，民衆の固い支持の上に成り立つ。僧侶の所有物は三衣一鉢といわれるように，簡素で，食物は托鉢などの布施による（生野善応著『ビルマ仏教　その実態と修業』大蔵出版）。　軍政下，急激な物価値上げが市民生活を圧迫しました。市民の生活が困窮すれば，僧侶への布施は減り，僧侶の生活も苦しくなる。僧侶のデモ隊は，自宅に監禁されている民主化運動の象徴的人物，スー・チーさんを訪れ，門前で祈っていたという。　かつて民族独立運動に献身した青年僧侶のことが想起されます。↑お手数ですが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月23日

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  みながり見つける雨宮処凛

  　『雨宮処凛（公式ホームページ）の「オールニートニッポン」』（祥伝社新書）という本が出ています。　タイトルはラジオの長寿番組に似ているが，これは実際インターネットラジオで行われているもので，雨宮処凛は公開生放送のパーソナリティーをノーギャラで務めており，その番組の内容が本に収められている。　ここには，ひきこもっていた人や日雇い労働派遣の労組の委員長，『論座』に載せた「『丸山眞男』をひっぱたきたい，31歳フリーター。希望は，戦争」で話題を集めた赤木智弘など，様々な立場や考えをもつ人が登場している。　そこで雨宮処凛ははプレカリアート（不安定な労働環境におかれている人々）が生み出されている根源に，グローバリズム，新自由主義があるという認識を持ちつつ，参加者と柔軟に話をしている。　相手の主張を認めながら，つながるところを見つけようとする話しぶりには感心させられます。　雨宮処凛は『群像』に「プレカリアートの憂鬱」というエッセーも連載しています。先月号には4つも仕事をかけもちしているシングルマザーが，子どもに睡眠薬を飲ませて夜の仕事に出掛ける過酷な状況が書かれていました。　広がる貧困は，多くの人々の心を痛めています。そこの心情に寄り添い，打開の道を探ること。　今の政治家に必要なのは雨宮処凛のような姿勢ではないのかと強く思います。↑お手数ですが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月22日

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  プラムディヤ・アナンタ・トゥール「四部作」

  　19世紀末から20世紀初頭の，オランダの植民地支配下でインドネシア民族が民族的覚醒を遂げていく姿を描いた，プラムディヤ・アナンタ・トゥールの大作「人間の大地」（上巻・下巻），「すべての民族の子」（上巻・下巻），「足跡」，「ガラスの家」（すべて株式会社めこんより）が邦訳完結した。　プラムディヤが囚われの身で書いたことから「ブル島四部作」とも言われます。Pramoedya Ananta Toer　プラムディヤが検挙されたのは，1965年の「9月30日事件」に連座して。事件の真相は不明だが，軍を中心とした右派のクーデターにより350万人いたインドネシア共産党が支持者を含めて大量に逮捕，虐殺された。インドネシア共産党は壊滅し，スハトルが権力を握った。　プラムディヤは共産党員でなかったが，左派の論客としての活動を理由に逮捕され，裁判にもかけられず刑務所を転々とし，1969年から10年間ブル島に勾留された。　四部作は，島での強制労働のあと，夜ごと同房の仲間たちに語り聞かせて完成させていた。タイプライターの使用が許可されたが，原稿を没収されることも考え，コピーを数部つくり，協力者の手で国外にも持ち出された。　釈放後の1980年に『人間の大地』が出版されたが，10ヶ月後，『すべての民族の子』とともに禁書にされ，続編は出版停止を命じられた。　1986年の第一部の邦訳出版から20年。作家も作品も苛酷な道をたどった。その長さはそのまま感動であるともいえます。↑お手数ですが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月21日

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  ハリウッド映画人の活躍

  　先月9月16日，アメリカテレビ界のアカデミー賞であるエミー賞の授賞式で，「ブラザーズ・アンド・シスターズ」のサリー・フィールドがドラマ主演女優賞を受賞。　彼女はアフガン戦争で，心的外傷を受けた息子を再びイラクに送り出す母親の役。受賞スピーチでも言っておりました。「もし母親が世界を統治していたなら，くそいまいましい戦争なんてそのものは起こりはしない」と。　FOXテレビの中継放送は，この部分をカットしたため，サリー・フィールドは怒りのコメントを出し，ネットの世論調査は60％近くがこの検閲行為を非難しました。　彼女はかつてユニオンづくりの先頭に立つ女性の労働者を演じた「ノーマ・レイ」でアカデミ－主演女優賞を取り，1980年代の反核平和運動に参加，いまイラク反戦のたたかいに勇敢な発言を続けています。　「ミスティック・リバー」でアカデミー主演男優賞のショーン・ペンは，8月上旬にベネズエラを訪問，チャベス大統領と意気投合。　「リーサル・ウェポン」シリーズでメル・ギブソンと組む人気スター，ダニー・グローバーは一足先にチャベス大統領を訪問，映画の共同制作を契約しました。　「シッコ」（公式ホームページ）でアメリカ政府を痛罵したマイケル・ムーアに続き，キューバのカストロ議長をインタビューしたオリバー・ストーンはベトナム戦争におけるアメリカ軍ソンミ虐殺を映画化するなど，いまのハリウッド映画人の活発な発言と行動は目が離せません。↑お手数ですが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月20日

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  「帝国」の対極にある人間愛

  　ノーム・チョムスキーの『お節介なアメリカ』（ちくま新書・大塚まい 訳）という表題だけを見ると，陽気で気軽なエッセーのように思う。しかし本書は，アメリカの「帝国的野望」に鋭いメスを入れた時評集である。　9・11事件の満1年後から2007年1月までの5年間に書かれた43編が収められている。アメリカの「大手一流新聞」からは掲載が拒否され，ニューヨークタイムズ通信社が配信したものという。　時代の激動が同時進行で捉えられており，本体は極めて簡潔である。　本書の中では，イラクを中心とした問題が多く取り上げられているが，著書の眼光は，アメリカの侵略的本質に鋭く注がれながら，豊富な専門文献によって，その真実を実証的に明らかにしている。　2006年の章では「ベネズエラからアルゼンチンにいたるまで，おしならべて中道左派政権が主流」となっている，ラテンアメリカの劇的な情勢が取り上げられている。また2005年のパキスタン地震の際，キューバやベネズエラの医療支援についての論評がありました。　キューバの医療チームは，「西側の救援チームが撤退した後も，人里離れた山村に残って，『凍てつくような気候と，自分たちとは異質な文化のもと，テント生活をしながら』働き続けていた」という。　1,000人の救援チームのうち44％が女性であった。　これは「帝国」の対極にある人間愛だと言える。↑お手数ですが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月19日

