|
カテゴリ:教師について
教育崩壊 「夢教育」で私が再生に挑む 渡邉美樹著 と、タイトルがついたこの本、著者(教育再生会議の委員の一人)はワタミ株式会社代表取締役社長・CEO、学校法人郁文館夢学園理事長という肩書きを持っています。 渡邉氏は経営破綻した郁文館学園の建て直しに2003年から理事長として関わり、学校に競争原理を取り入れ、現在再建を果たしています。 この本には学校再建の模様が渡邉氏の視点から、詳しく、思い入れたっぷりに書かれています。渡邉氏の教育への思い入れは半端なものではなく、情熱的です。同時に、その手腕は戦略的であり、さすが、一代でワタミフーズを強大な企業に育て上げただけの人だと思いました。我々教員には、見習うべき点が数知れなくあると思います。 文中には、教師に対する厳しい体制作りをしてきたことが延々と書かれています。著者はなかなか変化をしない教員に対する苛立ちを隠しません。 書類の出し方、目標の立て方、新人の育て方、授業の作り方、教室のゴミについて・・・様々な学校の不出来についての指摘は、確かに、おっしゃるとおりだと思います。 学校現場にPLAN-DO-CHECK-ACTIONが欠けていることも、ある意味、著者が「不思議」にさえ思っているような様子が読み取れます。 確かに、学校現場には、PLAN-DO-CHECK-ACTIONという組織として当然の流れがありません。外部の方から見れば、確かに、確かに、不思議であると思います。 確かに、確かに。確かに、教育の崩壊は、教師自らが招いた部分が大きいと思います。 しかし、渡邉氏?あなたの思考の中には、何か欠けていませんか? P189あたりで、延々と、“教師が授業の始業時間を守れないこと”を怒っています。チャイムが鳴ってから職員室を出発していては、始業が5分遅れるというのです。 ------------------------------(引用) 約束を守ることの大切さを生徒に指導し、規律を守ることの尊さを、身をもって示すはずの教師が、「五分ぐらいいいじゃないか」と考えている。実に空恐ろしい事実だ。 <中略> これ契約違反だ。契約にもとづいて授業をし、一年間で評価したうえで約束を履行できていなければ、私たちの学校から去っていただかねばならない。そうでなければ、私たちが保護者に対して契約違反をしていることになってしまう。しかし、この理屈が教師たちにはわからない。 ------------------------------(引用) 始業時間に教師が職員室を出発するのが良い悪いはここでは議論しないことにします。問題は、その前のP186の部分。 ------------------------------(引用) それ(改革)は、書類の出し方、仕事に向かう姿勢、ものの考え方から始まって、校務運営に置けるあらゆる局面において徹底的に行われた。幹部クラスも例外ではない。 <中略> 校内にはぴりぴりとした緊張感で張り詰めていた。改革によって仕事量が膨大に増えた上、 慣れない作業に手間取り、教職員たちの勤務時間は連日深夜に及んだ。今までがルーズだっただけにそれに耐え切れなくなる教職員も続出した。 ------------------------------(引用) 実際に、かなりの数の職員がこの学校を去ったようです。これは、競争原理が働いた結果のよろこばしい自然淘汰? 理事長(一時は校長)として関わっていた渡邉氏にとって、 1.職員の労働状態の把握 2.職員の労働状態の改善 3.改善状況のチェック は、経営者・管理職としての重要な任務のひとつであり、勤務時間が連日深夜に及んでいたことを知っておきながら事態を放置してきたことは、契約違反どころではなく、法律違反ではないのでしょうか?「残業手当を奮発していた」「ローテーションを組んで積極的に年休を取れるシステムを推奨していた」等の適切な処置が行われていたとは著書のどこにも書いていません。少なくとも責任ある職務につきながらの著書の発行であれば、職員の超過勤務へ対するしっかりとした見解と対処の詳細を書くべきではなかったのではないでしょうか。
彼の言動に見え隠れする「過度の合目的主義・競争主義」そして「不寛容」は、本当に教育を再生へと導くのでしょうか?? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[教師について] カテゴリの最新記事
|
|