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元・経営コンサルタントの投資日記

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2007/09/18
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ハーミーズロゴ

1:Overview

前回、「日本の株主総会における議決権行使状況 2」ですこし触れた、英国年金運用会社ハーミーズについてご紹介したい。ざっくり言えば、「モノ言う株主」であるが、世界的にはエスタブリッシュメントされた大手機関投資家であり、日本企業としては投資してもらえることのほうがステータスになるような実質株主と考えてよいと思う。

外国人株主というと、すぐハゲタカファンドかグリーンメーラーばかりを連想させるが、ハーミーズの投資方針が世界のトレンド化しつつあり、日本でも企業年金連合会なども参考としている姿であり、年金基金といった機関投資家の投資方針のトレンドをみて欲しい。

2:最近のマスコミ報道されたハーミーズ

  • 日経金融新聞(07/06/21)

英通信大手ブリティッシュ・テレコムの年金基金などを運用する英国最大の年金運用機関。運用資産総額は約17兆円で、その約6%を日本で運用。日本の主要株を指数に連動する形で保有。指数運用とは別に低株価企業に投資し、経営改善を即するファンドもある。

07年総会では、買収防衛策へは約70社で導入に反対票を投じた。反対理由は独立委員会などの独立性に問題があるから、とのこと(顧問弁護士、親会社役員、メインバンク役員など企業と利害関係を一にするため利益相反行為だと言っている)。

  • 日経新聞(07/08/03)

欧州大手6年金基金は資金運用とは別に、企業統治に関する監視(要するに議決権行使)する部分だけを切り離して、ハーミーズに委託した。金額ベースで約14兆円分(6年金の対日株式投資金額は不明)。

3:ハーミーズの対日株式投資実績

07年総会で議決権を行使した日本企業数は600社を超えているといわれている。また、同社の「Japan Index Tracker」は£2,163m(約5500億円)の運用資産額であり約480社に投資している。他のファンドの対日投資額等を合計すると総額6,000~7,000億円を日本株で運用しているものと推測される。

「Japan・・・」の組み入れ銘柄の上位は、1:トヨタ(約300億円)、2:MUFJホールディングス(約210億円)、3:キャノン(約150億円)などとなっている。上位10社は、3メガバンク、トヨタ、ホンダ、ソニー、松下電器、武田製薬、任天堂そしてキャノンで組成され、日本そのものに投資しているという顔ぶれです(世界的な評価の低いメガバンクが上位にあるのはなぜだろう)。

一方、「フォーカス・ファンド」といわれるバリュー投資型ファンドをニッセイ・アセットマネジメントと共同で運用している。これは、何らかの理由で株価が低迷している企業に投資し、その会社と共同で株主価値を向上させるという目的のファンドである。運用額などの詳細は不明であるが、成功事例はいくらかある模様だ。この「フォーカス・ファンド」はいわゆる「フレンドリー・アクティビストファンド」の範疇に入るものと思われ、ハーミーズ自身の戦略商品のような位置づけになっている(実際の実行部隊は、日本においてはニッセイ・アセットマネジメントの模様)。

ロンドン夜景1

4:ハーミーズの投資原則

「The Hermes Principales」(ハーミーズの原則)

日本語訳です

これによれば、当社の投資原則は、「株主は上場企業に何を期待し、また、企業は株主に対し何を期待すべきなのか?」という疑問から導かれており、相互の役割期待を株主・企業で共有しようとする発想から成り立っている。

これまでの投資経験により、経営規律の強化が株主価値の向上をもたらすと信じており、「企業の目的は、企業のオーナーである株主のために富を導き出すことにあります。その理解の下で、株主が会社に対してどのようなことを期待すべきか明らかになる」と言い切っています(「会社は誰のものだ」議論については、別の機会に日本での議論に対し「株主が別の利害関係者と同一線上で論じられている」との明確な態度で臨んでいます)。

一方、企業が株主に望む投資姿勢として、長期安定投資を重んじています。「企業の目的は株主の長期安定的利益のためにある」としています。これは、彼らの委託者である年金受給者や生命保険の契約者に対し、ハーミーズは給付支給という義務があり、平均給付債務は25年にもおよぶため、給付資金の源泉である運用も長期間であるとの明確なスタンスを取っています。

会社は株主のものと言い切っている反面、運用は長期であると株主(年金の運用委託者や受給者)・企業双方の期待にバランスよく応えているといえるでしょう。

年金運用は総じて、長期給付の義務があるため、ワンタイムな荒稼ぎを行っても意味がなく、長期安定的な価値向上を望んでおり、企業も長期的な株主は原則歓迎するはずですので、企業側は機関投資家としての年金資金は本来魅力的であるはずです。