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  原理主義横行と好戦姿勢

  　アフガニスタンとイラクで戦争を続けるブッシュ政権の好戦姿勢の精神的土台に，キリスト教原理主義の跋扈がある。　アメリカのボストン・グローブ紙（公式ホームページ）コラムニストのジェームズ・キャロル氏が，最近，電子フォーラム「トムディスパッチ」で行ったインタビューは，この問題に深く切り込んでいて，読ませる。　キリスト教原理主義の思想は，唯一の超大国として対外的な軍事支配や強制を当然視する「アメリカ例外主義」と表裏一体のものである。　実際，9・11事件後アフガニスタンでの報復戦争開始に当たり，ブッシュ大統領は反テロ戦争のことを「十字軍」と口を滑らせていた。世界は，善か悪かのいずれかの勢力に色分けされた。　前者を指して，いまなお「自由世界」という言葉が使われ，悪の国には「（神の）救い」を与えると表現される。　だが，アメリカの知られざる内密は，ブッシュ政権の機構内部でキリスト教原理主義グループがやりたい放題の動きをしていることだ。空軍士官学校では一グループが上級承認のもと，軍人に「改宗」を迫る活動を行っていた。朝食祈祷会が「改宗」強要の場になっていた。　アメリカ憲法修正第一条の政教分離の規定が侵されている。カトリック元司祭のキャロル氏は，原住民（インディアン）大虐殺などアメリカ史の暗黒の側面まで遡ってメスを入れなければ，好戦的な精神風土からの開放はないと言い切っている。　日本の政権内部のその傾向が見られるので，警戒の必要がある。↑お手数ですが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月18日

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  背水の陣内閣？

  　昔々の中国。漢（前漢）の王・劉邦につかえる韓信将軍は，趙の国を攻めました。一万余の軍勢を率い，川の近くに着きます。　対岸の向こうへすすめば，趙の砦。韓信は，川を渡ったところで陣をしきました。趙の兵士たちは，遠くから大笑い。というのも彼らは，川や湖を前方に布陣するのが兵法の常識で，川を背にするのは「絶望の形」と信じられていたからです。　韓信らがうってでる。趙が迎えうつ。一戦を交えたあと，漢軍は川岸の陣地に逃げ帰り，追いかけてきた趙軍とふたたび激戦となります。今度は，引くに引けない水際の漢の兵士みんな死にもの狂いに戦い，勝負がつきません。　「背水の陣」と言い伝えられる，韓信の作戦です。　福田康夫新首相が，自分の内閣を「背水の陣内閣」と名付けました。　「一歩でも間違えれば自民党が政権を失うという自覚をもっている」と。混乱を避け，閣僚も多くは安倍晋三前内閣の面々という安全運転です。　振り返れば，小泉純一郎元首相は，自民党でありながら「自民党をぶっ壊す」と叫ぶ奇策でなんとか政権をもたせました。あとを継いだ安倍政権で地を隠せなくなり，人々の怒りにふれた自民党はあっという間に水際に追い込まれました。　ところで，韓信「背水の陣」の話はまだ続きがあります。韓信はあらかじめ別の隊を出発させ，趙の砦を，兵が出払って空っぽの隙に占拠させました。趙軍をはさみうちにする作戦でした。　閣僚もほとんど代えない福田康夫政権に，そんな余地はなさそうですが…。↑更新が遅れておりますが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月17日

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  コトバひとつで命を落とす

  　西南戦争で敗れた西郷隆盛がみずから命を絶ったのは，130年前の9月24日でした。戦争のきっかけは一通の電報だった，という話があります。　政府が，鹿児島の西郷隆盛の私学校の様子を探りに行った巡査に宛てて打った電報です。西郷隆盛を「シサツセヨ」。生徒たちはシサツを「刺殺」と読み，西郷隆盛も兵をあげざるを得なかった，との説です。　政府によれば，シサツは「視察」だったとか…。　真偽はともかく，いまは，パソコン・ワープロの変換・入力ミスがよく誤解を生みます。先日，秋田県の職員が訓告処分をうけました。職員は，秋田の国民体育大会（秋田わか杉国体）に出席して東京へ帰る天皇・皇后を見送る人たちに，案内状を送りました。　うち一部に，ワープロで「悪天候」を「悪天皇」と書いたまま，発送したそうです。事前に回収したものの，職員は処分に。「昔なら不敬罪だ」と騒がれました。　不敬罪。天皇や皇族に対し，敬意を払わず礼を失する犯罪。戦前には，「皇后陛下はベッピンでないでないか」とこっそりしゃべった人まで捕まえています。主権者が天皇から国民に移るとともに，1947年に廃止されました。　しかし，時代の流れに疎い人はいます。自民党総裁選に出ていた麻生太郎氏が語っていました。　日本は有史以来切れ目のない伝統をもち，天皇家は「男系の皇統をずっと維持し，おかげで歴史に一本，太い大黒柱が通っている」。それが日本の「国柄」というのですから，「あ，そう」とは聞き過ごせませんでした。↑更新が遅れておりますが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月16日

