カテゴリ:妄想系
ああ、月末だなぁと思っていたら、ある人のことを思い出した。たぶん、これまで私が出会った中で、最も嘘つきはこの人だろうと思う。
その人は、なんだか知らないけど、自分にはほかの人間とは違うパワーがあると信じ込んでおり、常々、「夢は現実化するのだ」ということを言っている。その割に、女房子供に捨てられたり、周囲の人から鼻つまみ扱いされたりしているのだが、それも彼の「夢」の結果なのだろうか。 とか言うことは、思っても口にはしない。たとえ口にしたとしても、口の達者なその方は、「それは夢が手薄な部分だ」とか、「成功にはある種の犠牲が必要だ」とか、「いや、そもそもそういう不幸は、真の幸福への道なのだ」とかいったことを言うだろう。 思いこみの激しいその人は、「夢や思いがいかに実現するか」という例として、自分の個人的体験を話してくれた。ある日、通帳を見ながら「ああ、この0がもういくつか多ければなぁ」と思ったのだという。「次に記帳したら、ここに一億円入っていれば良いのに」 そう思いながらその日は就寝し、翌々日くらいに銀行に行って支払いを済ませると、通帳を見てびっくり! そう、なんと一億円が振り込まれていた、という。 んなことあるわけ、ないじゃんねぇ。 でもその方は、実際そういうことがあったと主張する。その場にいた誰もが、鼻先でイヤなニオイをかがされたかのような表情をしていたが、一人、どうしても我慢できなくなった人がいて「それでどうなったんですか?」と尋ねた。 妄想のような自慢話を吹聴しても、それまで突っ込まれることのなかったそのおっさんは、ちょっとしどろもどろになりながら、翌日、銀行から電話がかかってきて、「間違いですよねぇ」と確認された、と言った。そして残念だったけど、正直に答えた、という。 そもそもどこの誰が一億円振り込んできたんだよ。それとも銀行が、お前の願望の魔力によって、架空の数字を打ち込んでしまったのか? じゃ、そもそもそのデータは、誰が入力したんだ。入力したんじゃなかったら、誤作動かなんかだから、あんた、一カ所だけに一億円ということはあるまい? とか言うことを言ってはいけない。その場にいた誰もが、「へええーそうですかー」と気のない返事をして、おっさんをホッとさせた。自分の自慢話に反応がなくて、彼が喜んだのは、あのときだけだったのではないかと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[妄想系] カテゴリの最新記事
|
|