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テーマ:株式投資日記(20523)
カテゴリ:コーポレートガバナンス
ロイターから
議決権行使助言会社の日本プロクシーガバナンス(JPG)はJパワーの株主総会における中垣社長の再任に反対する助言を行うことを明らかにした、と報じた。 フジサンケイビジネスアイによると JPGは5月に会社側と面談し、「情報開示やコーポレートガバナンスが十分に機能しておらず、投資家への説明が十分ではない」(吉岡洋二社長)と判断し、中垣社長の責任を問うことにした、と報じている。 社外取締役の設置は必要との見解らしい。ただし、TCIの株主提案である、定款で保有する投資有価証券の金額を50億円とするという案については「業務執行の裁量の範囲内」とみて、これには反対するとの見解のようです。
社外取締役について TCIは07年11月からしつこく要求していました。最初はオレを社外取締役にしろ、といっていましたが最終的には誰でもいいから入れろとトーンダウンしています。 一方、Jパワーは4月下旬頃、やっと来年度に検討すると譲歩しつつあります。この6月はとりあえず人選に間に合わないとのことです。 時価総額7000億企業としては言われなくともやって欲しいものですが、まあ、改心???したんだし、副社長さんも「拙速な導入ではなく、しっかりしたものを導入するため」今期は見送るといっていますし(といいつつ、あの社外監査役候補の方を「極めて豊富な組織運営や経営判断の経験を有しており」とご評価される「選球眼」ではやや心配ですけどね)、来年の選球眼が節穴だったとか言うのならわかるけどまあこの件についてはイエローカードぐらいでよいのでは? フジサンケイビジネスアイは「JPGの判断が総会での勝敗に影響を及ぼす可能性もある」と煽っています(ロイターはまあ、事実を淡々とって感じ)。
社長の再選反対助言というのは、会社側と面談しての結果だったら画期的だ。会わないで文句言っている私なんかよりはるかに説得力がありますね。Jパワー側も「説得工作」に乗り出すのでしょうか、何らかの株主対策を打ってくると株価は上昇気味といわれています。
ここに来て俄然、日経平均をアウトパフォーム 議決権行使助言会社って何??? 私の理解している限りでは、主に機関投資家に対し、株主総会の議案につき賛成すべきか反対すべきかの助言を与えるサービスを業とする会社です。米国で発達。 機関投資家は、それこそ何百社の株式を保有しているため、いちいち議案を吟味している余裕がないという実態と彼らとて恣意的な判断をするわけにもいかず、かつ、受託者責任を全うするためには少しでも株価パフォーマンスをあげなければならない宿命にあるので何らかの形でYesかNoを言わなければなりません。 自分たちの資金の出し手に対し、正々堂々と責任を果たすためには、客観的な第三者の意見を元に議案に賛成した、反対したといえるようにしたいものです。そうです、そのスキームはライツプランにおける特別委員会の助言に似ています。 ポイントは積極的な議決権の行使がよりよい株価パフォーマンスのための責務であるという考え方がまあ、あちらの国では当然となっている点でしょうか(別に「No」を言うだけが「能」じゃない)。 有名な話では、ヒューレットパッカードとコンパックコンピュータの合併議案で、主にHP側の創業家を中心とした株主が合併に反対し、賛成派と拮抗していたとき、議決権行使助言世界首位のISSが賛成を表明し、こぞって機関投資家は賛成に回り、M&Aが成立したという「武勇伝」があります。 日本ではその「神通力」があまり通じず(積極的な議決権行使が責務であるという認識の欠如と持合という鉄壁の連係プレーの賜物)、サッポロHDの防衛策の賛否やこの前のアデランスの取締役再任への賛否などで「空振り」が目立つ。
ではJPGの影響力は? 議決権行使助言会社というのが何社あるのかわかりませんが、主に3社あり、3番目で一番影響力が薄いと見られています。 首位はISS(Institutional Shareholder Services)、2位がグラスルイスという会社。 昨年、JPGのセミナーに出席し、その資料を元に少し紹介 会社提案に対するJPG助言の効果
