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テーマ:株式投資日記(20516)
カテゴリ:コーポレートガバナンス
Jパワー問題は総会(26日木曜でいわゆる「集中日」)を残すのみとなりました。Jパワー経営陣のご努力もあり、プロキシーファイトの勝利について経営陣は自信を深めているようです。今日は出来るだけTCIと関係なく進めます。
もう委任状が沢山手元で集計できたのでしょうね。 ロイター6月11日、インタビュー: 株主総会での過半の株主支持に確信=Jパワー副社長 以下、ロイターの記事が会社側の意図をきちんと伝えているはずという前提で、記事の要点は *委任状争奪戦について過半数の株主支持に自信があり、投資家はおおむね当社の長期戦略やビジネスモデルを理解していること *ただし、80円配当と70円配当案のみ少し自信がないこと *株式持合については、各々目的を持ったものであり、パートナーを組む価値があったところと提携していった結果であり「1990年代のような株式持合いをしているつもりは全くない」こと *具体的には、三菱重工とは石炭火力発電に関するシステムについて、T&Dやみずほとは大間原発関連他の設備資金調達、新日鉄は東京湾岸における発電・電力小売事業でのコラボなどの目的がある *さらに、こういったパートナーシップを求めた結果、新たな提携先と判断した先もある、と前期の持合の増加を示唆した 上記副社長発言には3つの疑問があります。
1:「1990年代のような株式持合いをしているつもりは全くない」 ? 現在の持合と当時のそれの違いがわかりません。むしろ、Jパワーさんのような公益装置産業では、IT系のハイテク企業より、重厚長大な伝統的な日本企業さんとの取引が「深い」はずです(少なくとも金額ベースでは)。そういった企業は、フツーに持合をされているケースが多いはずです(財閥系の持ち合いなんて典型)。 この発言は、捉えようによっては 「そういった企業よりウチはましです」 という解釈が出来なくもなく、自らの取引先が「不快」に思われないか心配です。せっかく、今回の争奪戦でも白紙委任状を送付してくれた(はず)のに って感じてしまいました。
2:金融機関との持ち合い目的が資金調達の円滑化だという趣旨の発言(別途産経のインタビューに社長も言及) 発電所計画は慎重かつ膨大な資金計画が必要であろうことは想像付きます。08年3月末で約1.4兆円の有利子負債があります。したがって金融機関との取引は重要であることは事実です。 以下みずほに特化します(Jパワーのみずほ株は03年の例の「一兆円増資」;優先株が主)ただし、他の金融機関でも基本的に同じロジックが成り立つ これはみずほの優先株を保有しないとみずほさんからの今後の資金調達が不安だといっているのに等しいように聞こえます。 仮に金融機関の株を保有しているからこそ、融資が円滑化されるのであれば、銀行側に利益供与の疑念が生じます(特定株主に便宜を図ったことにならないか?)。 では、保有する銀行株式を売却すると融資円滑化に支障をきたすような前提があったりすると、逆に銀行が「優越的地位を濫用」という銀行のコンプライアンス問題になってしまわないでしょうか? したがって、このような発言はどっちに転んでも現状では誤解を招きませんでしょうか? したがって、銀行サイドから 「ちょっと待った」 という声が出てきてしかるべきでしょう。銀行としては、「株式を持ち合いしているからといって、融資を約束した覚えはない。株式投資はお互いの投資判断の問題だ。基本的には融資案件ごと是々非々で考える。」 以下大サービスで、「ただし、Jパワーさんの判明している設備投資計画については、現時点では期待に答えるべく検討させてもらっている」と。 特にみずほの「一兆円増資」(Jパワーの保有は第11回第11種優先株で、今年から普通株に転換可能)は、記憶の限りでは、銀行経営陣は、将来の融資予約や優越的地位の濫用を疑われるような勧誘は一切指示していないのが「公式見解」です。 これではあたかも、みずほ側が将来の融資予約を引き換えに優先株の購入を仕掛けたと勘ぐられません。したがって、Jパワー側の説明が不足しているように感じました(もし、Jパワー側がこのように言い切るのなら、火の手はむしろ銀行に及ぶことになります)。
3:当社の財務戦略上も矛盾を生じます。当社は増配やROEの目標設定について、自己資本比率の向上を優先するためにあえてTCIの意見を聞き入れていません。自己資本比率改善の目的が、低利な長期資金の調達、即ち、高格付けの獲得でした。それは理解が出来ても、高格付け維持のためには借入金の絶対額を抑制することも大事です。 したがって、持ち合いのお金を建設資金にでも投下して借入金を抑制することが可能ですし、その場合、自己資本比率には影響を与えません。少なくとも680億円全額を説明付けるのは困難でしょう(200億円の持合と680億円の持ち合いの効果がどう違うのか?なぜ680億円なのか? パートナーシップを結ぶのに必要な保有株式数は?)
