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闘魂 サバイバル生活者のブログ

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カテゴリ:生活
株式日記と経済展望のブログ主はいろんなところに目配りが効く。目下の経済は下り坂だが、日本は日本らしさで乗り切るしかない。ここまでは完全に意見は一致している。40年にわたる投資が結実した話は非常に勇気がわく。製品のローカライズはどこも直面している。メーカーに勤める者として心すべき話である。

日本の競争力の源泉(前編) 8月20日 大前研一(抜粋)

 BRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)の台頭や(多少の陰りは見えるものの)依然として強さを見せつける米国経済などを背景にして、「日本はもう駄目だ」と言うエコノミストがいる。浅薄な理解であり言説であるというべきであろう。そこで、不況下にあってもしっかり踏みとどまっている日本産業の姿を見ながら、どのような産業がなぜ高い国際競争力を保っているのか探り、この国の競争力の根元を考えたい。

 では、踏みとどまっている日本の実態とはどのようなものなのか。今回は、素材・部材・化学・機械の分野を例にとって検証してみよう。実はこの業界では日本メーカーが高い世界シェアを持っている。というよりもほとんど独占・寡占状態になっているのだ。

 なぜ人件費の高い我が国で、このような国際競争力を維持しているのか。その本質はどこにあるのか。また、そのノウハウはほかの業界(例えばサービス産業など)にも応用できるものなのか。ほかの国にはない日本の「力の本質」の中には、業種を超えて学ぶべきことも少なくない。

 川上である素材・部材で、日本は国際シェアの実に3分の2を占めている。ところが製造設備となると5割、部品となると3分の1と減り、最終製品では4分の1にまで減少している。これは、ある意味では「仕方のないこと」ではある。最終製品の心臓部分は日本に、組み立ては人件費の安い中国などで、というスタイルにしたほうが経済効率の上からも合理的だからだ。

 これが顕著になるのが韓国や台湾だ。両国とも川上、すなわち上流工程をほぼ完全にスキップしているからだ。かの国では日本から素材、部材、あるいは機械などを輸入して組み立てて輸出するという“パススルー経済”がまかり通っている。そのため、韓国は日本に対して常に貿易赤字という構造を持っている。

 図の下側に並んでいる総合家電メーカーの営業利益率がせいぜい5%あたりなのに対して、上側のヒロセ電機(30%)、村田製作所(18.3%)、ローム(18%)と、桁違いに大きい経常利益率を持っている。すなわちグローバルニッチトップという地位を得ると高い利益率が得られるということなのだ。実は、こういう会社は世界でもあまり類を見ない。日本独特のものと言える。

 このことから分かるように、半導体の素材、製造装置、検査装置で見ると、日本は付加価値の高い分野では高いシェアを取っている。しかし、半導体の完成品、最終製品となると、インテルやサムスンに日本は負けてしまう。汎用半導体やファンウンドリーという分野では台湾勢が世界シェアの75%を占めて日本勢は見る影もない。

 とはいえ、いかなサムスンといえど、日本から機械や素材を買って製品を作らざるを得ないのだ。一般消費者からは見えないところで日本の企業は頑張っていたわけだ。液晶ディスプレイや携帯電話でも同じようなことが言える。完成品でのシェアは低いが、中の素材、部材を見ると日本製のものがほとんどを占めている。

 かの国産の名機、YS-11の製造中止以降、日本の航空機製造業界は非常に弱く、「何をやっても駄目」と言われていた。最近になって三菱重工業がようやく小型機を作ると言ってはいるが、それでも世界に比べれば遅れている。ところが、素材では航空業界でも大貢献していたのだ。

 さて、このカーボンファイバーだが、世界シェアを見ると1位が東レ(34%)、2位が東邦テナックス(19%)で、これに三菱レイヨン(16%)を加えると日本がシェアの7割を占める。ここに出てくる日本企業は、かつては繊維不況に苦しめられ、主力商品を次々に整理していかざるを得なかったところばかりである。

 だが、日系メーカーがカーボンファイバーでもうけるところにたどり着くまでは、かなりの時間が必要だったことを忘れてはならない。「カーボンファイバーはいずれ構造材になる」と言う人もいたが、なかなかそうはならなかった。そこでゴルフのシャフトに使うなど小さい市場でやり繰りしながら、東レがボーイングの機体に採用されることに成功したのだ。いまではジュラルミンに代わってカーボンファイバーがメインになったものの、そこまでの40年間は赤字だった。

 例えて言えば赤字を続けた40年間は、歴代の東レの社長が“密造酒”を造らせていたようなものだ。周囲から公認されず、しかもいつ利益を生み出すか分からないものに千数百億円も投資したのだから。今だったらまず間違いなく株主やアナリストにたたかれるような行為である。構造材に使えるという確信を持っていたとはいわれるが、その確信と行動はドン・キホーテに近いものといえよう。