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  押し付けられた「謝意」

  　ふつうの感覚ではみっともない行いも，自民党・公明党連立政権は平気らしい。常識のある人なら，他人に「オレに感謝しているとみんなに言いふらしてくれ」とは言えません。　国連の安全保障理事会が，アフガニスタンでの「不朽の自由作戦」に「謝意」を表す決議を採択しました。日本はインド洋上の給油活動に自衛艦を送り，アメリカ率いる作戦に加わっています。　当の日本がアメリカなどにはたらきかけて，「謝意」を決議に盛り込ませました。　少し前，「武士道」がもてはやされました。『Bushido（武士道）』（新渡戸稲造）によると「武士道」は名誉や恥を重んじるといいます。自分たちに謝意を示すよう求めるとは，恥も外聞もありません。　国連の承認を得た作戦ではないからと給油活動の延長に反対する，民主党を口説き落とすための決議です。国連の“お墨付き”をもらったとはしゃぐ政府ですが，単純に喜べる話なのか。「謝意」を表すのは，他人に対してでしょう。　つまり，決議に棄権したロシア大使が話すように，「不朽の自由作戦」そのものは，やはり「国連の枠外」の作戦に変わりありません。　作戦が始まり6年。感謝されたと自慢しても，テロは世界中に広がり，戦争でテロはなくせないと作戦みずからが証明しています。　テロ根絶，平和憲法の国・日本にふさわしい活動を決めるときがきているような気がします。↑更新が遅れておりますが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月15日

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  学ぶとは何か？

  　知人の息子が通う塾は，実に興味深い。父母会が運営し，規約まであります。　21年前，東京都小金井市の親たちが，子どもたちに生きる力，考える力をつけさせたいと，スタッフを雇い，手作りの学びの場をつくったのが始まりでした。　創立当初から今日まで続く伝統行事ともいえるのが，夏の合宿です。いわゆる夏期講習ではありません。小学4年生から高校生まで同じ内容に取り組みます。　今年のテーマはヒロシマ。4泊5日で原爆ドームの模型をつくりました。模型をつくること自体は，目新しくありません。ここのオリジナルは，「ヒロシマの有る国で」（※音楽が流れます！）の歌詞の読み解きと結びつけ，原爆が落とされた日，ヒロシマで亡くなった50,000人の被爆者までつくったこと。　梱包用の詰め物を素材にしました。チームに分かれ，ひとりひとりの顔を書く。「いい加減にしたら被爆者に悪いだろ」，「せめて目と鼻は描こうぜ」…。スタッフの予想に反し，子どもたちは真面目に夢中に取り組んだようです。　ゴマンニンとはどれほどなのか。報告集にはその50,000人を，原爆ドームの模型の周りに埋め尽くしたときの驚きが綴られていました。　原爆についてはテレビや映画や漫画で「知っているつもり」だった知人の息子も，目の前のゴマンニンに圧倒されたようです。　五感をすべて使って，実感を積み重ねる。例え数を忘れても，このとき受けた衝撃は体に刻み込まれたのではないでしょうか。　学ぶとは何か。いろんなヒントが隠れています。↑更新が遅れておりますが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月14日

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  郷愁おぼえる郵便局

  　詩人の萩原朔太郎がこんな散文詩を詠んでいます。「郵便局というものは，人生の遠い旅情を思わすところの，魂の永遠ののすたるぢやだ」。　1920年代の作品と思われます。のすたるぢあ（ノスタルジア）は郷愁。題はずばり「郵便局」です。「わけても貧しい女工の群が，日給の貯金通帳を手にしながら，窓口に列をつくって押し合っている」　老女が手紙の代筆を頼み込んでいる。ふるさとの村で独り暮らす娘に，秋の着物を小包で送ったと知らせたくて。隅っこで，若い女性が字を涙にぬらしながらふるさとへ手紙を書く。　詩人萩原朔太郎は，詩の中で叫びます。「郵便局！私はその郷愁を見るのが好きだ」。　いま，ふるさとを思うせつなさは薄れました。しかし，街角や村里の小さな郵便局に入ると，生活観や人のつながりの温もりが伝わってきます。　海外に住む家族や知り合いに便りや小包を送る人。年金をおろしにきあお年寄り…。　1871年，飛脚にかわる新しい国営の郵便が東京・京都・大阪をむすんで136年。今月1日から郵政事業の分割・民営化が始まりました。小泉純一郎元首相が，まともな議論を拒み，熱にうかされたように推し進めた民営化です。　小泉元首相が「サービスは低下させない」と公約していたのに，集配局が減らされて誤配や遅配が増え，送金・決済の手数料も上がりました。　暮らしを支える公共性を忘れ，儲けに目が眩むなら，庶民が前の郵便局の郷愁をおぼえるときが，いずれくるでしょう。【参考】散文詩『郵便局』全文　郵便局といふものは，港や停車場と同じく，人生の遠い旅情を思はすところの，悲しいのすたるぢやの存在である。局員はあわただしげにスタンプを捺し，人々は窓口に群がつてゐる。わけても貧しい女工の群が，日給の貯金通帳を手にしながら，窓口に列をつくって押し合つてゐる。或る人々は為替を組み入れ，或る人々は遠國への，かなしい電報を打たうとしてゐる。　いつも急がしく，あわただしく，群衆によつてもまれてゐる，不思議な物悲しい郵便局よ。私はそこに来て手紙を書き，そこに来て人生の郷愁を見るのが好きだ。田舎の粗野な老婦が居て，側の人にたのみ，手紙の代筆を懇願してゐる。彼女の貧しい村の郷里で，孤獨に暮らしてゐる娘の許へ，秋の袷や襦袢やを，小包で送つたといふ通知である。　郵便局！私はその郷愁を見るのが好きだ。生活のさまざまな悲哀を抱きながら，そこの薄暗い壁の隅で，故郷への手紙を書いている若い女よ！鉛筆の心も折れ，文字も涙によごれて乱れてゐる。何をこの人生から，若い娘たちが苦しむだらう。我々もまた君等と同じく，絶望のすり切れた靴をはいて，生活（ライフ）の港々を漂白してゐる。　永遠に，永遠に，我々の家なき魂は凍えてゐるのだ。郵便局といふものは，港や停車場と同じやうに，人生の遠い旅情を思はすところの，魂の永遠ののすたるぢやだ。 ↑更新が遅れておりますが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月13日

