|
カテゴリ:メモ
III. 日本の借金増加に米国財務省が果たした役割
日本の財政ジレンマの原因の中で見落としがちなのは、日本の借金の増加が米国財務省への融資額の増加と歩調を合わせている点である。表5は、日銀の財務省証券の購入額(保有額の年間の増減)と、日本の国債発行額を比較したものである。 人気blogランキング <-- クリックしていただくと、より多くの方に読んでいただけます。ご協力お願いします。 表 5.日本は米国に融資するために借金をしている ( 単位:兆円 ) 日本の国債発行額 米国国債購入額 割合 (a) (b) (b)/(a) 1965 0.2 1970 0.4 0.4 98% 1975 2.0 -0.2 -11% 1980 14.3 1.0 7% 1981 12.3 0.8 6% 1982 10.4 -1.2 -11% 1983 13.3 0.3 2% 1984 12.7 0.5 4% 1985 11.7 0.1 1% 1986 19.8 2.5 12% 1987 0.5 4.8 46% 1988 13.3 2.0 15% 1989 12.7 -1.8 -14% 1990 5.6 -0.7 -13% 1991 6.7 -0.8 -12% 1992 7.3 0.0 -1% 1993 8.1 3.0 37% 1994 13.6 2.7 20% 1995 12.6 5.7 45% 1981-85 60.4 0.5 1% 1986-90 51.9 6.8 13% 1991-95 48.3 10.6 22% 1993年~1995年には、日本の外貨準備を通じた米国財務省証券の購入額は、日本の国債発行額、つまり日本の財政赤字(経常支出の赤字を埋めるために日本が発行しなければならなかった国債発行額)のほぼ3分の1にものぼった。日本が米国の財務省証券を購入することで助かるのは米国の財政赤字である(表6参照)。 表 6.米国の財政赤字に対する日本の資金援助 ( 単位: 10億円 ) 米国歳入 米国歳出 米国財政赤字 日本の米国債購入額 (d) (d) (c) (d) 1965 126 119 -7 1970 206 185 -21 1.1 -5% 1975 302 292 -10 -0.7 7% 1980 565 617 52 5.1 10% 1981 659 625 -34 3.6 -11% 1982 686 710 24 -4.9 -20% 1983 678 786 108 1.3 1% 1984 752 829 77 1.8 2% 1985 807 1,032 225 0.3 0% 1986 848 1,096 248 15.5 6% 1987 969 1,149 180 38.7 22% 1988 1,012 1,215 203 15.8 8% 1989 1,093 1,270 177 -12.8 -7% 1990 1,155 1,393 238 -5.5 -2% 1991 1,201 1,480 279 -6.4 -2% 1992 1,259 1,527 268 -0.4 0% 1993 1,238 1,492 254 26.9 11% 1994 1,331 1,532 201 27.3 14% 1995 1,447 1,607 160 55.7 35% 米国は日本からの融資で財政赤字を穴埋めした。そのため、自由市場で銀行や企業、投資家から借金をする必要がなく、その結果米国内の金利が低く抑えられたのである。このため米国投資家はその資金を対外投資、海外の株式や債券の購入にあて、諸外国に対する経済的支配を拡大した。それはキャピタルゲインを含めて、自国の財務省証券を購入する以上の収益となった。 さらに、米国の低金利は、日本との貿易競争において、米国輸出業者の資本コストを引き下げることになった。大蔵省がとった戦略は、結局、世界市場における日本の貿易優位性を犠牲にし、米国輸出業者を資金援助する結果となったのである。 米金融当局は、日本に米国が行っているような諸外国の主要資産の買収ではなく、財務省証券を購入するよう提案した。米国の株式や主要企業、さらには金でさえ、日本は買うべきではないと言われた。ただ、ロックフェラーセンターやペブルビーチのゴルフコースといった「記念品」だけは、相場以上の金額を積めば購入してもよいと言われた。しかし政府の余剰資金ではそういった物件は購入できない。そのため日銀は余剰ドルで財務省証券を購入したのだった。米国財務省証券本位制のために、日本は米国の財政赤字の資金援助をする以外の道を塞がれたのである。こうして米国の財政赤字は、米国の納税者や投資家の問題から、日本の国内問題へと発展した。 日本と同様、米国の財政赤字は金融・不動産部門に対する事実上の課税控除の結果生まれたものである。これは、米国政府が不動産減価償却引当金(税金対策として不動産物件を繰り返し減価償却することができる。この現象を過剰減価償却と呼ぶ)を認め、さらに、金利を課税控除の経費として認めたためであった。その結果、米国では全資産の3分の2を不動産が占めているにも拘らず、課税対象の所得が不動産からは全く発生していないかのような現象が起きている。 