カテゴリ:完全にイッちゃってる系
先日仕事で、とある公的機関に出かけた。転職してからおつきあいのできた所で、すでに顔合わせは済んでいたのだが、一人だけ、そのときインフルエンザでお休みしていた女性がいた。私がもう一人の担当者と出向くと、その女性の上司がそれと気づいて「○○さん、Gomaさんがいらしたから」と声をかけてくれた。結構エライおじさんなのだが、腰の低いフットワークの良い方なのである。
すると、ちょうどこちらに背を向けて座っていた一人の女性が、振り返りもせずに言った。「それがどうしたんですか」 それでその女性が「○○さん」であることは分かったが、私と連れは、顔を見合わせないようにするのが精一杯。気配り上司のおじさんは、かなりあわてた様子で、「だからっ! この前ご挨拶していないだろう。名刺交換くらいしなさいよっ」 その女性は、ふーっと聞こえよがしなため息をつき、デスクにばーんと音を立てて手を突くと、おっくうそうに立ち上がった。振り返ったのは、サダコみたいな髪型(?)と雰囲気の、キツネ系の顔の女性である。ちゃんと化粧でもすれば、結構美人の部類に入るはずだが、仏頂面と顔色の悪さ、目つきの悪さで、「近寄りたくない系」と化している。 彼女は足を引きずるように、のろのろとこっちにやってくると、一枚だけ握りしめてきた名刺を、私たちが立っている側にあるテーブルの上に、ぽーんと放り出した。そして、私がにこやかに差し出す名刺を片手で、ひったくるようにして取り、ひとっことも口をきかずに、自分の席に戻ってしまった。あんぐり。 彼女の上司はその後、コーヒーはまだかの、室温が暑過ぎはしないか、などなど、やたらと大きな声を出して大騒ぎし、部下のあり得ないような不作法を、無かったことにしようと必死だった。気の毒な方である。 私がその仕事を引き継いだ同僚からは、そのおじさんとサダコについて、「無能な上司と、てきぱきと仕事のできる腰が低くて実に有能な部下」という図式だという話を聞いていた。が、ふたを開けてみるとそういう状態。これまで、何百枚となく名刺交換をしてきたが、目の前にいる相手の名刺を、テーブルから拾わせて頂いたのは、初めてだ。 我々もまあ、大人なので、上司のおじさんの必死の努力により、サダコの不作法には気づかなかったふりをして去ったが、その機関のビルを出るなり、私が連れに、「あの人、アタマヘンなの?」と訊いたことは言うまでもない。 どうやらその人は、とても愛想の良い時と、そうでないときとの差が、非常に激しいのであるらしい。「でもあそこまで行くと、それってびょーきなのでは?」と訊くと、「一般企業だったら、たぶん、クビになるくらいの不始末は、多々しでかしている」との返事。いいなぁ、お役所系。一度入ると、法律に触れること以外は、何しても構わないんだー、きっと。 彼女の無愛想には、もう一つ理由があることを、しかし、私は知っている。担当者が変わったことが気に入らないのだ。彼女は私の前の担当者に、心密かに思いを寄せているらしい。だから、彼の前では決して、びょーきな精神状態の時でもそんなそぶりは見せない。ツネに愛想良く、振る舞っていたようだ。 今後、私の前ではツネに、びょーきでない時でも、仏頂面を続けるんだろうなと思うと、今から先が思いやられるのであった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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