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  決意表明の多い所信表明

  　「信頼」が10回なら，「安心」は12回。福田康夫首相が10月1日におこなった所信表明で目立った言葉を数えてみました。議員に配った演説原稿に福田康夫首相みずからつけた見出しも含みます。　「信頼を取り戻す」は3回繰り返しました。「信頼できる社会保障制度」，「信頼できる公教育」，「国際的に信頼される国家になる」…。　「国民の安全・安心を重視する政治への転換」を掲げ，最後は「『安心と希望』の国」で締めくくりました。　1回きりですが，次のような言い回しもありました。「丁寧に」，「農山漁村に明るさを」，「国民の皆様の目線に立って」，「温もりのある政治を」。聞きながら，福田康夫首相の言葉をひっくり返したところにこれまでの政治の姿がみえる，と思い当たりました。　国民からも，外国からも信頼を失い，人々の不安と絶望をつのらせる乱暴で冷たい政治。新首相の所信表明から，6年にわたる小泉・安倍政治でいちだんと荒れすさんだ政治・社会の光景が浮かびます。　「官から民へ」の市場原理や「美しい国へ」の靖国原理をふりまわし，無理やり現実にあてはめようとした小泉・安倍政治の行き詰まり。しかし，福田康夫も，今後どうするのか口ごもっています。提案ぬきの「…いかなければなりません」とか「工夫を重ね」の，決意表明の多い演説でした。　はっきりしている所信もあります。消費税増税や，インド洋での自衛隊の給油活動の継続です。　しかし，「国民の目線」を見誤ると，新政権もすぐに「激しい時代の潮流」（所信表明）にのみこまれます。↑更新が遅れておりますが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月12日

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  ホロコーストに生きた音楽家

  　ナチス政権下，600万人ともいわれるユダヤ人が殺害された。他方で，少なくとも1,500人のユダヤ人がベルリンで潜伏生活を送り，生き延びたという。戦後，ベルリン・バロック・オーケストラを結成したコンラート・ラテもその一人。　その経緯を追ったペーター・シュナイダー『せめて一時間だけでも』が訳出された（八木輝明訳・慶應義塾大学出版会）。　コンラート・ラテと両親は1943年，強制収容所への移送を前に郷里のブレスラウからベルリンに逃亡した。両親は後に逮捕されアウシュヴィッツに送られたが，コンラート・ラテは辛くも難を免れた。　注目したのは，多数がナチス政権に服従したもとでも，ユダヤ人をかくまったドイツ人が少なからず存在したことだ。例えば，世界的なピアニストのエドウィン・フィッシャーは，コンラート・ラテの境遇を察して資金や食糧配給券を提供し，ピアノを教えた。　政権に恭順したとされる従来の見方の再考が迫られる。　反ナチス市民運動にも関与した指揮者のレオ・ボルヒャルトは，コンラート・ラテの出自を承知の上で指揮法を教授した。その他，劇場関係者や牧師などを含め，彼の救助者は50人にのぼったそうだ。　「ナチズムという最悪の国家状態の年月のなかでも，自分の生き方の選択はできた。そしてその選択をした市民が実在したのである」　ひとりの勇気の重みを本書は教えてくれます。↑更新が遅れておりますが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月11日

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  「美しい国」の「闇」の奥深さ

  　「美しい国づくり」を掲げて登場した安倍晋三首相が参議院選挙で大敗，反省することもなく，内閣改造したうえ，辞意を表明し政権を投げ出し安倍内閣は終わりました。　安倍晋三内閣で初入閣を果たし，在任中の閣僚の自殺というショッキングな結末となった松岡利勝元農水相の「政治とカネ」をめぐる疑惑は，この前代未聞の政権投げ出しに，ある意味，影響を与えたと言えます。　長谷川煕著『松岡利勝と「美しい日本」』（朝日新聞社）は，農水省官僚から政界を目指していた松岡利勝氏を1988年に取材して以来，20年近く追いかけてきた著者が，「美しい国」の背景に迫ろうと取材ノートをもとに書き下ろしたもの。　松岡利勝氏が，農水省との「癒合」をテコにいかに「巨悪」化していったかが，リアルに書かれています。　牛海綿状脳症（BSE）の発生とともに国産牛肉処分の補助金を詐取したこと（牛肉偽装事件）で一審で実刑判決を受けたハンナン・グループの浅田満元会長らの疑惑を取材する著者に松岡利勝氏が農水省幹部の通報を受けて強圧的な電話をかけてきたことなど，「美しい国」の「闇」の奥深さを伺わせます。　安倍改造内閣で初入閣した遠藤武彦農水相が農水省の補助金不正受給でわずか8日で辞任したように，農水省－自民党の癒着は決して過去の問題ではないことを示しています。↑更新が遅れておりますが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月10日

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  変わりゆく自然の様相と環境

  　東京郊外の雑木林でアカボシゴマダラというチョウが舞っているのを見ました。黒っぽいまだら模様で尾端が赤く，滑空するように飛んでいました。　　手元の図鑑には，このチョウの分布は国内では，鹿児島県の奄美諸島に限り，国外では中国大陸，朝鮮半島，台湾とありました。南の島に生息するチョウなら，温暖化による影響か？と思いきや違いました。アカボシゴマダラ　環境省のホームページを見ると，日本に生息するチョウではなく，中国などの大陸に産するチョウが植物検疫法を犯して持ち込まれ，野外に放たれたと考えられるとして問題になっていました。　2005年にできた外来生物法（「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」）でアカボシゴマダラは「要注意外来生物」にリストアップされています。　飼うことや放すことなどが禁止されている「特定外来生物」ではないものの，生態系に影響を及ぼしうると注意喚起が必要な昆虫とされます。　1995年に埼玉県秋ヶ瀬公園で発見されて以来，生息域を広げていることや，幼虫が同じエノキを食する在来のゴマダラチョウとの競合が懸念されていると。同じリストにはペット用に輸入・販売されている外国産クワガタムシ類なども入っています。　野外で外国産が見つかる例もあるといいます。ことは昆虫だけではありませんが，ひたひたと身近な事前の様相が変わっていることは確かなようです。　見慣れないチョウに新鮮な驚きを感じると同時に，自然環境の現状を考えさせられました。↑更新が遅れておりますが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月09日