日本政府が財務省証券を購入し続ける一方で、日本政府は財政赤字に追い込まれた。では日銀は他にどのような選択肢があったのか。日銀は借金をしなくても、単純に造幣するだけで財政赤字を埋めることはできたはずである。しかし、日銀は借金で対処した。その結果、日本は米国政府に融資をして世界最大の債権国になりながら、その一方では世界最大の債務国になりつつある。事実、日本の国家債務のGNPに占める割合は今や米国や他の西欧諸国を上回ろうとしている。 日銀は自由市場で日本の国債を購入し、マネー・サプライを増やした。こうして資本市場の資金供給量が増大し(またこれが日本の低金利政策の主な要因である)、その過程で不動産や株式市場のバブルが膨らんだ。 日本はこうして、金利を抑制するために資本市場をインフレ化させる政策をとらざるを得なくなった。これは不動産の市場価値を支えるためであり、それによって不動産部門に世界最大の過剰貸付を行った日本の金融制度のバランス・シートを維持するためであった。米国の国際収支と、米国の財政赤字と、米国の株式・債券市場と、米国の不動産価格を支えるために、日本経済全体はこうして歪められていった。 世界通貨制度の中で米国を資金援助するという役割を果たさなければならないがために、日本は消費税を3%から5%へ増税しなければならないのである。米国のFIRE部門("Finance(金融)"、"Insurance(保険)"、"Real Estate(不動産)"産業の一般的な略称)がキャピタル・ゲインへの課税を削減させることに成功すれば、日本はさらに多くの資金を供出しなければならなくなるであろう。このキャピタル・ゲイン税減税の主な受益者は不動産部門であり、連邦政府に支払う税金はほぼ完全に無税となる。米国の不動産部門から全く税金をとらず、さらに日本でも不動産バブルを引き起こした不動産および金融部門に対する課税を強めなければ、日本の消費税は15%まで引き上げざるを得なくなるであろうと試算されている。 日本の有権者は、大蔵省や与党がなぜ消費税増税を迫っているのか、その理由を理解すべきである。これは極めて重要なことなのだ。日本の歳出を補うために必要な税金を投資家が支払っていないために、消費者が代わって税金を払わなければならないのである。 表 7.日本の米国に対する資金援助と日本の国債および財政赤字 ( 単位:兆円 ) 日本の 国債発行 財政赤字 米国債購入 割合 財政赤字 額 額 に占める 割合 (a) (b) (c) (c)/(a) (c)/(b) 1965 0.2 0.5 1970 0.4 0.3 0.4 98% 131% 1975 2.0 7.7 -0.2 -11% -3% 1980 14.3 16.9 1.0 7% 6% 1981 12.3 16.8 0.8 6% 5% 1982 10.4 17.6 -1.2 -11% -7% 1983 13.3 18.8 0.3 2% 2% 1984 12.7 17.3 0.5 4% 3% 1985 11.7 15.6 0.1 1% 0% 1986 19.8 16.0 2.5 12% 15% 1987 10.5 12.2 4.8 46% 39% 1988 13.3 9.7 2.0 15% 20% 1989 12.7 11.6 -1.8 -14% -16% 1990 5.6 6.8 -0.7 -13% -11% 1991 6.7 -7.8 -0.8 -12% 10% 1992 7.3 -1.5 0.0 -1% 3% 1993 8.1 7.3 3.0 37% 41% 1994 13.6 N.A. 2.7 20% N.A. 1995 12.6 N.A. 5.7 45% N.A. 日本が米国財務省証券を購入していなければ、少なくともその分だけ日本は、自国の財政を穴埋めするための借金をせずに済んだはずである。あるいは、その資金を使って、円ブロック圏の地盤を固め、基軸通貨国として日本に資金を集めることができたかも知れない。公共支出負担や減税、さらには国内の繁栄のためにその資金を使うこともできたであろうし、それを使って、米国が行ったのと同じように、他の国の経済を支配することも可能であったかも知れない。 しかし現実は、米国財務省への融資が拡大したために日本の国債残高は増加した。米国人が税金を払わない分、日本国民の税金負担が増えたのである。 しかし、米国民は日本に感謝するどころか、日本たたきはとどまるところを知らない。その理由は、現実に何が起こっているかを、米国の政府やエコノミスト、メディアが国民に説明しないためである。しかし、日本の政府やエコノミスト、メディアが明らかにしないことを、なぜ米国側が敢えてそれを国民に説明しようとするであろうか。 日本はなぜ借金大国になったか マイケル・ハドソン氏より転載 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
October 25, 2007 11:23:08 PM
コメント(0) | コメントを書く |