河井醉茗の「ゆづり葉」がいい。子を思う親の気持ちは、子を持つまではわからなかった。少なくとも私の場合は。煩悩かどうかは、お天道さまだけが知っている。
ゆづり葉(抄)
…この譲り葉は
新しい芽が出来ると
入り代わつてふるい葉が落ちてしまふのです…
…子供たちよ
お前たちは何を欲しがらないでも
凡てのものがお前たちに譲られるのです。
太陽の廻るかぎり
譲られるものは絶えません…
…世のお父さん、お母さんたちは
何一つ持ってゆかない。
みんなお前たちに譲つてゆくために
いのちあるもの、よいもの、美しいものを、
一生懸命に造ってゐます。
今、お前たちは気が附かないけれど
ひとりでにいのちは延びる。
鳥のやうにうたひ、花のやうに笑つてゐる間に
気が附いてきます。
そしたら子供たちよ。
もう一度譲り葉の
木の下に立って
譲り葉を見る時が来るでせう。