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  「天の声」を聞き取れない？今の自民党

  　親子二代が首相をつとめるのは，憲政史上初めてです。自民党総裁に，父も首相だった福田康夫氏が選ばれました。「首相になるなんて夢の夢の話だった」と語っていた人が。　父の福田赳夫氏はひょうひょうとした外見ながら，1970年代にすさまじい権力闘争をくり広げました。田中角栄氏と総裁の座を争う「角福戦争」。国会の首相指名の選挙で同じ自民党の大平正芳氏「40日抗争」…。　父親ゆずりの，ひょうひょうとした幹事の福田康夫氏。父が首相に就任したのは，71歳の時でした。福田康夫氏も，いま71歳。父は，岸信介氏の流れをくむ派閥を率いました。福田康夫氏も同じ派閥に属し，岸信介氏の孫の安倍晋三氏が投げ出した政権を引き継ぎます。　政治の様相も変わりました。父の頃も自民党は下り坂に入り，福田政権はロッキード事件後の総選挙で自民党が敗れたあと登場しました。しかし，先の参議院選挙で大敗した自民党は，党内の闘争に勢力を費やす余裕などもちません。　敗北のもとをたどれば，貧困・格差をひどくし，憲法改正をにらんで大きく右にかじをきった小泉政治に行き着きます。官房長官として小泉政権を支え，いまも小泉「改革」と「方向性は変わらない」という福田康夫氏は，自民党をどう再生するというのでしょう。　福田赳夫氏は，総選挙の予備選で大平正芳氏に敗れ，「（民の声は天の声というが）天の声にも変な声もある」と話しました。しかし，いま「民の声」を聞き取れないと，自民党は政権の維持さえ危うい。↑更新が遅れておりますが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月08日

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  超低金利のツケ

  　このところ毎月日本銀行の利上げの是非をめぐる論議が恒例化しています。政府筋からはその都度，あれこれ“悪材料”（首相の緊急交代も含む）を言い立て否定的な発言が出ています。　一方，日本銀行は常に利上げのタイミングを測る観測気球をあげています。　日本の超低金利を悪用した円キャリートレード，同時に中国，ロシア，アラブの余剰資金が世界の金融市場の膨張を誘い，世界各地で投資ブーム，バブル現象が発生。　今やアメリカでは，サブプライムローン焦げ付きによる破綻，それがフランス，ドイツの銀行子会社に飛び火する事態となってしまいました。　先頃発表された国連貿易開発会議（UNCTAD）の「2007年版貿易開発報告書」で，円キャリードレードが途上国の貿易・為替取引の攪乱要因となっており，発展を妨げていると重大な指摘をしています。　日本の公定歩合が1％を切ったのは1995年9月でしたが，以来12年間，国民は世界でも例を見ない超低金利を押し付けられ，大銀行救済に協力させ続けられました。　ある財界人は「せめて金利を1％に引き上げれば，国民の金融資産のうち，真水分役1,000兆円に対して10兆円の金利が生まれる。そうすれば，国民もカネを使おうかという気分になり，それが回りまわって世間を潤すことになる」と提唱しています。　また大企業は相当な金利負担となるが，ある程度甘受すべきだ，としているとも言っています。　地方商店街の疲弊や，大手デパートの“追い込まれ型統合”は個人消費の冷え込みが背景にあります。内外経済健全化のためにも金利引き上げは，国民的課題というべきでしょう。↑更新が遅れておりますが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月07日

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  ひとつの命が大事にされる社会

  　「ひとりを愛せる日本へ」。10月1日にスタートした日本郵政株式会社のキャッチフレーズです。郵便局といえば，赤いポストと赤いバイク。どんな雪道も山道もバイクは走ります。　運ばれてくるのは，遠方からの息災の知らせ，旅先の楽しい出来事，暮らしにかかわる重要な通知…。いずれも大切な「便り」です。全国どこでも届けられる「安心」がありました。　しかしいま，この「安心」に黄色信号がともっています。民営化を前に，「誤配が増えた」，「小包の取り置き局が遠くなった」との声が各地から聞こえてきました。　郵政が民営会社となった同じ日，福田康夫首相が所信表明演説をしました。「自立と共生」の政治の先に「『希望と安心』の国がある」と言いました。　20代の看護士さんから聞いた半紙を思い出します。75歳以上の独り暮らしのお年寄りの訪問活動を続けています。「孤独とたたかっているお年寄りがせきを切ったように話される。私が訪ねることが安心なんですね」。　看護士さんたちは，高齢者に負担増と医療制限を押し付ける後期高齢者医療制度を撤回させたい，と署名を集めています。「つながっている『安心』の糸を，これからもつなげたい」と。　75歳を過ぎた男性が言いました。「今は『敬老』ではなく，『軽老』です。年寄りが軽んじられている」。福田康夫首相。高齢者の「安心」のためには，この医療制度の撤回を明言すべきです。　ひとつの命が大事にされる国こそ，みんなの希望です。↑更新が遅れておりますが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月06日

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  根性いらずの「文系ダイエット」

  　本を開くと目に付くのが，1年間で50キロ減量し，まるで別人になった男性の写真。自信に満ちた誇らしげな笑顔が印象的です。　岡田斗司夫著『いつまでもデブと思うなよ』（新潮新書・新潮社）が話題になっています。食べた物をもらさず記録する「レコーディング・ダイエット」を考案してやせた本人の実践報告です。　著者は「オタキング」（オタクの王様）と呼ばれる評論家（作家）。運動が嫌いで，「ダイエットは楽しく知的な行為」と「根性論」抜きの「文系ダイエット」を編み出しました。　はじめに，「見た目主義到来」の世の中，「デブがどれだけ損をするか」を熱弁し，“やっぱりやせた方がいいか”と思わせてからいよいよ実践。　とにかく記録し，食生活を知り，体質を変えること。　その道のりを助走から再加速までの五段階と，努力してやせていられる「軌道到達」の飛行機の発進プロセスに例えて説明します。　なるほどと感心したのは，今の自分の体は“「太り続けるための行動」を繰り返している成果”だという話。その努力をやめれば，簡単にやせるかもと，その気にさせます。　健康的にやせるなら，カロリーを考えて，体の声を聞いて必要な食物を摂取するのは，当たり前のこと。　問題は，いかにして続けるか。継続こそ力です。↑更新が遅れておりますが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月05日

