家へ帰るとすぐショータンは、パソコンの株my Page を見た。
「上がってるから売りにかけたかったのになあ」
残念。売り損ねた時は上がる。買った時は下がる。そんなものだ。
食事をしてはいけない、お風呂もダメということだったので、手早く入院の支度をした。
「部屋へ入るとき、『大部屋の方がええ』言うたら変えてくれるねんな?」
「部屋の看護師に言うたら変えてくれるて......」
5時過ぎにタクシーで行った。
6時前に電話が鳴った。
「部屋、『個室しかない』言うから、帰る」「ふーん」
おかしい病院だ。「個室は空いてませんので、大部屋で我慢してください。個室が空きましたら、移っていただきます」と言うのが普通だろう。大部屋は、臨時でベッドを一つ二つ増やしてもいいのだから。国立循環器センターは、大部屋が満員だったので、個室へ無料で三日も入れてくれた。
ショータンの電話のすぐ後に、病院の看護師から電話があった。
「話が行き違いまして、『帰る』言うて一人で荷物持って降りて行かれました」
解ってるよ。本人から今聞いばっかりだ。
5分もせず、ショータンは戻って来た。
すぐに自分の部屋へ上がった。ゴタゴタしていて全然横になれなかったから疲れたのだろう。
翌朝、いつもの時間に、「どうですか?」と部屋を覗いたら、「目が回って起きられへん」と言った。「夜中にトイレへ行くのンふらふらで、心臓ドンドンして、伝い歩きやった」「
「ふうん。......昨日、点滴したのに?」
自分にそんな経験が無いから、人の身体のことはよく判らない。
「どこの病院へ行く?」
「今日は、オカモトへ行く。もう一回点滴して貰うたら良くなるかも知れん。診たてが一緒やったら、またキワへ行くし」
オカモトというのは、ショータンのホームドクターだ。私は、ホームドクターなど決めていない。病気になったらわが家伝薬。世界的な有名ドクターより信頼出来る。免疫力を強化するのだから、診立て違いもないし、間違い治療もない。
ショータンは牛乳を、マグカップに半分飲んだ。ショータンのお腹の加減も、私には判らない。保険会社が通院用にチケットをくれているタクシーを呼んだ。富田林のオカモト医院まで行った。運転手は、「待ってます」と言った。片道7000円余り掛かるから、少々時間が掛かっても、ここで待っている方がトクなのだろう。
......続く...