そして投資原則として以下の10原則をあげています(主旨のみ)。

  • コミュニケーション面

第一原則:

企業は株主と、誠実かつ率直な対話を継続するよう努めるべきである。

  • 財務面

第二原則:

どの事業活動、コンピタンスが最も株主価値の向上に寄与するかを把握するため、適切な計測方法や経営管理システムを持つべきである。

第三原則:

企業は株主価値の長期的に継続することを前提に全ての事業投資案件について誠実かつ、厳格に検証すべきである。

第四原則:

企業はコアビジネスから多角化を図るよりも、コアビジネスにおいて存在する投資案件を十分検討し、資源を配分すべきである。

第五原則:

経営陣が長期的な株主価値の向上を努めることを奨励するために、インセンティブ制度や業績評価制度を設けるべきである。

第六原則:

企業は長期的な資本コストを最小限に抑えるべく、効率的な資本構成を有するべきである。

  • 戦略面

第七原則:

企業は事業ごとに首尾一貫した戦略を有し、常に更新し続けなければならない。

第八原則:

企業は事業ポートフォリオの妥当性を説明できなければならない。また、不適切な事業ポートフォリオを保有している場合、その問題を解決するための計画を策定すべきである。

  • 社会・倫理・環境面

第九原則:

企業は倫理的に行動すべきであり、環境や社会全体を尊重すべきである。

第十原則:

企業は社会全体にコストを転嫁するようなことを最小限に留めるための法的及び自主的な措置を講じるべきである。

ロンドン夜景2

自分なりにサプライズであった原則を詳しく紹介。

5:第四原則

コアビジネスに投資しろ、という原則ですが、これは事業間のシナジーのないコングロマリット・ディスカウントに反対しています。戦略コンサルで有名なポートフォリオ・マネジメントを批判しています。

いわく、「キャッシュを生み出す事業(金のなる木)とそれを使用する事業をバランスよく持つべきだという誤った認識」は、「すでにリスクを分散している投資家にはなんらメリットがない」、と切り捨てています。

即ち、株主であるハーミーズ (に限らず、機関投資家全体に言えることですが) が既に「分散投資」を実施しているので、一企業の中で分散投資をしてくれる必要がないという意味です。そもそも、その企業に投資した理由が、競争優位性のあるコアビジネスがあるからであり、競争力のない事業に競争力ある事業からキャッシュを回すことの愚を述べています。

確かに、成功する企業が通常は特化した事業領域でリーダー格であるケースが多く、企業のコングロマリット化が財務戦略的に適切である事例は少ないです。

6:第二、第六原則 

あとは、資本コストを厳しく意識させる第二原則、第六原則は現状、中堅以下の日本企業では認識していないケースが多いと思います。いわゆるWACCで、一般的には7~8%が通常だといっています(長短の金利が低い日本では5%後半から7%ぐらいが通常でしょうか)。

この資本コストを上回る期待利益を上げるべきで、投資案件もDCFを用いよとか細かく書かれています。投資ファンドだけあって財務は細かいですね。オリックスとか三菱商事・花王といったEVAをIRで謳っている企業は当然意識しているでしょうが、売上高利益率などを経営指標としている企業はWACCによる自社評価も行いましょう。

一方で、戦略策定とは、「上記のような分析的なインプットに終わらず、組織・文化・人的な影響が大きく作用される創造的かつ直感的活動であることを認識している」とアナログ面にも理解を示しているところが興味深いですね。

7:行動規範としての

「投資家としてのハーミーズの取り組み」

主旨は以下の通りです。

コミュニケーションを通じた相互理解が重要である、議決権は行使すると明言しています。一方では、モノは言うが実際の経営は経営陣に基本的に任せる、長期的な視野で投資する、原則、敵対的買収でも経営者を支援する、といっており、「アメとムチ」を使い分けているといえるでしょう。

このハーミーズは機関投資家の中でも特に、企業とのコミュニケーションや議決権行使に厳格であり、冒頭の他の年金基金から、企業統治管理業務のみ委託されるケースが増加しています。さらにこういった動きが活発化すると、「議決権行使基準のデファクトスタンダード化」(ISOはグローバルスタンダードになりましたが) といった動きも考えられます。

 






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Last updated  2007/09/19 02:07:04 AM
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