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  「ビルマ」にこだわる人々の意思

  　「仏教の国で僧侶を弾圧するなど考えられない」　日本に住むミャンマーの人たちが憤ります。ミャンマーの軍事政権が，燃料費の値上げなどに抗議する素手の市民のデモ行進を襲い，僧侶を死なせました。　いくつかの寺院に軍が突入し建物を壊して大勢の僧侶を連れ去った，と言います。　市民の尊敬をうける僧侶たちへの，なりふり構わぬ弾圧です。　竹内道雄の小説『ビルマの竪琴』の主人公が僧になるように，ミャンマーといえば仏僧を思い浮かべます。　19世紀にイギリスに植民地とされたミャンマー。イギリスに対する組織だった民族運動の始まりも，1906年の仏教青年会の結成といわれます。青年会は当初，国民の道徳や生活習慣の改善に取り組んでいました。　第一次世界大戦の後，「民族自決」の機運が世界に広がるとともに，青年会の若い世代は「自治」を求めていきました（根元敬 著『アウン・サン』）。私が観たのはこのシリーズでした！　今回も，軍事政権に反対する若い僧侶たちが立ち上がった，と伝えられます。弾圧に抗議する在日のミャンマーの人々は，「ビルマ民主化」を掲げています。　ミャンマーは，対外的には「ビルマ」と名乗っていました。1988年のクーデターでできた軍事政権が「ミャンマー」に一本化したのです。　かつて独立運動を指導した政党などは，「ビルマ」（現地語の発音で“バマー”）に少数民族を含めた国としての意味を込めていました。　その「ビルマ」の名にこだわる人の姿に，軍事政権にはくみしない，と強い意思が読み取れます。↑更新が遅れておりますが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月04日

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  つまみ食いの日本論

  　麻生太郎著『とてつもない日本』（新潮新書・680円）が売れています。著者の祖父・吉田茂は「日本人のエネルギーはとてつもないものだ。日本はこれから必ず良くなる。日本はとてつもない国なのだ」と語ったそうで，書名もそこからとられています。　麻生太郎氏の論理の特徴は，生活破壊を推進する政府の・与党の失政や無策を棚上げし，江戸時代から現代までの都合のよい事柄をつまみ食いしながら，日本のすごさを説く手法です。　九条改悪などの改憲を企てながら「戦後日本の平和主義という実績」を誇示するような，矛盾だらけの論理を展開。マンガや音楽などの日本文化の人気と自衛隊の海外活動を同列に取り上げ，日本はすごいと主張します。　「身の安全を自力だけで守ることができないのであれば，ケンカの強い者（アメリカ）と仲良くするというのは，子どもでも知っている生活の知恵」　「義務教育が3年延長されたからといって，戦後の教育が戦前よりよくなったと確信をもって言える人はどのくらいいるのだろうか」　大臣の資質を疑いたくなる認識を披露しています。　　「目の前のことに一喜一憂して落ち込んだりくさったりせずに，一緒に『元気な日本』を作って行こう」という現実無視の結論が空疎に響きます。↑更新が遅れておりますが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月04日

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  かぐや姫とかぐや

  　「竹取物語」のかぐや姫は，旧暦の8月15日に月へ帰っていきました。中秋の名月の日，十五夜です。新暦で，今年は9月25日にあたります。　一足先に，月探査衛星「かぐや」が種子島から飛び立ちました。約40日かけて月の100キロ上空へ。1年ほど周りを回り，月の謎を調べます。　人間が古来，満ち欠けを暦がわりに，光を恋人たちのあいびきを手引きにする明かりとしてきた月。今は，小さな望遠鏡でもかなりはっきり表情をとらえられるので，その正体が分かったつもりになりがちです。　しかし実は，月は謎に満ちています。惑星（地球）の衛星にしては，あまりに大きすぎないか。内部はどういう仕組みで，どんな鉱物が埋まっているのか。地球からみて表側に平らな海が広がり裏はクレーターだらけの，地形の違いはなぜか。…などなどです。　どれも“どのようにして月ができたのか”の謎とかかわっています。地球から分かれたという説。よそから飛んできた星が地球の引力でつかまえたという説。　最近有力なのが，衝突説です。地球と巨大な天体がぶつかり，飛び散った物質が集まり月をつくったといいます。「かぐや」の探査能力に，期待は大きい。　「竹取物語」の，かぐや姫を迎えにくる月の都の人々は争いが嫌いらしい。姫を渡すまいと武装する地球人の，戦闘意欲を失わせ，武器を無力にします。　「かぐや」が調べる月の資源をめぐって大国の奪い合いも予想されていますが，紛争は避けて欲しいものです。↑更新が遅れておりますが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月03日