株主兼取引先様へ もう少し 「ご配慮」 があったらなあと勝手に感じてしまいました。 あっ、当社は「コーポレートガバナンスは十分に機能している」会社だったので、余計なことを申し上げてしまいました。大変失礼いたしました。 再掲 (タイミング的にはTCIに追いかけられてから持ち合いを増やしているように見える。特に07年度総会では、配当を100億円純増の提案を拒否し、逆に200億円に上る持合を増加させた) TCIの主張(上記分析を裏付けるTCIの分析。「90年代とは違う持合」の趣旨とタイミングが全く矛盾すると思われる。これでは「90年代以前の持ち合い」に等しい)
以下Jパワーと関係がありません。 私が銀行員時代、持ち合いというのは曲者でした。即ち、融資競争においては持ち合いに関係なく、融資条件や情報提供能力、取引地位等で銀行の採用が決定するのが当然でした。 それ以上に持ち合いのある先は、取引採算で苦戦しました。配当利回りが非常に低く、融資取引他と合計すると取引不採算先になったりしてしまうケースが続発したのです。少しぐらい融資で儲けていても、パアになってしまいます。当然そういった先は本部から即持合を解消させられ、取引先からは恨まれたものでした(90年代後半~00年)。 コンサルさせていただいたある上場の運輸会社さんでは、営業の際は結局競争力のある企業が案件を奪取するとのことであり、持ち合い関係が現場ベースで有利に働くことはほとんど実感がないというご意見でした(注:これは社長さんが「持合があるからこそ(円滑な)取引が出来るのだ」(これマジです)という趣旨のご発言を受け、後に次長さんクラスにちょこっと聞いたご回答でした)。
「正しい持ち合い株式のあり方」というガイドラインを聞いたことがないので、やはり正当化は難しいのでしょう。 特に銀行の場合、株主では知りえない情報を把握して、株式保有先に影響力を行使しているので、利益相反などの問題がないのでしょうか? メインバンクはよく経営幹部を融資先に出向させますが、(取締役管理本部長とか)出向した人は、株主価値のために仕事するのか、債権回収の極大化のために仕事するのか怪しいものです(私の知る限り、後者の方が多い。特に銀行に復帰する 「往復切符」 タイプの出向の場合は)。 逆に、IPOなんてすると、IPO先は増資調達資金などで借入金を返済してしまい、銀行が怒るなんて(幹事証券会社とかを紹介してやったという心がある)こともありました。 コーポレートファイナンスの観点、融資採算、銀行は株主としての立場で怒っているのか、もう誰も正確な利害関係を把握せず、近視眼的に言い合っていました(今は違うかもしれません)。
持ち合いは日本株式会社の麻薬です。ただし、聞くところによると昔は通産省が外資による乗っ取りを防止するため、影で持合を進めたという話も経営者さんから聞いたことがあります。したがって、持合を解消するために何らかの方向性を世論付けすることも必要でしょう(注:Jさんには全く当てはまりません)。 そのために「持ち合い解消ファンド」をSWFや国民年金の特別勘定にでもある程度持ってもらって、5年ぐらいかけて売却価格以上で買い戻して償却するとか(配当は国家予算で可)。5年以内に買い戻せないものは、徐々に市場で売却するなど? 議決権行使基準は企業年金連合会並みとするなど。 世論が大紛糾しそうですね。ただし、持合と利益相反の関係を意識しないで受け答え出来るよう、社内でこういったインタビューの「予行演習」でもしたほうがよいかもしれません(演習の問題ではないのですが)。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008/06/24 01:52:50 AM
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