やはり取締役の人事権行使については、投資家はまだまだ二の足を踏むようです。今回は中垣社長のみのピンポイント攻撃なので、アデランスと比較すれば「気軽に?」Noといえるのでしょうか? 取締役の選任については投資家の立場からすれば、「伝家の宝刀」でしょうね。サラリーマンは皆例外なく、経営者に人事権を握られています。経営者は自分の人事権を先輩社長だと思っています(事実上)。 これまでは米国でも「ウォールストリート・ルール」といって、嫌だったら株を売ってしまえ、というのが実力行使の最たるものでした。 ところが80年代後半から90年代にかけて、カルパース等が株式投資を積極化させた結果、株主保有数が多すぎて、売ってしまうとかえって株価の下落を招き、損失が拡大するような結果となり、「首が抜けなくなった」 という事態が生じました。そこで、カルパースなどは積極的に発言を繰り返すようになったといういきさつがあります(エイボンレターという年金基金が物言ってもOKとする公式見解もあった)。 そこから、大小入り乱れてモノを言うようになったのですが、それでも機関投資家(投資信託)は1社当たりへの保有株式割合は5%未満ですので、今の日本同様「無視」されることなどもあってパフォーマンス改善になかなか寄与しなかった。 そこで、カルパースはパフォーマンスワースト会社数十社を公表して、会社に危機感を抱かせたり、特殊な投資戦略を採用する投資ファンドに代理的にやってもらったりするようになりました。これが物言う株主のはしりです。
現在、カルパースはナイトビンケというアクティビストを使って、世界最大級の銀行であるHSBC(英国)を執拗に攻撃しています(ナイトビンケとカルパースが連名で抗議文書を送付しています)。 こうやって、ガバナンス改善に対するアナウンスメント効果をシンボリック案件で狙いながら全体の株式リターン改善を進めていくというのが一つの投資戦略だったりします。
話がそれましたが、投資家が議決権行使の極大化に向かうハシリを記憶ベースで書いて見ました。 議決権行使助言会社は絶対か? これはムーディーズなど格付け会社が絶対かというのと特別委の勧告が絶対かと同様に疑問な点があります。 ISSは現在リスクメトリックスという会社の子会社で、それ以前はなんと、有名なプライベートエクイティファンド、ウォーバーグ・ピンカスの投資先でした。M&Aでナンボのファンドの子会社時代にHPの合併案の賛成を表明しています(これがコンフリクトか否か不明)。 また同業他社を次々と買収して自らの影響力の拡大を図っていくなど、アグレッシブな経営が目立ちます。 資生堂だったか、ライツプランの特別委にアスクルの経営者を推薦したものの、会社とアスクルに取引があるからその人には独立性がないとして反対助言をだしましたが、会社からは取引金額が低額で普通に出入り業者として使っているだけだという反論を呼びました。 また、企業側が「事前審査」に来た場合、「くるもの拒まず」の姿勢で議論し、納得すれば要件に不備があっても賛成するという度量のよさを持っていますが、これが「密室会議」と批判されることもあります。
JPGは米国のプロキシーガバナンス社と提携して06年に出来たばかりの会社です。親会社たるプロキシーガバナンス社の株主はベンチャーキャピタルだそうです。個人向けに議決権行使の助言業を開始したそうです。「イチゴの乱」のときに「どうすればいいかわからない」とう個人投資家が多かったことによるようです。 各社ともみずからの影響力を発揮したいと思うのは株式会社として当然だと思います。こういった「助言」(注:あくまで助言です)産業の隆盛はその中立性、透明性および意見に対する納得感などが大事で、空振りばっかりしていると、存続が危ぶまれますし、まともなことを言っているのに結果的に空振りしていると、今度は回りまわって対象企業自らの成長への阻害になりかねません。 今のところISSなどは業績が右肩上がりのようです。 Jパワーの件はマスコミも注目しているようですし、残り2社の賛否も報道されるでしょうから、引き続き注目していきたいと思います。 日本企業も、「俺たちはアングロサクソンなんかと違うんだ」という感情的な面は依然あると思いますが、実はそういった声を盾に、変化への時間稼ぎをしているのかもしれません。日本で優良企業といわれている会社は軒並み外国人株主比率が高い企業なのはなんとも皮肉ではないでしょうか?
記憶ベースで書いている部分が多いのでご了承ください。 注:一方、Jパワー側は欧米の機関投資家へのロードショーを終え、手ごたえをつかんだと言っています(ブルームバーグと日経ではトーンが違う。後者のほうが楽観視している)。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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