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  シェイクスピアと宝塚

  　雑誌『悲劇喜劇』が10月号で「演劇界を動かす宝塚」の特集を行っていました。　そのなかには，たとえば，最近亡くなった民芸の南風洋子さんのように，宝塚出身の俳優が，新劇で活躍している例もあるが，南風洋子さんが小夜福子さん，越路吹雪さんと同じように，宝塚では男役であったと聞くと，宝塚とは一体どういう集団なのかに，関心が集まるのも当然である。　この特集は6人の方が，それぞれの立場から宝塚を論じているが，小田島雄志さんの「宝塚色に染まったシェイクスピア」にとくに興味がそそがれます。　シェイクスピア全作品の翻訳をおこなった小田島雄志さんは「シェイクスピアと宝塚」は「相性がいい」と指摘し，その理由を「3つだけ挙げて」いる。　第一は，シェイクスピアが19世紀以降のリアリズム劇と違って，無韻詩を中心にした作品を書いたことだ。小田島雄志氏によればシェイクスピア作品は「もともと歌入り踊り入り芝居であり，宝塚になじみやすい」のである。　しかも第二に，シェイクスピア時代には，女優は存在していなかった。そのため「男は男以上に男らしく，女は女以上に女らしく描かれ」ていた。その点も「宝塚とピッタリだ」という。　第三に「人間を信じ」る点で，両者は同じだと指摘する。　独特な宝塚論といえるだろう。　従来，別の芸能と思われていた宝塚歌劇を，現代演劇と同じ次元で論じているからだろうか。↑更新が遅れておりますが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月02日

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  史実と教科書検定

  　「砲弾の豪雨の中へ放り出され/自決せよと強いられ/死んでいった沖縄人の魂は/怒りをもってこの島の上を/さ迷っている…」　「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の「県民へのアピール」です。宜野湾市の海浜公園で開かれた大会に11万人が集まりました。バスで，船で。家族ぐるみで，島や町からそろって。「集団自決」で生き残った人も，戦争を知らない子どもも，市町村長や議員も。　教科書に，沖縄戦の「集団自決」は軍の命令や強制だったと書いてはならない－。この文部科学省の検定に対し，過去を封印していた体験者も次々重い口を開き始めました。　「軍人が手榴弾を配った」，「アメリカ軍に捕まる前に死ね，と言われた」。　疑いようもない事実を認めず，「集団自決」を国の運命に殉じた愛国心の表れと描きたい国。多くの県民は，そこに新たな危険をかぎとりました。　「歴史の事実をそのまま/次の世代へ伝えることが/日本を正しく歩ましめる/歪められた教科書は/再び戦争と破壊へと向かう」（アピール）。　糸満市の平和祈念公園から県民大会の会場へ，「平和の火」が100人以上の生徒や教員のリレーで運ばれました。「平和の火」は，「集団自決」で300人近い人が亡くなった座間味村の火に，広島・長崎の火をあわせ，ともしています。　大会で，高校三年生の津嘉山拡大さんは，次のように発言を結びました。　「あの醜い戦争を美化しないで欲しい。たとえ醜くても真実を知りたい。学びたい。そして伝えたい」　戦争を美化した自民党内の「靖国派」の人たちは，沖縄の県民の声を真摯に受け止め，真実を真実のまま後世に伝え残して欲しいと私自身は考えます。↑更新が遅れておりますが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月01日

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  もっと早く教えて欲しかった…

  　すぐにあきらめる「どうせどうせ子ちゃん」，何でも精神論で片付ける「気合いでゴーくん」，主体的に考えて行動する「問題解決キッズ」など。　愛らしいキャラクターが登場する，渡辺健介著『世界一やさしい問題解決の授業』（ダイヤモンド社）は，問題解決の過程を中高生向けに解説しています。　ポイントは，どんな大きな問題も，「じっくり原因を見極め，小さな問題に分解し，ひとつずつ解いて」いくことです。　例えばお子さんが「どうせどうせ子ちゃん」で「机が片付かない」という問題にぶつかっているとします。　その場合，「どうせ私なんか駄目よ。教科書や参考書が多すぎるんだもん。何したって無駄よ」とすぐにあきらめます。　しかし問題解決キッズなら「そもそも何が散らかっているのか，教科書か，印刷物か，なんでもか」，「なぜ片付けられないのか，時間がないのか，雑然としていた方が何となく落ち着くのか，収納場所がないのか」…。　「なぜなぜ」と細かく原因を特定し，それに見合った解決法にたどりつくので（かと思いま）す。　本の帯には「学校では教えてくれない」のコピーが踊っていますが，「学校でこそ教えてよ。それもできれば義務教育のうちに」と言いたい気分です。↑更新が遅れておりますが，宜しければクリックをお願います。

  2007年10月01日

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  いま，なぜを問う

  　『新潮』の先月号（9月号）に菅野昭正氏の「アクチュアリテについて」というエッセイーが載っていました。　菅野昭正氏が東京新聞，中日新聞，西日本新聞，北海道新聞の4紙で，1982年から2004年まで続けた文芸時評をまとめた『変容する文学のなかで』が全3巻（上（文芸時評1982年‐1990年）・下（文芸時評1991年-2001年）・完（文芸時評2002年-2004年））として完結したことにふれたものだが，ここではその時評の作業を進めてきた原理とでも言うべきものが語られている。　それは，「いま，なぜ，こういう作品が書かれるのか」という思案である。　菅野昭正氏は，この問いが筆先を照らすほのかな誘導の灯りであったという。菅野昭正氏の時評は作品への迫り方で触発されるものが多かったが，それはこの姿勢によるものだろう。　しかし，それは批評のみに関わる原理ではない。創造は，現実と既出の作品への批評だから，いま，なぜ，これを書くのかは，作家自身に問いかけられることだろう。　芥川賞を含めて，最近の新人賞の受賞作は目新しさを求めてか，技巧に走ることで，その問いかけが弱まっているように見える。　そうした作品の背後にあるアクチュアリテ（現実性）をも読みとらねばならないというのが菅野昭正氏の意だろう。　しかし，菅野昭正氏自身も認めるように，そのアクチュアリテとは何かということへの問いかけがなくなっていることも事実だ。　使い捨てでない文学を生み出すためには，それを不断に問い続けていくことが求められるだろう。↑更新が遅れておりますが，宜しければクリックをお願います。