 ところが今ではカーボンファイバーの将来は明るい。今後は自動車その他で構造材としても相当有力視されている。まず軽いので燃費がよくなる。そして頑丈だ。最終的には自動車も鉄ではなく、カーボンファイバーが使われるのも夢ではない。ますます日本の得意分野の用途が広がっていこうというものだ。

 半導体製造装置では、伝統的に日本と米国が勢力を二分している。自動車産業や電気・電子産業、機械産業で用いられる金型はダントツで日本が1位だ。台湾や韓国は、こういう機械はほとんど手がけてさえいない。自分たちで製造する技術を育もうなどというこだわりはない。これらを新たに開発しようとしたら時間がかかりすぎるからだ。また、長期にわたって手間もかかるし、人間の習熟も必要となる。ならば「お金で買えるものは日本から買って、それらを使って最終商品で勝負しましょう」という考えなのだ。

 アジアで高品質な工作機械製造にこだわっているのは、企業ではなく、貿易統計を取っている国だけである。国としては日本からの素材や機械で貿易赤字になる構造を何とか改善したいと思っている。したがっていつも国産化を呼びかけてはいるが、産業界は聞く耳を持たない。習熟に5年も10年もかかるようなことで競争するような企業は、中国、韓国、台湾を含めてアジアにはほとんどいない。中国などはそんなことをしなくても、もうかるチャンスはゴロゴロ転がっているのだから。

 例えば金型なら、「バリ(出っ張り)が出ないようにするにはどうすればいいか」「ああでもない、こうでもない」と夜の間に補修したりしている。そういうことをやるのは日本人だ。少なくともわたしが中国人を見る限り、そういう細かいことをやる気はない。韓国でさえもやらないだろう。台湾は微妙だが、少なくともメンタリティ的に夜中に補修などはしない。日本のように「どんどん深く、ゆくゆくはグローバルニッチでトップをねらう」ようなところは、東アジアの企業の中にはほとんど見られない。それを手がけるならでかい市場で(日本から)ライセンスをもらってやったほうがいいと割り切るのが他の国の経営者たちの考え方だ。

 米国ではベンチャー企業が中心となって新しい技術をもたらす。そして「いい技術を作ってくれた」となると、大企業が買収してくる。だからお金はベンチャーに集まってくる。大企業がそういう長期の開発をやろうとすると、アナリストや株主にたたかれてしまうという要因もそこにはある。新技術はM&Aで買収したほうが株主も喜ぶ。

 対して日本は、生産現場と研究開発が一体になっている。そして完成品を作るメーカーと部材メーカーも一体になって「ああでもない、こうでもない」と顔を突き合わせて、形のないものでも「取りあえずやってみようか」と手がけてみる土壌がある。

 何よりも日本には、東京都大田区、東大阪、諏訪湖周辺、浜松という、中小企業が密集している4大「中小企業ハイテク部品業の集積地」がある。部品屋さんで集積しているところは世界的に見ても非常に少ない。これが日本の強さの一つだ(これについては次週解説したい)。

 アジアは、自分たちではR&Dをほとんどやらない。大企業中心、あるいは大学の研究所で行うか、外国から技術を買ってくる。そして中小企業の集積地のようなものは(台湾の新竹みたいに今や大企業の開発拠点にまでなっているところを除いては)ない。技術を持つ外国企業を呼び込んだ(蘇州、無錫などの)集積地はあるが、人的・ノウハウ的な集積が伴うわけではない。せいぜい「最終部品を作ってジャスト・イン・タイムでお届けする」という感じだ。だから、日本とは意外とバッティングしない。

 キヤノンやリコーの複写機やプリンターを考えてほしい。実はあの手の製品を全世界で販売するのは難しいことなのだ。

 例えばアリゾナから「インクが乾いて印刷できない」と緊急電話が来る。原因は湿度が低く、インクジェットプリンターのノズル(インクの噴射口)が詰まってしまうからだ。また、ルイジアナからは「紙詰まりが起こって困る」と電話が入る。理由はその逆で、湿度が高すぎて、紙がメロメロになってしまうからだ。

 キヤノンやリコーは、そういう苦情に対応しながら、どんな気候でもインクの詰まりにくく、紙詰まりの起こりにくい製品を開発してきた。こういうことはやったことのある人間でないと分からないのだが、紙詰まりやインクの目詰まりを解消するのは極めてノウハウ部分の多い難しいことなのだ。

 では台湾や中国の複写機、プリンターメーカーはどうか。そういう極端な地域は最初から対象外だ。トラブルの起こりにくい地域のボリュームゾーンに向けて「安くしますからどうぞ買ってください」という売り方である。メーカーの負担は少なくなろうが、極限状態を想定しなければ製造技術は決して向上しない。対して日本企業は、最初からユニバーサルサービスを志向し、きめ細かい努力をしてきた。だからこそこうした「アナログ・インテグラル×クローズド」領域において日本企業の製品は完成度と信頼性が高いのである…








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Last updated  August 24, 2008 07:39:44 PM
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