  2007年09月30日

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  「花の回廊」と人間存在

  　宮本輝氏が堂々と書き続けている「流転の海」の第5部「花の回廊」（新潮社）が出ています。父親をモデルにしたこのシリーズを起筆したのは宮本輝氏が35歳の時だから，もはや25年になる。　先月の『新潮』（9月号）インタビューによれば，あと3巻分は書くらしい。「花の回廊」とはよくぞ付けたと思うが，阪神電車尼崎駅から5，6分のところにある，でたらめに穴を開けたり継ぎ足したりして，迷路とおぼしき構造の木造アパート「蘭月ビル」が舞台である。　1950年代半ばから末の，主人公の松坂熊呉60歳，宮本輝氏とおぼしき伸仁は10歳のころである。　自殺，殺人，朝鮮半島の南北分断と「在日」間の対立，帰国事業，障害者など，現在にも続くいろいろの問題が，魑魅魍魎とした建物と人の住むアパートで展開される。　目線は，当然ながらこれまで同様，主人公の熊呉であるが，この作品から伸仁の体験が底流になっている。　北朝鮮への帰国については，今も真相を究明する出版物が後を絶たない。が，あの当時，帰る人，送る人それぞれがどのような胸中であったか。熊呉は不審を持ちながらも「体には気をつけて」と送る。　弱い者がすがって生きようとすることに，熊呉は優しい。その優しさは，いよいよ激しくなる時代にどのようになっていくのか。　「花の回廊」は，人間という存在の転機をほの明かりに照らしているような気がします。↑更新が遅れておりますが，宜しければクリックをお願います。

  2007年09月29日

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  生活がにおう『博士の本棚』

  　『博士の本棚』（新潮社）は，作家小川陽子の本をテーマとした83編を収めたエッセイー集です。ここで「博士」とは，読売文学賞，本屋大賞となり，映像化もされた『博士の愛した数式』（公式ホームページ）に由来していよう。　著者の書評の面白さは，いつも自分の感覚にかかわり合わせて，時に，取り上げた本のことより，自分の内面に映じた世界や体験を，多く語ったりしていることである。それでいて，書評に生活の匂いがひたひたとしている。　例えば，次のような読後感。　「浴槽のお湯に浮かぶ上弦の月が，嘗の中でゆらめいていたりする。」　「読み終わるとまた宝石箱に納め，鍵を掛け，裏庭の片隅にひっそりと湧き出ている泉の底に沈める。」　『博士の本棚』には，それこそ「一切，啓示も教訓も含まれていない。」それでいて，ここで取り上げている作品は親しみを覚え，いつか読んでみたい気になる。　「小説を書くとき，少なくとも精神は密室に監禁されていなければならない。死に近い場所でしか小説は書けないのではないだろうか，と思う。」という言葉があった。　だから，「死に床に就いたとき，枕元に置く7冊」にも平然と答えられるということであろうか。　だが，『博士の本棚』は小説ではないから，もっとも死から遠い場所，つまり，現実に生きて，なまなましく呼吸しながら書かれている。↑更新が遅れておりますが，宜しければクリックをお願います。

  2007年09月28日

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  生きるたたかい

  　1977年9月27日。横浜市緑区（現在の青葉区）の住宅街にアメリカ軍ファントム機が墜落した日から，30年が経ちます。（横浜米軍機墜落事件）　爆発。「細かい破片は2キロ先の路上まで，雹のように降り…，火炎と熱線と爆風はジェット機の破片と混じり，一瞬のうちに，被災者の家族を襲った。…ドラム缶65本分のジェット燃料が積まれていました」　神奈川県会議員の斎藤淑子さんが『ウワーッ！飛行機が落ちてくる』（光陽出版社）に記す墜落の瞬間です。斎藤さんの本に，悲惨さに立ち向かった人たちの姿もよみがえります。　幼い息子2人の命を奪われ，自身も4年後に亡くなった土志田（旧姓・林）和枝さんは，胸にしか皮膚が残っていませんでした。炎から逃れながら子どもを抱きしめた胸です。過酷な治療に耐えます。　叫び声が病院内に響いた，薬液に体を浸す治療。六十数回の皮膚の移植・植皮手術。もう一度子どもをこの胸に，の一心でした。　2人の死を知ってからも，悲しみの淵から立ち上がります。子どもの死を無駄にしない。生き証人として真相解明に役立とう，と。「生きるとは？」と高校生に聞かれ，「たたかい」と言い切りました。　妻の悦子さんが大やけどした椎葉寅生さんの一家は，家族ぐるみでアメリカ軍を裁判に訴えます。2人の子どもも証言し，事件から10年の後，賠償を認めさせました。　「『安保の壁』に風穴があいた」と新聞も書いた勝利。今もアメリカ軍機が飛び交いますが，土志田さんや椎葉さんのたたかいは生き続けています。↑更新が遅れておりますが，宜しければクリックをお願います。

  2007年09月27日

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  生物学的性差と社会的性別

  　性差を語ることが男女共同参画と相反するかを検証するために「どこまでわかっているのか」を明らかにするシンポジウムが8月ルイ・パストゥール医学研究センターで開催されていました。　同センターの宇野賀津子氏の「ヒトの性分化」，大阪府立大学の東優子氏の「ジェンダー・アイデンティティ…Nature（生物学的性差） vs. Nurture（社会的性別）論争を読み解く」の報告をもとに活発な討論がありました。　宇野賀津子氏は，生物学的なヒトの性は「遺伝的性，精巣か卵巣かの内性器の性，心の性」という段階がある。戸籍上の性は外性器で決められるから，性同一障害が論じられるが，社会は多様な性のあり方を認めるべきである。　気鋭のジェンダー研究者の東優子氏は，医療的介入の理論的支柱となり，人間の性別の決定要因をめぐる論議にも影響を与えてきた性科学者Ｊ・マネーとM・ダイアモンドの対立的論点を取り上げた。　社会は，決められた道を進むことを強制するのではなく，すべての人が学びたいことを存分に学び，好きなライフコースを選べる機会を与えるべきである。　差別を助長すると警戒され，解明される科学的事実を避ける傾向が強いが，「ヒトと人間」を知るには，性差を科学的・総合的に研究する研究会が必要なことが理解できました。↑更新が遅れておりますが，宜しければクリックをお願います。

  2007年09月27日

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